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九州・沖縄に多い白血病~成人T細胞白血病/リンパ腫~

成人T細胞白血病は日本で発見された白血病で
ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-Ⅰ)というウイルスの感染が原因とされています。
有名人での感染者も多い難病であり名前も特徴的であるこの疾患について解説していきたいと思います。

名前の由来は?


成人T細胞白血病は先に述べてある通りに1976年に日本で発見された白血病であり、人のリンパ球の「T細胞」にHTLV-1ウイルスが感染することにより発症します。しかしすぐに発症することはなく40~60年の長い潜伏期間を経て発症します。
この長い潜伏期間が「成人」という名前の謂われとされています。

また「白血病」と名前がついていますが、現在言われている白血病とは少し違います。
発見された当時、白血病と同じように細胞が異常増殖し、その細胞がリンパ球の「T細胞」であるということから、「成人T細胞白血病」と名付けられ、白血病の一種類と考えられていたようです。
その後、様々な研究が行われ、この疾患はHTLV-Ⅰというウイルスが原因となっていることが明らかになりました。
主に遺伝子異常が原因となる白血病とは異なる疾患であるということがわかると思います。

症状


HTLV-1に感染した細胞(ATL細胞)は血液中だけではなくリンパ節でも増殖するため、多くの場合はリンパ節の腫れがみられます。病変の広がりは全身性で、脾臓や肝臓、肺、消化管、中枢神経系に及ぶこともあり、半数以上で皮膚に病変があります。
病型は「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」に分類され、病型によって症状が異なります。


1) 急性型
ATL細胞が血液中で増殖するため、白血球数が著しく増加します。皮膚の発疹やリンパ節の腫脹があり、
高カルシウム血症(口渇、悪心、意識障害、嘔吐、多尿など)が起こる場合が多く、肝臓や脾臓が腫大するために全身症状が起こります。
また、免疫を担当する白血球のT細胞ががん化しているため、免疫力が低下して、日和見感染(普段感染しないような細菌などに感染してしまうこと)を起こしやすくなります。慢性型やくすぶり型から急性型への移行は約25%程度ですが、長い時間を経て移行します。
2) リンパ腫型
ATL細胞は血液中には増殖していませんが、著名なリンパ節腫脹や皮膚病変などがあり、急性型と同様に予後はあまりよろしくありません。
3) 慢性型
こちらは皮膚病変が多いとされていますが、それ以外には特に症状はありません。
4) くすぶり型
末梢血に異常なT細胞(フラワーcell)が認められるが症状は少ないです。


感染経路


主な感染経路として「母乳」「性交渉」「輸血」の3つがあります。


1) 母乳
感染経路としては1番多いとされています。
約15~20%の児がキャリア(HTLV-1ウイルスに感染しても発症しない人)となりますが、ほとんどはそのまま発症することはありません。
2) 性交渉
男性から女性への感染がほとんどです。
3) 輸血
1986年以降は抗HTLV-1抗体を献血時にチェックするようになったので現在での発症は稀です。


治療


病型の「急性型」「リンパ腫型」の場合は化学療法や造血幹細胞移植の治療が必要となります。
「慢性型」「くすぶり型」の場合は無症状ならば経過観察のみです。


まとめ


私自身も2例ほど実際の成人T細胞白血病の患者の方を見たことがありますが、やはりともに九州地方の出身の方達でした、しかしながら今は人口移動に伴い関東地域での患者数も増加しているようです。
日本では現在でも100万人近くのキャリアが存在するとされており、今後とも注目していきたい疾患の1つです。

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