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先天性血友病と後天性血友病の違いを理解する

血友病とは止血に関わる凝固因子の異常により発症する出血傾向をきたす疾患です。

血友病には「先天性血友病」と「後天性血友病」が存在します。
同じ血友病という名前がついていて一般的な検査結果が同じですが、発症の原因や治療法が全く異なり誤った診断を下すと重症化してしまうことがあります。
今回はこの2つの特徴についてみていきましょう。

先天性血友病

一般的に血友病と呼ばれるのがこちらの先天性の方です。

原因は遺伝子異常であり、生まれつき凝固因子(第Ⅷ因子・第Ⅸ因子)の活性低下ないしは欠乏により出血傾向となります。

遺伝性というだけあり、家族の誰かが罹患していると発症する可能性が高いです。

治療法は単純に凝固因子の補充療法がとられる場合が多いとされています。

後天性血友病

こちらは膠原病や悪性腫瘍、分娩が起因となり後天的に凝固因子
(第Ⅷ因子がほとんど)に対する自己抗体が産生されてしまう自己免疫性疾患です。

突然、重症の出血傾向を呈し、
予後も先天性よりも悪いです(死亡率10~40%)

治療法は自己抗体に対する免疫抑制療法がとられることが多いです。

見分けるには

先述した通り一般的な検査では血友病を見分けることはできません。
この2つを見分けるにはクロスミキシング試験を行います。

クロスミキシング試験とは、凝固時間(APTT)が延長する場合、その原因が凝固因子欠損に関するものか(先天性血友病)、凝固因子に対するインヒビターによりものかをスクリーニングするための検査法です。

方法は患者の血漿と正常の血漿の割合を変えて混合させ、
各混合血漿の凝固時間(APTT)を測定します。

下図が判定グラフとなります

プレゼンテーション1

グラフの解説

上に凸のグラフ(後天性血友病
患者血漿に正常血漿を加えても、患者血漿中のインヒビターにより凝固時間延長は補正されない。

下に凸のグラフ(先天性血友病)
患者血漿に正常血漿を加えると、正常血漿中の凝固因子により凝固時間の延長が補正される。

※第Ⅷ因子インヒビターは、時間、温度依存性であるため混合直後では下に凸グラフである凝固因子欠損パターンを示すことがある。
そのため再度37℃で2時間加温後測定する必要もあります。


最後に

先天性血友病と後天性血友病の違いを紹介したが、先天性血友病の治療である補充療法の副作用として製剤中の凝固因子に対するインヒビターを作ってしまうことがある(インヒビター保有先天性血友病)ので注意が必要です。

乳幼児の男児で血友病が認められるとほぼ先天性血友病であり、高齢者もしくは20~30代の女性においては後天性血友病が多いです。

クロスミキシング試験は先天性後天性を見分ける唯一の検査法なので、手順と結果の解釈をしっかり理解して検査にあたりましょう。

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