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タバコが違法になる日 4

 子泣きジジイの社長に呼ばれて会うことになったのは、賑やかな歓楽街の2階にあって『社長室』のパネルが掲げられた部屋だった。そこは今回のターゲットであるその社長が経営するキャバクラの本店上階にあり、新規応募の女の子の面接や店の社員とミーティングをするための場所だったのだが、チェーン店に所属している全ての女の子たちにとっては、時折呼ばれてもあまり行きたくないところだ。もちろん理由はすぐに女の子たちの体に触ろうとするこの社長にあった。

 客に触られるのは 特に新人のうちは腹は立つものの税金のようなものとして ある意味仕方ないとも思えたが、自分たちはあくまでビジネスでここにいる。だから上役からのセクハラなど有り得ないことであり、この社長はここで働く女の子たち共通の大きな不満の元になっていた。

 『ハコで70万、10箱まとめてなら600万』と提案したヒロに対し、『どうせ入りは30万くらいのものなら、売る時はせいぜい50万か60万だろう?』とコチラの思惑を知っているかのように返してくる件の社長。そう言う時の社長は、女の子の尻を撫でている時に見せるものとは別の顔をしていた。

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 ヒロがノックすると 例の子泣きジジイがすぐに扉を開けた。そしていきなり『なぁヒロユキ、そのタバコよぉ、10箱で500にならんか?』と言ってきた。どうも一晩考えてどうしても手に入れたくなったらしい。JTの冷凍物など どこを探しても無いというのが現実だったからだ。(なんだ、社長め よっぽど俺から欲しいのか?)そう考えたヒロは『社長、勘弁してくださいよぉ。俺も危ない橋渡ってて いつ捜査官に捕まるのかわからないんすよ?』とゴネてみた。

 社長は薄笑いを浮かべながら目をそらし、『・・・お前、俺相手にエラなったな。よっしゃ言うこと聞いたろ。ただし550や。それ以上は出せん』と見下ろすように再びヒロに向き直った。
 『550っすか・・・』。須佐美が言っていた基準は 入りでハコ25万、売る時はその倍の50万だ。だから10箱で550万なら須佐美の基準より多い。よしとしなければいけないのかもしれないが、もうちょっと取れると思えたからヒロも頑張った。『社長ぉ。今夜にでも10箱揃えてお持ちするんで なんとか600でお願いしますよ』

 しかし陳腐なヒロの芝居を見透かしたのか、社長の態度は変わらなかった。『あかん。550や』社長はじっとヒロを見据えた。子泣きジジイは子泣きジジイで ヒロの魂胆はわかっていたのかもしれない。

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