冬ははやり病の季節、トラベルとそんなに関係あるのかなあという話。

現代人は脳中心になってきておりますので、「あーすればこうなる」という人為で結果が変わるというものの見方が癖になっています。

しかしながら、自然界はそんなことはおかまいなしです。生き物の変化や結果において気温、日照、湿度などの要因はかなり大きいです。これは、フィールド系の自然科学の研究見習いの時にも実感しましたし、農業とかでも、肥料を撒くとか人の手でやることも影響がありますが、結局は天候です。(存在しない天敵が池に放り込まれたとかは人為でも影響が甚大ですが)

江戸時代の人口学研究でも分かってきたことも季節の影響を感じます。それは、死亡数が多い季節が二つあって夏と冬だったことです。真夏の死因は食中毒で、冬は感染症です。

夏は暑いのも食べ物が腐りやすい。冬に感染症が流行るのはなぜかと言うと、平均気温が下がり変化に慣れるまで体調を崩しやすく、太陽光も弱まるのでビタミンD生成も落ちます。免疫力が低下しがちです。

現代においても冬になるとインフルエンザ患者が増えます。どんだけ増えるんだろうと思って調べましたところ、地方衛生研究所という研究機関が調べておりました。この研究所は、各都道府県にありまして、病気の発生件数などのデータもここが集めています。

地道な研究ですが大事です。

2019年度のインフルエンザ患者の発生件数がこちらです。定点(保健所など?)あたりの報告件数です。

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引用元)
https://sr3.chieiken.gr.jp/infulurep/pub/rep.do?displayYear=2017

見たら一目瞭然ということで、冬にギュイーンと伸びております。最大で少ない時期の40倍ぐらいまで増えます。傾向としては江戸時代と変わってません。それでも江戸時代に比べて梅毒、結核も減りかなり平和になってはおります。

そういえば、北海道でとある感染症が拡大した時に旅行者が増えているということで、旅行者が原因だという話をしているのをインターネットの海で見かけました。

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引用元)https://twitter.com/nishiurah/status/1331050251772260355?s=20

これだけで、因果関係があるという判断をするのは大学の卒論研究だと教授に怒られそうな気もしますが、グラフはそういう魔力を持っているのかもしれません。世の中には疑似相関がたくさんあります。

プロの学者でも間違えるのは驚きですが、プロと言っても玉石混交なんです。特に医学系の教員は治療技能の先達という意味合いが強いので、なからずしもサイエンス的思考に長けているとは限りません。

感染症の話題で、理学生物学系の研究者と医学系の教授がテレビに出てきたら、どちらかというと理学生物学の教授の方が確かな見識を持っている確率が高いです。

医学部は技能や知識を覚えることが大事で卒論研究がないので、科学研究のトレーニングをする機会が少ないので致し方ないのであります。

一つ、データの読み取りについての小噺をしましょう。

相撲とかでも東方力士ばっかりが白星の日がありますが、これをもって「国技館の土俵は東方力士の方が有利なのである」と結論づけたら、オイってなります。これは擬似相関です。

これは極端な例ですが、これのおかしさに気がつけるのは、相撲という競技を多くの人がどんなものかなんとなくでも実体を知って理解しているからです。

しかし、相撲という競技を見たことがない人が、データだけ与えられ、あれこれ推論するとこういう結論を出してもおかしくない。半年前に、BCGの予防接種をしているととある感染症が重症化しないという話も出ましたが、相関はありそうに見えたが、よく調べるとそこまで関係ないという結論になっていました。

データを見てあれこれ推論するのは楽しいのですが、因果関係を証明するのはなかなか難しい。

フィールドと格闘してデータを取りつつ解析したとしても、たいしてはっきりしたことが言えないのが自然というものなので、さきほどの旅行者が増えたから感染が拡大したという話は、季節変化を鑑みると、旅行者数がどうとかよりも季節変化の影響が大きいような気がします。

季節の変わり目は、衣服の厚さ調整も難しく風邪を引きやすいし体調も崩しやすい。これは実感としてよく分かるのではないかと思います。10-11月なんて、寒かったり暑かったりで疲れます。

おまけに寒くなれば乾燥するので、飛沫粒子は細かく飛距離が伸びて喉の奥に届きやすくなります。狭い空間では換気しないとこれまた病気がうつりやすい。

体調管理と換気に気をつけて、お酒を控えて過ごしたいと思いました。慎重な方は、換気ができているかの目安になるCO2濃度計を持ち歩くと面白いかもしれません。

合掌

おまけ
国立感染症研究所のサイトにとある風邪ウイルス(HCoV)の発生報告件数の季節変化の考察がありました。こちらも10月から動き出して冬にギュイーンです。

(相関)ありますね。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2488-idsc/iasr-news/9715-485p03.html

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5年間の平均報告数では、夏季(7~10月)は冬季(12~2月)の1/10程度であった(図3)

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