浩司と敬子の婚活日記(3)

浩司

勝負服は友人のみのりの愛犬チロをデザインしたTシャツにした。
薄手のグレーのパーカーを羽織る。
それにベージュのチノパンを合わせる。
アディダスのス二ーカーは奮発して購入した。
リュックもアディダスだ。
お菓子が沢山入っている。
普段は洋服など、滅多に買わない。
今日の為に、1000円カットではない美容院に久しぶりに行ってきた。
スポーツ刈りが、心なしか、りりしく見える。

集合場所に着き、バスに乗り込む。
男女共に10人ずつ参加者がいる。
誰が好みか、じっくり見ている余裕もなく、
バスの中で男性が立ち上がり、席替えをする。
道中席替えを繰り返し、女性全員と会話をする。

名前と、年齢、職業、好きなお菓子の話をしていると、あっという間に時間が経ってしまう。
あまり恋愛経験がなく、どんなお話をしたら良いかも分からない。
沈黙の時間がこわかったので、必死だった。

そしてランチタイムになった。
座る場所は自由。
あまり体調が優れず、のろのろしていたから、自動的に空いている席に座ることになった。

昼食は山梨名物のほうとう鍋。
周りを見渡すと、ほうとうに負けないくらい、熱々ムードの男女もいた。
私はそれどころではない。

「私ほうとう大好きなんです」

と目を輝かせている、5番の女性が目の前にいた。
確か名前は…敬子さんだ。
好きなお菓子はきのこの山と力説していた。

「よかったら私の分もどうぞ…。まだ手をつけてません。お腹空いていないので。」

「えっ!!いいんですか!!それより体調大丈夫ですか?」

と言いながらも、ずるずるほうとうを食べ進めている。

「かぼちゃのとろとろ具合がたまんないわ…」とブツブツ言っている。

よく見ると顔は…美人でもないが不細工でもない。

私が評価できる立場にはないのだが、好みというものはある。

ほうとうをがむしゃらに食べ進める姿というのも、可愛らしく感じた。



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