浩司と敬子の婚活日記

私の名前は不呂浩司。37歳。独身。趣味はお菓子を食べること。

私の人生は波乱万丈だった。

小学生から続いた、酷いいじめ。

最近、友人のみのりに「線路に落とされましたからね」と笑いながら話したら、「それ、殺人じゃん」と突っ込まれた。

交通事故にもあったが、運だけはいいのか、無傷だった。

私の願いはただ一つ「子供が欲しい」

「いじめに遭うとさ、自分の子供を持つことに悲観的になったりしない?同じ目に合わないかとか…」とみのりに聞かれたが、

「それとこれとは別です!」ときっぱり言い放った。

命の芽を摘んではいけない。

子供は一人では作れない。

まして、男の私では、妊娠、出産できない。

「子供が欲しい」

「奥さんが欲しい」

「彼女が欲しい」

今までの人生、彼女がいたことはあるが、長続きしなかった。

「いい人すぎる」

「優しすぎる」

とフラれてきた。

いい人で、優しくて、何がいけないのか。

分からないから、私はモテないのだろう。

元彼女のみやびは、私のような退屈な男と付き合ってしまった反動なのか、刺激強い系の男に走っていき、すぐに子供が出来て、捨てられた。

それが私だったらば…

戻ってくるならすべてを許そうとした。

しかし今度は絵に描いたような家庭的な男と結婚し、二人目の子供を授かり、幸せに暮らしている。

どうして自由奔放に、人のことなどおかまいなしに勝手気ままにわがままに生きているみやびが幸せな家庭を手に入れ、いい人で優しい、私のような人間が今も独身でいるのだろう。

退屈かもしれない、物足りないかもしれない。

でも最後に選ばれるのはこういう男だ、と私は信じてきた。

そんな私ももう37歳。

婚活に乗り出すことにした。

顔には自信がないため、マッチングアプリは敬遠した。

顔で最初からはじかれてしまう。

結婚相談所もお金がかかるからNG。

婚活富士山バスツアーに参加してみることにした。

これならマッチングがうまくいかなくても、富士山に行った思い出は作れるからコスパがいい。

うまくいかない前提なのが自分でも悲しくなるが。

介護施設の夜勤明け、体調が万全ではない中、その日が始まった。


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