浩司と敬子の婚活日記(2)

私の名前は村上敬子。27歳。独身。趣味は想い出に浸ること。

見た目はおとなしそうとよく言われる。
いざ、付き合ってみると、あまりのじゃじゃ馬ぶりに驚かれる。

そのままの君が好きだと言われたから、そのままの私でいた。
ありのままとわがままをはき違えていたかもしれない。
だから私は今も独身なのだ。

子供の頃から結婚を夢見ていた。
高校を卒業したらすぐにでも結婚したかった。
が、相手がいなかった。

最初の彼氏は高1の時。
メル友から交際に発展した。
市内の離れた地域に住んでいたが、会いたい時には、夜でも構わず近所のコンビニまで会いに来てくれた。

初めての恋に夢中になった。

「ずっと一緒にいようね。」

「離れないでね。」

そんな気持ちも3か月過ぎると冷めていく。

彼の粘りで交際を続けたが、1年後にはキスができなくなってお別れを告げた。

その後の恋も大なり小なりこんな感じだ。

相手よりも、自分が冷めていく。
自分勝手な人間だ。

そこで気付いたのだ。

「振り回された経験がないから、振り回される気持ちが分からない。一度、遊び人に遊ばれてみよう!」

遊び人が出入りしそうなバーに出入りし、遊び人ぽい人と連絡先を好感し、遊び人ぽい人とデートした。

遊び人の遊びのターゲットにすらならなかった。

はて。

真面目に婚活しよう。

恋なんて脳の異常状態。
ドーパミンという快楽物質のしわざ。
アル中薬中と変わらない。
ならば、最初から恋なんてしなければいいのだ。
恋を飛ばして、さっさと結婚する。
最初から燃えていないから、冷めることもないだろう。

顔には自信がないから、マッチングアプリは敬遠した。

顔で最初からはじかれてしまう。

結婚相談所もなんだか敷居が高く感じた。

婚活富士山バスツアーというものを見つけた。

これはいい。

恋は夜に錯覚しやすい。

真昼間に目をかっ開いて、相手をよく観察する。

丸1日行動を共にすれば、なんとなくであるが、相手の人となりも見えてこよう。

自分自身が異性からも観察対象だということも忘れてはいけない。

そしてその日はやって来た。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?