浩司と敬子の婚活日記(11)
浩司
夢みたいだった。
目に映る全てが私を祝福しているように思えた。
敬子から
「赤ちゃん流れちゃった」
とラインが来るまでは。
「会って話をしましょう」とラインを送るも既読にならない。
ブロックされている。
敬子の心の傷は私の想像以上なのだ。
たった1回で妊娠できる運とDNAの相性が合うのなら、次がある。
そんな言葉は今は刃にしかならないのだろう。
敬子のことをあまり知らない。
派遣で事務を転々としていて、御徒町に住んでいることくらいしか…。
ダメ元で「村上敬子」とフェイスブックで検索したら、8名、同姓同名がいた。
その中で、一番可能性の高そうな「村上敬子」のページを開く。
これだなと思った。
詰めが甘い。
しっかり勤務先まで書いてあるではないか。
私がここまで執着するとは思っていないのか…。
私の子供を少しの間でも宿してくれた女性だ。
こんな終わり方は嫌だ。
私は元ヲタクで、執念深い。
SNSにアップされている写真から居住地を割り出すなど朝飯前だ。
もちろんこの能力は今回限り。
敬子に拒絶されたら二度としない。
私のメガネが、名探偵コナンのように、キラリと光った。
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