浩司と敬子の婚活日記(12)

敬子

もう、1週間も欠勤している。
社会人としても、終わっている。
今から東尋坊に身を投げに行こうか…。
東尋坊まで行く体力気力がない。

ここまで、ダメージを受けるとは思っていなかった。
1回で妊娠するなんて宝くじに当たったようなものだろう。
浩司ほど真剣に、子供が欲しかったわけでもないくせに。
こんな自分の浅はかさが嫌になるのだ。

チャイムが鳴る。
シカトする。
チャイムが鳴る。
シカトする。
チャイムが鳴る。
浩司だ。
玄関を開ける。

「よくここが分かったね。」

「敬子さんSNSに個人情報ガバガバですよ。気を付けないと…。」

「その才能、他でも生かせたらいいね。」

久しぶりに人と会話した。

浩司は赤い花束を渡してきた。

「結婚してください。」

「赤ちゃんいなくなっちゃったから、私たちこれで終わり。だからブロックしたの。」

「なんで勝手に決めちゃうんですか。1回で妊娠できたのだから、次があります。」

「浩司の言うことは分かる。私が浩司でもそう言うと思う。
次があるかもしれない。でも、たった1つの1回の命が消えてしまった悲しみが消えないんだよ。浩司といると思い出しちゃうと思う。」

「何回でも思い出しましょう。その子がこの世に少しの間存在したことを知っているのは、私たちしかいないんですから!!」

そして敬子はうう…と泣き出した。



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