浩司と敬子の婚活日記(5)

浩司

バスツアーのメインイベントは富士芝桜まつりだ。
会場に到着してからずっと、敬子さんが付き添ってくれている。
体調のすぐれない私を心配してくれているのだろうか。
もし他に目当ての人がいるのなら申し訳ない。

「あのう、敬子さん。私のことは気にしなくていいですから。他に目当ての方がいらっしゃるんじゃないですか?17番さんなんてイケメンですよね。」

「イケメンさんはないよ。絶対にない。だって自分が自分じゃいられなくなるから。イケメンさんの前じゃ大好きなほうとうも喉を通らない。そんな人と結婚できると思う?結婚は生活だから。私はときめかない恋を探してここまで来たの。」

ほうとう2人分ペロリと平らげる=私にはときめいていない

はっきり言われた。

「それより浩司さんは気になっている人いないの?いたらお手伝いするよ!」

「私は敬子さんが気になっていますよ。」

はっきり伝えた。

「じゃあ私ここにいていいんじゃん♪やった~!」

なぜか、喜んでいる。

「浩司さんとお菓子の話をした時だけが、バスの中で唯一、楽しかったんだよね」

そうだったのか…。

人の気持ちは分からないものだな、と思った。

雄大な富士山と鮮やかな芝桜の絶景が、一層輝いて見えた。






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