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S-REIT報酬事情

シンガポールは給与水準が高い。S-REITも例外でない。
独立取締役が半数以上いないといけない、というルールがあり、わざとお金がかかる仕組みにしているのでは、と思うくらい。中小REITでも報酬水準は高く、参入障壁になっている。ランキングを以下に紹介します。金額はシンガポールドル(SGD)。

1)運用会社役員
250,000ドル刻みでレンジで開示されている。トップ3社は全てMapletreeという、Temasek(シンガポールの政府ファンド)が保有する非上場不動産運用会社の系列。4位、5位は政府系不動産大手CapitaLand系REITで時価総額1位2位。いずれも大型REITでスポンサーも盤石であり、こんなに高額な人材でなくても、できる人はいっぱいいるのでは?

運用会社役員報酬ランキング


Mapletree Logistics TrustのNg Kiat CEO

2)取締役
社外取締役を半数以上確保するのがS-REITのルール。取締役会会長を独立にするパターンと、親会社のキーマンにするパターンがある。
独立取締役が会長をする場合SGD100,000強が相場のようだが、スポンサー派遣の場合は無償又は低額に設定していることが大半。
そんな中、1位はSasseur REITスポンサーの創業者。SGXはコンフリクトに関するルール(IPT)が日本に比べて異常なレベルで厳しいので、こんなに払っていることにちょっと驚きです。
2位のLim Swe Guanさんはシンガポール政府ファンドGICの不動産投資担当出身で、独立取締役。

取締役報酬ランキング
Xu Rongcan, Vito, Sasseur REIT

3)掛け持ち
シンガポールではアーリーリタイアして非常勤役員を掛け持ちすることが珍しくないです。非常勤なので、掛け持ちする時間はある。コンフリクトはありそうな気がするが。Stefanie Yuen Thioさんは弁護士だが、アーリーリタイアではない。ARAは近年の合併により、ESRの傘下となったので、兄弟REITを掛け持ちしていることになる。Tsui Kai Chong氏はSingapore University of Social Sciencesの学長やSingapore Management Universityの副学長などをされてた方で、以前はKeppel REITの役員をしていたとのこと。

掛け持ち役員の報酬総額ランキング


Stefanie Yuen Thio氏(ESR、ARA-HT)

4)日本人
少ない乍ら、日本人の役員がいるS-REITがあります。
Keppel REITはラサール等に在籍していた濱岡洋一郎氏が独立取締役。現在はEWアセットマネジメントというシニアに注力している会社の会長さんらしい。
Parkwayの役員は三井物産出資先のIHHグループからの派遣枠があります。現在はNAGAHIROさんという方。東大法学部-三井物産-Kellogg MBAというハイスペック人材。

大和ハウス系のDaiwa House Logistics Trustは、スポンサー側からの役員3名と独立取締役の弁護士が日本人(ボード6人中4名が日本人)。


濱岡洋一郎氏 Keppel REITの独立取締役

5)番外編・現役国会議員の参画
Suntec REITのCEOは現役のMP(Member of Parliament)=国会議員です。日本だと秘書が兼職しても叩かれますが、コンフリクトに超厳しいシンガポールで、国会議員が民間企業の社長を兼務しても問題ない、という整理なのが理解不能です。2023年前半にTin Pei Ling議員がGrabの常勤役員になるも、批判が巻き起こり7か月で辞任した例もありますが。国会議員も結構な額の報酬がありますし、議員活動は並行してできるものなのでしょうか?別のMPも、独立取締役ですが、REITの取締役を兼務しています。

Chong Kee Hiong, MP and CEO of Suntec REIT Manager
Usha Chandradas, MP and Director of OUE Commercial REIT

■まとめ
高額の役員やCEO、CFOを雇う必要があるシンガポールは、上場コストが高い市場だと言えます。ちなみに、一般社員も日本の同業より高いです。
最後に、S-REITへの参入を検討されている方向けのメッセージですが、上記のような高い報酬に加え、日本より高い要求利回りや株価のボラティリティ、運用報酬の一部を実質的な売却制限がある株で受け取ることが常態化しているなど、日本との差異への理解は大事です。

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