見出し画像

変化率の話しかしない人に、絶対値を聞いてみる。

世の中の経済指標という奴はほとんどみんなすべて、変化率のことしか出てこない。GDP成長率が前期比年率で‐5.1%とか。変化率は大事だけど、前四半期比なのか、前月比か、前年同期比か、名目か、実質か、年率換算した値なのか。そういう前提を抑えないと数字が大きいのか小さいのか、いいのか、悪いのかわからない。この辺をあいまいにして数字を一人歩きさせる傾向があるので要注意。せめて、GDPは「何兆円」なのか。ということを抑えるとぐっと現実感が高まる。2020年の日本の名目GDPは539兆円。2021年1-3月の名目GDPは135兆円くらい。2020年10-12月が143兆円だから、7兆円減った。7兆円って例えば、パナソニックの年間売上高くらい。という連想をしたほうが、何がどれくらい生まれて消えたのかっていう実感が近くなる気がする。もちろん、名目の季節調整なしの数値だからちょっとそのまま比べるのは違うんだけど、やっぱりどの都市も10-12月のGDPが一番大きくなる。でも、率とか、割合とか、増減っていう数値は、絶対に絶対値がどれくらいなのかという感覚を前提にしていないと扱いにくいとおもんだけどな。

もう一つ例を挙げると、米雇用統計。いちおうマーケットはめちゃめちゃ注目している指標だから気にしておく必要はあると思うんだけど、マーケットに賭けている人たちの使い方はもうシンプルで、雇用者数が○○万人減った増えたという数字だけを見ている。事前にエコノミストたちの予想値の平均がでて、実際に発表があった時にその予想値からどれくらいアップダウンがあったか、それしか見ていない。それはそれでそういう使い方もあるということでいいんですけど、毎月こんなにしっかりとした統計が出るんだからちゃんと見といたらきっと面白いはず。雇用統計の話をしている人に先月より非農業部門の雇用者が+20万人増えたんだよと言われたら、「へぇ+20万人増えて何万人になったんですか?」と聞いてみよう。多分誰も答えられない。調べたら全員ただで取得できる情報だけどだれもそんなもの見ていない。私ももちろん見ていないので、調べてみると、ちゃんと出てくる。16歳以上の人口が米国には2億6110万人いて、そのうち軍人、政府関係者、リタイア済、Handicapped or discouraged workers(適切に訳せる自信がないので)と農業従事者の数を除いた人口、すなわちの農業でも政府でも軍でもない企業とかで働きうる人口が1億6098万人。つまりこれが失業率計算上の分母になるわけですね。で、そのうち雇用者数(=non farm paryoll 非農業部門雇用者数)が1億5117万人ということなんですね。ここの数字を追っかけていると。

画像1

雇用統計にはもう一つ面白いものがあって、非農業部門の平均時給と週給がでるんですね。平均時給が30ドルで、週に1056ドル稼いでいると。年間52週に直すと平均年収は54912ドル=600万円くらいです。これはあくまで平均値なので、ここにほんとに「平均値な人」が存在しているかどうかは分布を見ないとわかりませんが、結構高いように感じますね。

乱暴な計算をすると、雇用者数が100万人ふえると、年間換算で労働者の年収が6兆円くらい増える、そのかなりの割合が消費に回るわけですね。それは確かに景気に貢献しそうです。こういう連想をすると多少は味気ない統計が面白く見れるのかもしれません。でもなかなかに面倒くさいです。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?