一方通行風呂｜ショートショート

お父さんもいなくなった。

お父さんが一方通行風呂に行ってから3時間。まだ帰ってこない。

一方通行風呂に最初に行ったのはお母さん。お母さんが帰ってこないから、お父さんが探しに行った。

「俺が母さんと父さんを探しに行くよ」
お兄ちゃんは一方通行風呂に行ってしまった。

朝になり私も一方通行風呂に行くことにした。
一方通行風呂はとなりのビルの地下にある。
白い壁のトンネルみたいな通路を降りる。
深くふかく降りていく。通路はどんどん細くなっていく。
私はするすると通路をすすんでいく。

お父さん、お母さん、お兄ちゃんを見つけた。

白い壁の通路が細すぎて、脂肪がたっぷりの身体が前にも後ろにも進めなくなってモゴモゴしている。
なんだか太った虫みたいだ。

助けて。助けて。
３人が言う。

「お母さんもお父さんもお兄ちゃんも食べ過ぎなんだよ」私は可笑しくて笑ってしまう。

細い壁の通路をスキップしながら私は家に向かう。

もう私をぶつ人はいない。明日から学校に行こう。

（410文字）

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