定期演奏会をYouTube Liveで配信した話
この記事は 吹団あどべんとかれんだー の5日目の記事です。5日目にしてトップバッターですが……
自己紹介
まる(@ymaru1018)です。筑波大学情報科学類の3年生です。
吹奏楽団(以下「吹団」)ではテナーサックスを吹いています(大学から始めた)。
演奏会を配信することになった
なりました。
吹団では、2023年6月18日に行われた 第89回定期演奏会 (以下「89定」)をYouTubeにてライブ配信しました。
私は、2年生のときまで大学の学園祭実行委員会(以下「学実委」)に所属し、学園祭のWebサイトやらステージ企画の生中継やらを担当する「情報メディアシステム局」という部署の長をさせていただいていたので、その経験が買われて(?)吹団の方でも演奏会の生配信を担当することになりました。
あ、学実委の振り返り記事も去年のアドカレで書いたのでよかったら読んでください。
やったこと
さて、そんなこんなで配信の担当に抜擢されてしまったわけですが、演奏会の生配信を行うためには大きく分けて二つの仕事を行う必要がありました。
楽曲の著作権処理
機材の調達・実際の配信作業
以下ではそれぞれについて詳しく話していきます。
著作権処理
吹団が演奏する曲は(当然ですが)どこかの作曲家が作曲したものであるため、それを演奏して配信するには当然著作権の処理が必要になります。
とか言ってたのにまたやる羽目になりました。
演奏に係る著作権処理
演奏会で楽曲を演奏する場合、著作権法上の演奏権(第22条)が及ぶため、使用の申請と使用料の支払いが必要になります。
ただし、以下の条件を満たしていれば自由利用が認められるという規定(第38条1項)があります。
営利目的ではない
観客から料金を受けない
実演家(演者)に報酬が支払われない
吹団の定期演奏会はこれに該当していたので特に手続きなしで使用することができます。やったね。
……と思ったのも束の間、そんな簡単な話ではありませんでした。
編曲に係る著作権処理
吹奏楽では(少なくとも吹団では)楽曲が編曲された上で演奏されることが時々あります。例えば、
「聞こえないから〇〇も△△の音吹いて!」
「編曲ダサいからリズム変える!」
「オーケストレーションがなってないからこれで吹いて!(スコアを送りつける)」
のような場合などですね。
89定で演奏する曲のうち数曲にも手が加えられることになり、そのための許諾を得る必要が出てきてしまいました。
具体的には、
星条旗よ永遠なれ
落夏流穂
Another Day of Sun
パリのアメリカ人
学園天国
の5曲です。
これらは各出版社に問い合わせ、個別に許諾をお願いしました。
結局のところ無事全ての曲で許可を取ることができたのですが、落夏流穂の許可取りでは一悶着(というかただの私のミス)がありました。
5/24 17:42
出版社のWebサイト上のお問い合わせフォームから許可が欲しい旨を連絡5/24 19:11 (←早い!!)
出版社からメールで返答があったものの、迷惑メールに紛れ込む6/13 17:54
返答に気づかずメールで催促をする6/13 18:02 (←めちゃめちゃ早い!!)
出版社の別のアドレスから返答、無事受領6/13 19:07
詫びメールを送信
出版社の方、お手数おかけしてしまい大変申し訳ございませんでした……
配信に係る著作権処理
以上のような手続きを踏んでようやく楽曲を演奏することが可能となるわけですが、まだ配信するにあたって必要な著作権処理が終わっていません。
この辺りになってくると天下のJASRAC様が顔を出すようになってきます。JASRAC様とYouTubeは包括契約を結んでいるため、JASRAC様が「全ての」著作権を管理している楽曲ならば、特に申請をすることなく配信で使用することができます(アーカイブを公開する場合は話が別)。
この辺についてもっと詳しく知りたい方は以下のページを読んでください。
ただ、話はそう簡単ではありませんでした。(2回目)
調べるうちに以下のような曲が存在することに気がつきました。
原曲部分についてはJASRACが全ての権利を管理しているが、吹奏楽版については管理していない
JASRACが全ての権利を管理していない場合
($${\lnot (\forall 権利, 権利を管理)}$$であり、$${\forall 権利 (\lnot 権利を管理)}$$ではない)
前者の例としては交響組曲「シネマ・トリロジー」、後者の例としてはセドナなどが挙げられます。
前者についてはとりあえず出版社(Winds Score)のページを見てみました。
というわけで問題なし。
後者については仕方がないのでメールをします。出版社は……
……BIRCH ISLAND MUSIC PRESSとかいう外国の出版社でした。そりゃそうだよね、スティーヴン・ライニキー作曲だもん。
というわけで英語で問い合わせました。
こちらもそれほど待たずに(社会人すごい)返答が来ました。
英語が通じたようでよかったです。
結局
ほぼ全ての楽曲について許諾を得ることができました。
ただ、幕間の1曲だけは編曲者が個人であったため、許諾を得ることができず配信することができませんでした。無念……
機材周り
生配信をするためには(当たり前ですが)カメラなどの配信機材が必要になります。
機材の調達
吹団は安そうなビデオカメラとちょっといいレコーダーしか持っていないため、演奏会を生配信するにはどこからか大量の機材を調達する必要がありました。
私が学実委に所属していたこともあり、89定ではそのコネを活用しました。それでも足りない分は新たに購入したり、私物を(大量に)投入したりしています。
また、配信用の回線はモバイルルータをレンタルして調達しました。
何かあったときのための予備機材に至っては全て私物です。
なにがあっても配信はできるよう備えていたため、モバイルルータが死んだ時は容量無制限SIMとスマートフォンでどうにかするつもりでした。
結局使わずに済んだのでよかったです。
配線
89定を開催したノバホールの座席表に少し加筆したのが以下の図です。
図中の各番号の場所に以下の機材を配置しました。
モバイルルータ
L2スイッチ
カメラ・ミキサー・スイッチャー類
マルチボックス(ホール備え付け)
モバイルルータを上手側に配置したのは、そちらの方が電波が強かった(通信速度が速かった)からです。
また、当初の予定では以下のような配線になる予定でした。
テスト
上記の図に示した配線を本番前日に行い、配信のテストを行いました。
……が、うまく配信できない!!!
後でじっくり調べてみたところ、回線がモバイルルータであることに気を取られ、ATEM Mini Proの設定において配信の画質をできる限り落としていたため、かえってエンコーダに負荷がかかりバッファが溢れたようでした。
現地でそこまでゆっくり調べている暇はなかったため、急遽予備機材として持ち込んでいた私物のPC上でOBSを立ち上げ、そこから配信することにしました。
また、ホールからもらっていた司会マイクの音声がなぜか小さく、ノイズが乗りまくりで使うことを断念したため、最終的な配線は以下のようになりました。
配信をしてみて
そんなこんなで当日を迎え、無事配信することができました。
平均92人、最大147人の方々に見ていただき、配信した甲斐がありました。
また、チャンネル登録者数もほぼ倍増し、100人超えを達成することができました。
演奏する側としても、「◯人のお客さんが配信を見てくださっている!」と、モチベーションを上げることができ、やってよかったと思っています。
おわりに(宣伝)
吹団では12月10日に第90回記念定期演奏会を開催しますが、その演奏会もYouTubeにて生配信を行う予定です。
ホールまで足をお運びいただかずにYouTubeで観ていただくだけでもとても嬉しいので、ご興味のある方はぜひご覧いただければと思います。
また、対面のチケットも販売中(無料)です。予定が合えば、ぜひホールへお越しください!!!
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