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Cody・Lee(李)から尾崎リノが卒業することを受けて

昨日、バンド「Cody・Lee(李)」のアコースティックギター・ボーカルを担当する尾崎リノが、自信のソロ活動と生活に専念するために卒業することを発表しました。

このことを受けて、今回の記事では改めてCody・Lee(李)の活動やそこで果たした尾崎リノの役割について、自分なりに考えたことを記事としてまとめたいと思います。


Cody・Lee(李)について

Cody・Lee(李)は2018年に結成された、東京を拠点とするロックバンドです。リスナーの心に生活の風景を描く独特な暖かさや哀愁がロックファンの心に刺さり、口コミから徐々に人気を集めてきた、まさに今注目すべきバンドの一つと言えるでしょう。
Google Trendからも、近年のCody・Lee(李)の人気の急成長が伺えます。

Google Trendにて調べた「Cody・Lee(李)」の人気度

特に2020年冬ごろからの急成長が伺えます。これは同時期にリリースしたアルバム「生活のニュース」のリード曲「我愛你」のMVが台湾・アメリカを中心に世界中で話題を呼んだことが発端でしょう。
聴いたことのない人はぜひ聴いてもらいたい一曲です。

楽曲の最初から銅鑼が鳴らされ、終始オリエンタルな雰囲気を醸し出すこの楽曲は、現代の邦ロックのシーンから見るとかなり異質な雰囲気を持ちます。しかしその中にもCody・Lee(李)の追求してきた「日常生活・暖かさ・哀愁・愛」といった要素が曲全体や歌詞に溢れており、まさに彼らを代表する曲の一つであることに違いないことでしょう。

YouTubeチャンネル登録者は現時点で15.8万人、全国ツアーを行えば公演はソールドアウトし、またFUJI ROCK FESTIVALなどの大型音楽フェスティバルにも多数出演といったまさに今期待のロックバンド、Cody・Lee(李)ですが、そんな人気絶頂の最中、ギターボーカルの尾崎リノが卒業の意思表明をしたことには、メンバーも動揺を隠せなかったようです。

今回のこういう話をいただいた時、我々は正直びっくりしたというか、どうしようという話になりまして…

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

尾崎リノとCody・Lee(李)の関わり

尾崎リノは元々ソロのシンガー・ソングライターとして活動するアーティストでした。大学在学中に本格的に音楽活動を開始し、アルバムをリリース、サーキットフェスなどに出演する他、自主制作映画の上映や短編小説の執筆など、音楽にとどまらずさまざまな文学的な分野でも活動をしていました。

Cody・Lee(李)との交流は、尾崎リノのソロ活動で同じフェスに出演して知り合ったことがきっかけでした。Cody・Lee(李)のギター・ボーカル高橋響の作る楽曲に感銘を受け、彼女から高橋に「いつかコラボをしたい」という声をかけており、その数ヶ月後にCody・Lee(李)のメンバーが脱退したことからサポートの依頼が尾崎にかかりました。
こうして2019年9月よりサポートメンバーとしてCody・Lee(李)にて活動、2020年1月に正式メンバーとして加入、という経緯があります。

Cody・Lee(李)の楽曲は日常の生活をベースとした、温かみや哀愁を感じさせるものが多いですが、そうした特徴は尾崎リノ自身の持つ考えと非常に親和性が高く、彼女の存在はCody・Lee(李)をより際立たせることに一役買ったのではないかと僕は思っています。

上述したCody・Lee(李)の特徴は楽曲制作を務める高橋も意識しているようです。

高橋響「(僕らの音楽は)都会の温かさと田舎の温かさがうまく共存している世界。そこに一本『愛』という軸がある」

Taiwan Beats jp「「都会と田舎の温かさがうまく共存している世界とロードムービー」 Cody・Lee(李) x 拍謝少年Sorry Youthスペシャル対談」より

またこの意図は聞き手にも伝わっており、さまざまなリスナーやメディアからも評価されています。

Cody・Lee(李)は生活を歌う。『生活のニュース』は約2年の活動で生まれた楽曲がつめこまれ、だからこそその「生活」部分が浮き彫りになった作品だ。上京してきた一人の青年の出会いと別れと葛藤の物語が描かれ、まるで高橋響(Gt,Vo)の日常をのぞいているかのような錯覚におちいらせる。ときに青二才の怒りや焦りに押し出され、またあるときは恋人との何気ない会話に宿るあたたかさをすくい上げるような、ソングライティングが瑞々しくパッケージングされた。

OTOTOY「生活の柔らかさと痛み──Cody・Lee(李)、ファースト・アルバム『生活のニュース』」より

過去の自分の記憶が蘇ったり、行ったこともない場所の景色が浮かんできたり、ひとつの曲のなかで、いろんな気持ちになれて、そのどの気持ちも、心地が良いのです。
 (芸人マツモトクラブの、Cody・Lee(李)の楽曲「LOVE SONG」に対しての感想)

音楽ナタリー「Cody・Lee(李)が会いたい人に会う、新たな形の対バンツアー|7組の“来客”が語るCody・Lee(李)の魅力とは?」より

こうした高橋の作る楽曲が、尾崎の持つ世界観と非常に合致していました。というのも、尾崎自身もその音楽活動を、人々の日常生活の中から見出しているからです。

歌詞はどうやって書いているんですか?と質問される事があるが、私にとって歌詞は書くものではなく集めるものという感覚に近い。人と人の会話、半径1mの日常生活の中、中吊り広告、映画の台詞、ピロートークまで全てが歌詞になる材料だと思う。
生活の中を猛スピードで駆け回る言葉達を必死でつかんでポケットに入れる作業、これが私の歌詞の作り方でもあり世界の捉え方でもあり趣味でもある。

ガクセイ基地「尾崎リノの音楽を言語化してみようか」より

Cody・Lee(李) 高橋の作る楽曲の特徴と尾崎自身の持つ世界観の共鳴、またそれを引き立てる尾崎の透明感のある声が、Cody・Lee(李)の持つアイデンティティを更に特徴づけていったのではないかと思っています。
そんな重要な位置を占めていた尾崎リノの卒業には、Cody・Lee(李)のファンの中でも驚かれた方が多いのではないでしょうか。

卒業の理由

そもそもなぜ尾崎リノはCody・Lee(李)を卒業する気持ちになったのでしょうか。その理由は本人の口から以下のように語られました。

尾崎:卒業の理由といたしましては、Cody・Lee(李)での活動が忙しくなるにつれて、自信のソロ活動に向けられる時間がどうしても少なくなってしまうことと、ソロの方での制作スタイルとどんどん忙しく有名になっていく上でCody・Lee(李)とのスケジュールの折り合いの付け方があまり、私が器用でないばっかりに、分からなくなってしまったことが大きな理由です。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

尾崎リノの卒業を聞いた人の中には、「Cody・Lee(李)はまさに急成長中のバンドなのだから、今卒業するのは勿体無いように思う」という人も多いのではないでしょうか。しかし、彼女の人生にとっては有名になることよりも、自分の活動と向き合うことのほうが優先度が高いようです。このことは過去のインタビューの内容からも読み取れます。

――今後はどんなアーティストを目指していますか?

尾崎 私は武道館に立ちたいとかテレビに出たいとか、そういう大きな野望がなくて、今の生活でいいんですよね。目標としては、音楽で食べていくことはもちろんだけど、やりたいことをやるために必要なお金に困らないようになることが、今一番目指しているところです。今の生活をこのまま続けて、創作活動をずっと続けていきたい。その結果としてライブにお客さんが来てくれてSOLDしたい。爆売れしたいという望みはないけど、これまで続けてきた中でだんだん自分の曲に自信を持てるようになってきたので、私が好きなものを発信し続けていれば、ファンは付いてくれるだろうって思えるようになってきましたね。

クマ財団「頭の中で小説を書いて、それを歌にする短編小説のような曲作り。〜4期生インタビュー Vol.15 尾崎リノさん〜」より

私は結局表に立つような人間ではないので人の評価だったり見え方だったりを人並みに、もしかしたら人一倍気にしてしまうように感じる。わたしの目標として、SNSをやらなくてもわたしの音楽をいいと言ってくれる人達がネット社会ではなく現実で手を広げて待ってくれているような音楽を作る人間になりたい。大きい舞台に立つ、とかではなくまずそこを目指していきたいなとおもう。

ガクセイ基地「尾崎リノの音楽を言語化してみようか」より

人によっては「有名になる」「多くの人に評価される」と言ったことが何よりも大切な価値観であることもあります。しかしそれは、おそらく尾崎リノの価値観とは異なるものです。
さまざまな形の日常を眺め、物語として自分の中で消化し、音楽という創作活動の中でアウトプットする、そうした一連の営みこそが、何よりも彼女の人生で大事なものなのだろうという印象を僕は持っています。そして、そうした自身の生活を受け入れてくれるような人たちと関わること、それこそが、有名になる以上に大切な彼女の人生観なのではないかと感じました。
有名になっていくCody・Lee(李)のメンバーとして活動していくのではなく、そこから卒業し、自身の大切にしている価値観と向き合う、そうした生き方への選択は彼女にとって後悔のないものになるのではないでしょうか。

何かを終わる決断をすることは、非常に難しいことです。それをできた尾崎リノの勇気は尊敬に値するものだと思います。このことについてはCody・Lee(李)のドラム・コーラスである原も以下のように語っています。

何かをやり始めることよりもやめることのほうが僕は勇気がいると思うから、すごい純粋にこれから一人でやっていくっていうのはかっこいいって思ったし、それをファンの皆さんとも一緒に見守れたらと思います。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

尾崎リノの今後の活動

尾崎リノは、Cody・Lee(李)卒業後に行いたい活動として以下のように話しています。

尾崎:Cody・Lee(李)をやってて一番足りなかったものが時間だと思っていて、すごく抽象的なんだけど、いろんなものを見る時間が増えて、だから少し潜ろうかなと。
高橋:吸収の期間ね
尾崎:そう、もっと自分を見つめ直す時間を楽しみないなっていうのが強くあって、そういった時間を自分なりに過ごそうかなと。心ゆくまで。後悔は絶対しないから、この決断に。それは安心してほしいし、これを見ている人、気が向いたら私が今何をしているかみたいなのを気にかけてくれたら嬉しいけど、ベースは自分自身と見つめ合う時間を過ごしたいなと。それがすごい楽しみだし、これを見ている人はもうわかると思うけど、決して不仲な終わりではないし、前向きに捉えてほしい。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

尾崎は1999年生まれ、今年24歳になる若さであり、その目に映る日々の生活の光景は、慣れ親しんだものであるとともに新鮮さも感じるものでしょう。そうした日常と向き合う時間を持つことが、今後の尾崎リノの創作活動につながることを、ファンである僕自身は願っています。

Cody・Lee(李)の今後

尾崎リノが卒業した後のCody・Lee(李)の今後はどうなるのでしょうか。高橋によると、基本的な軸は変わらないままにしたいとのことです。

高橋:リノちゃんがいなくなったからガラッと方向を変えて、というのは一切なくて、いままでのCody・Lee(李)を地続きのまま続けていく、ということだけが決まっています。(中略)そもそもそんな背伸びしてやっているバンドじゃないので、今まで通りみんなと仲良く、お客さんと仲良くやれたらと感じています。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

尾崎リノがCody・Lee(李)で果たした役割は大きく、脱退による影響は少なからずあることでしょう。しかし、Cody・Lee(李)は解散しませんし、彼らは彼らの活動と生活を続けてくのです。

高橋:もう一緒に地方の寂れた居酒屋で飲む事も、僕の歌を歌ってくれることも、隣でギターを弾いてくれる事も無くなると思うと寂しい。「将来一緒にライブをしよう」とか「また僕の歌を歌ってくれ」とかそんな事は言わないから。リノちゃんの作りたいものを作って生きて欲しい。僕たちも僕たちの生活を続けていくから。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

Cody・Lee(李)の特徴の一つに、ノスタルジーを感じさせる独特な歌詞と楽曲があります。これはもちろんリスナーの心を掴んで離しませんが、今回の卒業を受け、特に尾崎リノ自身にも、Cody・Lee(李)に対する哀愁を感じさせるものになるのではないでしょうか。
彼女は卒業して、Cody・Lee(李)と尾崎リノは音楽としては別々の道を進み始めると思います。それでも元メンバーとしての関わりである以前に、人として、信頼できる友人として、これからも関わっていって欲しいなと思います。今回の送別会の動画で、何気ない以下の会話が僕にとってはとても印象的でした。

力:自分も今まで組んでたバンドでこんだけ続いたバンドがなくて。高校の頃から音楽やってて、一年ぐらいで毎回バンド解散しちゃってた。ここまでおんなじメンバーで一緒にいろんなとこ回れたって、なんか…またダーツとかボーリングとか、やれたらいいなっていう気持ち。
高橋:プリクラ撮りに行きたいしね。まぁまた行きましょ。プリクラは。それ以外はちょっと要相談で。

YouTube「尾崎リノ 送別会」より

おわりに

以上、今回はCody・Lee(李)から尾崎リノが卒業することを受けて記事を書いてみました。
もしこの記事を気に入ってくださった方は、是非いいねを押してもらえると嬉しいです。それでは、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

参考記事

  1. Cody・Lee(李)オフィシャルサイト

  2. YouTube「尾崎リノ 送別会」

  3. タワーレコードオンライン「尾崎リノ」

  4. 音楽ナタリー「Cody・Lee(李)にシンガーソングライター尾崎リノ加入」

  5. radiko news「【注目の学生アーティスト】大切な人との何気ない日々を、ポエトリーリーディングで歌う尾崎リノ」

  6. ガクセイ基地「尾崎リノの音楽を言語化してみようか」

  7. クマ財団「頭の中で小説を書いて、それを歌にする短編小説のような曲作り。~4期生インタビュー Vol.15 尾崎リノさん~」

  8. Mikiki「尾崎リノ『open gate』Cody・Lee(李)のマルチな才能が透明感ある声と独自の感性で描く詩世界で唯一無二の存在感を放つ」

  9. OTOTOY「生活の柔らかさと痛み──Cody・Lee(李)、ファースト・アルバム『生活のニュース』」

  10. ぴあエンタメ情報「2022年ブレイク筆頭候補バンド・Cody・Lee(李) 「人力でやったほうが面白い、そこからあたたかみを感じてもらえたら」」

  11. Taiwan Beats jp「「都会と田舎の温かさがうまく共存している世界とロードムービー」 Cody・Lee(李) x 拍謝少年Sorry Youthスペシャル対談」

  12. 音楽ナタリー「Cody・Lee(李)が会いたい人に会う、新たな形の対バンツアー|7組の“来客”が語るCody・Lee(李)の魅力とは?」

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