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聖典

それはもう大昔のこと、人は毎日食い物を得るために魚をとったり狩りをしたり、食える植物を育てたり、そんなことをして生きていた頃。

1人の大法螺吹きがいた。

始まりの始まりはな、この世の中は何にもなかったんだと

ずっと夜でな、それも星も月もない夜でな、だから俺が言ってやったさ

明るくならなきゃ何も見えねぇ、明るくなれってな

それで昼と夜ができたんだ

そのまんまじゃちっと味気ないからな、お日様やら月やらキラキラする星やらがなきゃなるまいってな、ついでに空と地面もな、ちゃんと別れろって、そう言ってやったんだ、うん。

その日はくたびれたからな、次の日に草っ原やら食える実のなる木をこさえてな、また次の日はそこらに獲物をこさえてな、何日もかけていい具合にこさえてな、まぁよかんべと思ったから、お前らどんどん増えて人間が食い物でこまらねぇようになれよってそう言ってやったんだ、うん。

それで最後にな、俺たちの先祖の先祖の先祖のな、もとになる人間を作ってやっただよ。

この大法螺は集落のみんなが面白がり、機会のあるごとに話は続き、ずっと語り継がれていった。

そのうちに記録され、整理されるようになり、現代に於いても大ベストセラーである。想像力は偉大なり。


おわり




新しいことは何も書けません。胸に去来するものを書き留めてみます。