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長編

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長編小説「顔」 瀬戸真広は福岡に本拠地を置くプロ野球球団、福岡アウェイクオウルズの球団職員。 かつては前身球団のアイドル選手。整った顔とスタイルから女性ファンの声援を一手に担っ…
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顔 1

鏡の中の自分を見て、顔に何の価値があるのかと首を捻る。 3月が始まったばかりのまだ寒いある朝の日、瀬戸真広は洗面所でしばらくそうしていた。 肌はもう水を弾かなくなり、ダラダラと水滴が筋を作って落ちていく。 頬や瞼の質感は重く、色は白いかもしれないがくすんでいる。 歳を取ったと直感で答えを出して首を振る。 なぜ朝からそんなことで頭を抱えるのか。 原因を探して、すぐ見つける。 目覚める直前まで見ていた、イヤな夢のせいだった。 「男前」「ハンサム」と持て囃されている自分を、今の