見出し画像

プログラム最終日、MOFシェフの授業3

▲Le Bon Marché(6区)
世界最初の百貨店です。手前は同店を開店したAristide Boucicaut氏にちなんだ"Square Boucicaut"(ブシコ広場)です。(地下はメトロ駅"Sèvres - Babylone")
当時には目新しい定価販売や返品といった概念は、今日にまで引き継がれています。

MOFシェフの授業

19日、プログラムは最終日を迎えます。
この日の講師は、MOFの称号に加え、世界的な料理コンクール"Bocuse d'Or"(ボキューズドール)で優勝経験のある、数少ない快挙の持ち主です。

授業では前菜からデザートまでの4皿をクラスメートで仕上げました。
私はグアテマラ人クラスメートとともに、デザートを担当。

まずは"entrée"(前菜)です。
"SAINT-JACQUES, Œufs miroir et velouté de coco paimpolais"

画像4

薄切りのホタテにチョリソー、クルトン、マッシュルームです。
卵黄は酢にしばらく浸けていますが、これが全体にほどよい酸味をもたらします。

画像8

白豆の"velouté"をソース代わりに流します。
過去の記事で何度か登場(参考;「とろみのあるスープvelouté」)しており、作り方は同様です。

次に"poisson"(魚)です。
"CABILLAUD CUIT AU BEURRE DE COCO,
Citron vert et légumes aux épices"

画像1

東南アジアの香りが詰まった一皿です。
スパイスオイルをまとった野菜、心地よい食感のタラ、ココナッツミルクのソース。上にライムやパパイヤ、コリアンダー。

画像5

魚は生姜やココナッツミルク、シナモン、レモングラスなどとともに、ぎりぎり火が入る程度に加熱しています。

次に"viande"(肉)です。
"CANON D'AGNEAU EN CAMAIEU DE VERT"

画像2

子羊の"filet mignon"ににんじんなどの付け合わせ、"jus"の一皿です。

"rosé"(ピンク色の状態 )よりも少し加熱したものが好みだとシェフは言います。

画像6

よくカラメル化させた色合いは、フランス料理の特徴の一つかもしれません。

画像7

"filet mignon"はパセリなどの生地で覆うとともに、豚の"crépine"(網脂)で巻きます。(参考;「シャルキュトリー Charcuterie」

最後に"dessert"(デザート)です。
"KAWA TIRAMISU"

画像3

"kawa"ってなんだろうと思って調べてみても、全知全能な"Le Grand Larousse Gastronomique"にすら載っていません。
どうやらコーヒーの俗称で、アラビア語に由来するようです。

"Le Petit Larrouse (2003)"には、ポリネシアで飲用される嗜好品としての記述がありますが別物のようです。(kawaまたはkava)

画像9

以前の授業で、タルトに見られたのと同じ現象が生じています。
ティラミスの現代的な再解釈です。

【TIRAMISU】
Dessert italien créé dans les années 1970, à base de couches de biscuits à la cuillère imbibés de marsala sec ou d'amaretto et de café fort, de couches de crème au mascarpone et aux œufs (jaunes et blancs battus).

辞書で説明があるのは、リキュールやコーヒーなどに浸した"biscuits"の層と、"crème au mascarpone et aux œufs"(マスカルポーネと卵のクリーム)の層との構成です。

画像10

最下層は"gelée cafè"(コーヒーゼリー)なので、安定しており、前もって準備しておくこともできます。

ここにマスカルポーネの生地や"genoise"(ジェノワーズ)、"ganache"(ガナシュ)、"crumble"(クランブル)などを配置します。

グラタン皿に敷き詰められた家庭的なものがある一方で、こういった構成も可能であることを考えると、定番料理にもまだまだ知らない一面があると言えそうです。 

プログラムを終えて

さて、料理初級プログラムを終えました。
修了式は前日に終えているので、担任シェフとクラスメートは授業後の調理場で、思い思いに雑談に耽ります。

担任シェフとの思い出話で度々引き合いに出されるのは、プログラム当初、鶏の切れ込み箇所を入れ間違えたクラスメートに対して、シェフが大声を張り上げたことです。(参考;「鶏を捌く」)

今でこそクラスメートはその憤りっぷりを真似して笑い合いますが、シェフは苦虫を嚙み潰すように振り返ります。
シェフはその日の夜、とんでもないことを言ってしまったと後悔し、奥さんにも相談したことを告白します。

しかしその件から4か月。シェフは全力で私たちを鼓舞してくれましたし、私たちも身に付けた成果を示すことで、シェフの期待に応えることができたのではないかと思います。

クラスメートにも恵まれました。
この5か月、全員がプログラム完遂のために同じ方向を見続けて協力できたことは素晴らしいことです。
コロナ感染による休講、多くのイベントの変更・キャンセルなどがありました。それでも誰一人脱落しませんでした。

全員の進路が決まりました。
11人のクラスメートのうち、6人はレストランでの研修先を確保しました。人によっては飲食店の再開(少なくとも2-3ヶ月先)を待たねばなりませんが、止むをえません。
私含めて4人は別プログラムのために学校に留まります。うち2人は菓子初級プログラム、1人はバーテンダープログラム、私は料理上級プログラムへ進みます。
1人は諸事情で帰国しますが、料理人になることに変わりはありません。

全員が異なる背景を持ち、異なる方向性を見据えています。
それでもお互い、高い次元で共通する点を確かめ合い、自分にあって他人にないもの、自分になくて他人にあるものを見つけてきました。

さて、4月からは料理上級プログラムが始まる予定です。
学期中は予習復習が中心でしたが、休み期間は自分の気になることでテーマを設定して探求していこうと思います。
また、引き続き外出制限で観光を楽しめない状況ではありますが、可能な範囲で探索も楽しみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?