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毛の役割は? と聞かれたら何と答えよう。

まずは衝撃をやわらげる緩衝材か。それとも保温機能に着目するだろうか。動物の毛としては威嚇=自分を巨大にか異様に見せる機能が加わるだろう。それよりも、自分を飾るファッション性を先にいう人もいるかもしれない。

この他にあるだろうか。

微生物の世界に目をむけると、上記のような役割の他に移動の推進機関を挙げることができる。

ゾウリムシ。彼らは水中を遊泳して生活している。遊泳を可能にしているのが体表を覆う繊毛だ。彼らはこれをわななかせて水を掻いている。

繊毛とは違った方法では鞭毛がある。鞭毛の付け根にはモーター状の器官が備わり、これで長い毛を旋回させて前進する。

彼らにとっての毛は、魚のヒレやボートのスクリューのような役割を負っている。

水中を遊泳する微生物の他に、固定物に依存する生活者がいる。

アスピディスカ。彼らは数本の剛毛で固定物に接地して移動する。彼らの毛は私達の足に似ていて、実際観察すると、毛というより足として認知される。それは機能がまったくそれだからだ。

さらにもうひとつには、摂食器官(口)の周りに繊毛を付けたものもある。ボルティセラなどのツリガネムシ、フィロディナなどのヒルガタワムシがそれだ。彼らにとっての毛は、それで旋回流を起こし周囲の食物を口に掻きこむ。手の役割に近いかもしれない。この毛がつくりだす水流は激しく、自分を保持しておかなければ自分が飛んでいく。

彼らの毛の活用は私達の手足にも相当する活動的な器官となっている。これは彼ら自身に対して毛が比較的大きく、そのためこれを動かすことで推進力を得たり自らを持ち上げる力が付与されるためだろう。微生物の世界を抜け出すと、毛はこのように作用するには生物のサイズが大きく、かつ大気中ではそのような役割を負えないという転換点があるように思う。

器官の機能とは、このように可変的である。昆虫がもつ触覚は私達でいう何だろうと思ってみると鼻がそれに相当しそうだということが予想される。実際は知らないが、鼻腔に隠された部分が外側に突出したようなものとして考えると、その使用感がなんとなく想像できるようになる。

生物は相互にメタモルフォーゼの関係にあり、それぞれの器官がそれぞれに適した解釈の機能を有していて、それを観察しているだけで、自分がそれら器官に予め与えてしまっている機能の狭さに気づかせてくれる。

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