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写真集

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フィルムカメラ(オリンパスOM-1、ペンタックスMX、キヤノンAE-1、コニカSⅢ、ニコンEL)で撮影した写真たち。
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#Nikon

フィルムナンバー0183 露出不足への回帰

林邸ア~ト2024 このごろの適正露出の呪縛から自由に不足するため、コールタールくらいべっとり黒い写真を心掛けた38枚から選出。この一週間くらいに撮影したもの。  林邸ア~ト2024での作品はどれも印象深いものだった。上に掲載した中澤ふくみ作品はすでに大月町小才角はCOSAにて鑑賞したものではあったが、薄暗い近代建築のなかで特に狭いスペースを陣取るによってまったく新しい作品として生じてきた。空間を読むと、私には漫画のコマ割りが参照される。視線の誘導とそこへ入る鑑賞者の肉体が奇

歩く足に乗車してゆく先々で

足は私の誰よりも場所を刺青する。 景色は私の共同製作者として、光を編んでくれる。私はそれを切り取る。 10月からイベントが喧しく、市町村を足しげく跨いでいる。イベント自体は自治体立施設が開催するものが多いが、距離を移動するにはガソリンがいる。控えなくてはいけないと思いつつ、徒に走ってしまう。 行きなれた国道から枝道へ、近くて知らない場所を探して、大月町を走った。 途中、大きな鳥居が傍にある鄙びた三叉路に行き当たる。掲示板とゴミ集積所があり、区長場らしき建物のあるところ。

沈黙と多弁の日常

ファインダーは祝福を印して1/250の瞼を閉じよ。 存在は沈黙と多弁を両立している。 赤色呼応。 蚕繭 アナキズムのために咲く。 不作為の風道の奥行き。 在るということ。 波頭または炎上。 船出の差し止め

夏の風景

 柏島へと接続する橋のあたりは現在、海水浴場として有名らしく、観光客で駐車場はごった返していた。  柏島の集落は島東に位置し、地図でみると島面積の6分の1ほどを占めるか。港に面した集落の入口で、正面に出迎える稲荷神社の境内には幾本かのアコウの巨木が広い木陰をつくっている。  アコウは別名締め殺しの木、鳥糞に混じって範囲を広げ、そのうちのどれほどかは別の木の窪みに落ちる。発芽したアコウは地表を目指して気根を伸ばし、やがて根を張るが、こうして成長するうちに着生した木はアコウに包

陰を行く写真記

忘れていくならいけというまま忘れられた景色のうちにこそ私の呼吸が生き返すところがある。役に立つかどうかは眼中になく、そこにあることを見捉える光学レンズの眼差しがあったことの疑えなさこそ信じよう。

複眼に憧れて

シュレディンガーの複眼へ 近頃はフイルムの入手が困難になり、モノクロネガばかりを使用する傾向にあるが、行動範囲に唯一の現像できる店舗であるカメラのキタムラでは、C41現像でない現像は工場出荷となり、約1ヶ月を要すことになる現実がカメラ趣味を減衰させている。たしかに、私がフイルムカメラを肯定するときよく言うのが、その場で仕上がりを確認できないことによる仕上がりへの想像性なのだが、そうは言ってもカラーネガの現像に要する時間は長くても1時間程度のもの、3日で36枚を撮影し、その結

開かれ230612

純白を直視するのが難しい。 捨て置かれたもの、鑑賞されるためでない花。得体を知られる機会から抜け落ちていられる幸いと痛苦。 5月は橋村一彦・るみ陶芸展というイベントがあった。わずか2日間の開催だったのが惜しいと思うほどには刺激的な展覧会だった。 陶芸という芸術分野にはこれまで殆ど触れてこなかったが、彫刻として見ることができた。硬質な素材で有機的な柔らかさを、静物でありながら流動性を纏う……このイメージは、私がゴシック系の作家もの球体関節人形に抱いているイメージと重なり合

写真記230529

モノクロフィルムなんていまどきカラーネガをスキャンした画像編集で事足りてしまうと思っていたが、このフィルム入手難によって手にとることになったアクロスⅡにすっかり驚かされている。陰影が強く出るのでカラーと全く別の写真になってしまう。 色なんてもつんじゃなかった。そんな気にさせる。その辺のありふれたものを撮っても、どこか意味深な諧調で鑑賞者に何かを示してしまう。 何が写ったのか、もう分からなくてもいい、という気にさせる。闇に沈んだ部分がわずかな明暗をのぞかせた部分にイマジネー

PROVOKEに憧れ

プロヴォーク、挑発する写真。 どうやったら状況を説明しない写真が撮れるのか。どうやって撮影したお前をくらませるのか。 もう縦だか横だか分からないんだ、もうビフテキなんだ。まつm……中平だかなんだか植田正…なんだか分からないや でも雨だっていいだろう? レンズは気になるけどさ、気になるけど、それだけなんだカメラを持ってようやく雨の煩わしさにも惚れてきたな 天気の好き嫌いなんか言ってられっか、撮ってくれって言ってるんだ撮ってくれって言ってるんだ また次回

【写真】街歩き撮り

最近紹介したNIKON NikomatFTNを使用した作品を紹介。あれから新たにズームレンズも購入した。前半の数枚はこれまでELで使用していたレンズ。 陽射しの強い日に極力絞って撮る練習をしている。情報が断片化する仕上がりはボケを使ったものより好みである。 うっかりシャッターを切ると自分の趣向が露呈する。単純なものが反復するもの、朽ちたものあるいは蔓延るものが多くなる。 植物は安易に撮れてそれなりの仕上がりになってくれる。 どうやら最初に目を惹くものを画面上方に配置す

【写真】モノクローム・モノローグ

艶のある黒。 植物群猥雑な、と言ってもいい。植物の直線的な意志はバタイユの思想の体現だった。 心象スケッチいつもの街歩きから色彩を奪うと異情に滑り込む。 車情ノーファインダ雨日傾斜左に傘を持って片手で撮るなら、カメラを斜めに立てて重心が垂直にした尺骨を伝って落ちる楽な姿勢。 夜に虚就く見出しタイトルは堀骨砕三の漫画から。漫画は閲覧注意。

【写真】異化、CineStill400D

梅田に行ったとき、八百富写真機店にてMARIX100Dと一緒に購入したカラーネガフイルム「CineStill400D」を使用してみた。三月末頃、FUJIFILMはカラーネガフイルムの製造を停止した。 それ以前からフジのみならず35㎜フイルムは店舗入荷も少なく購入本数も制限されていた状況で、年々の価格高騰も続いており、フイルムカメラファンにとっては更なる追い打ちとなっている。いま流通している在庫が消化されたら、しばらくフジカラーネガを目にすることがなくなる。なんとか状況が打開

カメラにモルトを貼った話と結果写真

現在のメイン機NikomatELは中古で手に入れた当初からモルトがなかったため、今回まで入光部(裏蓋の開閉軸)に外から黒いビニールテープを巻いて遮光していた。 いちばん最初に試し撮りしたときにはこんな激しい感光があった。 その後に件のビニールテープで遮光性は得られたが、蓋の開閉のたびに剥がさなければいけなかったし、粘着剤も残ってべたつくようになってくるので、いずれはモルトを貼りたかった。 そうはいっても、モルトプレーンはそこらに売ってはいないし、ネットで購入するのも億劫

公園写真記

花の名前も知らない。 いつもの公園でまたカメラを構える。同じところを撮影していると、自分のカメラの癖に気づいて、つまらない写真ばかり撮っているという気にさせてくれる。どうしたら、異化できるのか。それを考えながら撮影することで、一歩踏み込める領域があるのかも知れない。だからいつもの公園に没頭してみることにしている。 春ですね。この公園でいちばん人の目を惹く桜。花を背景に自撮りしている女性に遭遇する。東南アジア系の方のように見えた。その写真はインスタに上げるんだろうか、それと