県外出身者の自分から見た沖縄の基地問題(特別編)

 来週、9月27日には7月に亡くなった安倍晋三元首相の国葬が行われる予定である。政府与党は様々な理由をつけて国葬を強引に実施しようとしている。しかし、この国葬には法的根拠がないことや閣議決定だけで国葬の実施を決めたこと、さらには安倍氏の政治姿勢が評価できないということや安倍氏が関わった森友・加計・桜を見る会の問題が解決していないこと、あるいは安倍氏は統一協会と関係があったことなどの多くの問題点が存在している。事実、各報道機関の世論調査では国葬反対が圧倒的多数である。また、身内の自民党所属の議員である村上誠一郎氏が国葬の欠席を表明している。
 このコラムは沖縄の基地問題について記したものである。そのため、安倍氏の国葬について語る場合は別の記事でするべきかもしれない。しかし、この国葬と沖縄の基地問題との間に何か共通しているものがあるかもしれない。私はそのように考え、「共通項」となるものを探してみることにした。
 やはり共通するものといえば、どちらも「民意が無視されている。」ということである。沖縄では2019年の2月24日に普天間基地を辺野古に移設するかどうかを巡って県民投票が行われ、「反対」が「賛成」及び「どちらでもない」を圧倒的に上回った。また、沖縄県知事選挙も故翁長雄志氏から玉城デニー知事にかけて基地移設反対派が三選している。しかし、それでも中央政府は辺野古への埋め立てを強行し、沖縄の声に全く耳を傾けようとしていない。そればかりか、沖縄島南部の戦没者の遺骨が混ざっている土砂を埋め立てに使用するなど、非情に横暴なふるまいを政府は続けている。このように、沖縄の基地問題に対して中央政府は民主主義的な態度を取ろうとしていない。
 一方、国葬も同様である。先ほど述べたように多くの報道機関の世論調査では「反対」とする意見が多く、「反対」する理由についても多種多様である。これだけ、多くの方が反対の意思表示をしているが、中央政府は一向に国葬中止を表明しない。
 岸田首相は国葬を開催する理由の一つとして「民主主義を守り抜くという決意を示す。」という趣旨を述べた。しかし、今の岸田首相にこのような言葉を発する資格はどこにもないだろう。なぜなら、閣議決定のみで開催を決め、国民の意見に耳を傾けることもせず、国葬を強行しようとしているからだ。また、当然のことながら、「民主主義を守り抜くという決意を示す。」というような理由で安倍晋三氏の国葬を執り行うことも断じて許すことができない。なぜなら、彼は民意を無視した政治を展開してきたからだ。特定秘密保護法や集団的自衛権、共謀罪などの政策は国民の声を無視して数の暴力で押し切った。それだけではない。前述の辺野古への移設についても「真摯に受け止める。」と発言し、そのまま埋め立て工事を続行した。果たして、その安倍氏の国葬を行うことで「民主主義を守り抜く決意」を示すことができるのだろうか。
 改めて言わせてもらいたい。沖縄県民や日本国民の民意を無視した政治を行った人物を「民主主義を守り抜く決意を示す。」というような理由をもって開催する国葬で送り出すなど言語道断だ。ましてや、この国葬も法的根拠が無かったり、閣議決定のみで決めてしまったりと非常に専制的だ。これでは「民主主義を守り抜く」ではなく、「専制主義を支持する」というメッセージを発しているようなものだろう。もし、岸田首相が「民主主義を守り抜く」という姿勢を示すことを本気で考えているのであれば、今すぐ国葬を断念し、物価高や新型コロナ政策に専念するべきだろう。そして、今回の県知事選挙の結果を受け止め、沖縄県民の意思を尊重する姿勢に改めるべきだ。
 ここまで、基地問題と国葬の共通項について論じてきた。岸田首相の発言から紐解いていくと、辺野古への移設や国葬開催の決定のプロセスには民主主義的なことが一切反映されておらず、国葬で送り出される安倍晋三氏も国民や県民の声を無視した政治を展開した。私は今回のコラムでこの点について強調したいと思う。さて、国葬まで1週間を切ったが、まだまだあきらめるわけにはいかない。なぜなら、私たちには検察庁法改正を断念させた前例があるからだ。コロナ禍のどさくさに紛れて行われそうになったこの法改正は、多くの人がSNSで反対の意思を発信したことでとん挫した。私はそのことを思い浮かべて、この国葬実施に対して反対の意思を示していこうと思う。

参考資料・関連資料
BBC NEWS | JAPAN「日本政府、沖縄県民投票の結果受け入れない方向 辺野古埋め立て」2019年2月26日配信

https://www.bbc.com/japanese/47366904

2022年9月23日閲覧

PRESIDENT Online 宮間純一「撃たれて死んだことは理由にならない…『安倍元首相の国葬』に国葬の専門家が『やるべきではない』というワケ 国葬はむしろ『民主主義の精神』と相反する制度」 2022年7月19日13時配信

https://president.jp/articles/-/59690?page=1

2022年9月23日閲覧

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