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【クルスタSS】メルエル、星徒会体験をする 前編

ある日の星徒会室での出来事。
ヴィーナスはいつもいるはずの存在が欠けている事に、少しだけ心配そうな表情を浮かべていた。
「…そういうわけで、アナは暫く休むことになったわ」
「うーん、風邪じゃ仕方ないよね。無理させるのもよくないし」
マトイ
先日から、アナは体調を崩し気味だった。ヴィーナスが会長だった頃と比べて仕事の負担が減ったものの、ここ最近のアステラ被害の増加や他の仕事が複数重なったため、休養を挟むことに。
「そうねぇ…ちょっと忙しくなっちゃうけど、仕方ないわね。元気になるまで、私達4人でやっていくわよ」
張り切るサーシャだが、皆には懸念している事があった。それについて指摘したのはクロトだった。
「サーシャさん、残り処理が必要な書類ってどのくらいあります?」
「えっと…このくらいかしら」
ざっと百枚以上はありそうな紙の束を、どさっと机の上に載せるサーシャ。
思わずマトイが驚いて
「…って、何この量!?どこにそんな山のような書類を隠してたんですか!?」
年末が近づいているという事もあり、星徒会には連日山のように確認・承認が必要な書類が届いてきているのだ。その殆どがアステラ被害による書類のため、適当に見て済ませるという事も出来ない。
「1年が終わるし、時期的に色々な方面から承認が必要な書類が届くのよ。ある意味、名物みたいなものね」
「それに今回はアナがいないんだもの、余計に負担が増えそうね…」
「うーん、どうしたもんかなぁ…」
流石にこの量をこなすには、人手が足りなすぎる。必死になっても、少なくとも今日1日では
うーん…と悩む4人。ここでクロトがあることを閃いた。
「ヴィーナス、ちょっといい?」
「どうしたのクロト?」
クロトとヴィーナスは部屋の隅に向かい、サーシャとマトイに聞こえないよう小さな声で囁くように話した。
(提案なんだけどさ、メルエルを手伝いに来させるのっていいかな?)
(ああ、あの子?うーん、出来なくはないけど…星徒会の仕事を一般の生徒に任せるのは、よくないんじゃないかしら)
(俺もそうも思ったけど、アナがいないとなると流石に厳しいと思う。フィクサー権限でなんとかならないか?)
(やたらこだわるわね…クロトってば、あの子と一緒にいたいだけなんじゃないの?)
(い、いや、決してそういうわけじゃ…)
(ふーん…まあいいわ。クロトの意見も真っ当だし、今回はお願いすることにしようかしら。その代わり、彼女にはクロトから説明してあげなさいね)
(ありがとう。それは俺に任せておいてくれ)
メルエルとヴィーナスは面識がある。星徒会の仕事を一般生に任せるというのは馴染みがないが、事態が事態なのかヴィーナスも許してくれたようだ。
「えっと~…2人で何話してたの?」
部屋の隅から戻ってきたヴィーナスは、サーシャとマトイにも事情を説明した。
「今回は4人じゃ厳しいから、助っ人を呼ぶことにするわ。クロトが連れてきてくれるって!」
「あらあら、頼もしいわね~」
「星徒会の仕事だけど、他の生徒に任せて大丈夫なのかな…」
喜ぶサーシャに対して、少し不安そうな顔をするマトイ。状況を考えるなら、マトイの反応が普通なのかもしれない。流石普通の権化だ。
「…会長、今変な事考えなかった?」
「え?い、いや、なんでも…」
「ふふーん。今回はフィクサー権限を発動したから、何の問題もないわよ?」
「便利だね…フィクサーって。因みに誰に頼むの?」
「ああ、それはだな…」



「というわけで、メルエル。暫くの間宜しくな」
「ひ、姫咲メルエルです!短い間ですけど、よろしくお願いします」
突然の話だったけど、私は星徒会のお仕事を手伝うことになった。人員を補う際、クロトが私を引き合いに出してくれたみたい。
「メルエルちゃん、宜しくね~」
「はい!まさか本当に星徒会に入れると思ってなかったので…私、頑張ります!」
憧れの星徒会…まだ入れないって思ってたから、嬉しさが前面に出る。それにクロトと一緒にいられるなんて…これ以上の幸せはない。自然と視線がクロトの方を向いてしまう。
「メルエルちゃんって、今は会長の恋人…なんだよね?」
マトイさんに話しかけられて、ハッと我に返る。
「そ、そうです…えへへ。いざ誰かに指摘されると、ちょっと照れちゃいます」
「うふふ、見てて恥ずかしくなる位熱々な関係って聞くわよ~?」
「確かに。よく会長と一緒にいるのをよく見かけるよね。いいなぁ~」
「うう~…」
分かっていても、いざクロトとの関係を引き合いに出されると顔が赤くなってしまう。
(クロト~…)
恥ずかしさから、思わずクロトに訴えかけるような眼差しを送った。視線に気づいたクロトは咄嗟にフォローに入る。
「も、盛り上がってるところ申し訳ないけど、早く作業に移った方がいいんじゃないか?ほら、結構時間押してるし…」
最初に4人が集まってから、既に40分程度は経過していた。このまま話し続けていたら、気が付いたら1時間話をしているだけで終わってしまいかねない。
ヴィーナスがみんなの前で一声上げる。
「そうよ、時間がもったいないわ。メルエル、今日はよろしくね!」
「あ、はい!星徒会のお仕事、一生懸命頑張ります!」
こうして、私は初めて星徒会活動を体験することになった。




「それにしても、星徒会ってこんな量の書類を毎日捌いてるんですか?」
事前にクロトから話は受けていたけど、山のように積み重なる書類の束に驚きを隠せなかった。
「この時期特有なのよ。普段はこんな量にはならないんだけど…」
「大体はアナがやってくれてたわね」
クロトが会長になる前はヴィーナスが会長だったけど、どうやら殆どはアナさんが仕事を任されていたらしい。今は違うだろうけど、色んな責任を背負ってたのかな。
「改めて思うけど、1年生なのに凄いよね。というか、これまではヴィーナスが押し付けすぎてたんじゃ…」
「仕方ないじゃない、私は戦闘やパトロールがメインなんだもの」
ヴィーナスは何故か胸を張って主張している。どうしてそこまで強気でいられるのか、不思議に思えて仕方ない。この豪胆さも、彼女の良さの1つなのかもしれない。
「あはは…今いないアナさんって、この星徒会の大きな支えだったんですね」
支え…そう、支え。冷静で分析能力にも長けているアナは、旧星徒会も今の星徒会も支えていたんだ。
(私も…クロトの支えに慣れてるのかな…)
ふとクロトをチラッと見る。これまで見た事がない位の真剣な顔つきで作業に当たっている。普段は見せない一面なだけに、思わず私の胸が跳ねた。
(クロト、凄い真剣に作業してる。かっこいいな…)
気が付けば、作業をするクロトばかりに目を奪われてしまう。忙しい状況だけど、もう暫くだけ今のまま…
「メルエルさん?手止まってるけど…大丈夫?」
不意にマトイさんに声を掛けられて、私は現実に還ってくる。皆が一斉にこちらを視線を合わせてきたため、あたふたとしてしまった。
「あわわ、ご、ごめんなさい」
「会長クンの仕事っぷりに、目を奪われてたのよね」
「そ、そうなのか?」
「……ごめんなさい。その、クロトの真剣な姿って、中々見た事ないなって思って…」
「ふふ、いいのよ~。も~二人ともあつあつね♪ 」
にこにこと優しい笑顔を振りまくサーシャさんに、マトイさんも同調する。
「ほんと、私も嫉妬しちゃうなぁ…会長も鼻の下伸びてるし」
「ま、クロトはむっつりだものね。仕方ないんじゃないかしら?」
「いやいや、そんなことないって!確かにメルエルは可愛いけど…」
クロトの"可愛い"という発言。まるで脳を溶かすような、甘美な響きの表現。無意識にかーっと顔が赤くなってしまう。
「…うん。絶対頭の中メルエルの事でいっぱいだよね、きっと」
「い、今はちゃんと会長としての仕事を全うしようとしてるから」
「会長クン、顔真っ赤で可愛い~」
「…メルエル、頼む。皆にも何か言ってやってほしい…」
「え…わ、私!?ええと、その…クロトは、別にむっつりとかじゃなくて…」
急に話を振られて、クロトと同じく顔を真っ赤にしながら激しく取り乱す。なんて返そうか戸惑っているところに、ヴィーナスが救いの手(?)を差し出した。
「はいはい、もうのろけはいいから、ほら皆手を動かす!こんな調子じゃ朝までかかっちゃうわよ?」
「はーい♪」
無駄に元気な声で返事をするサーシャさんとマトイさん。対して、お互い目が合わせられない位に動揺するクロトと私。
「うぅ…恥ずかしい…」
こんな調子がずっと続きながらも、作業は着々と進んでいったのだった。




前編は以上です。星騎士としての仕事ではなく、和気あいあいな星徒会活動をイメージして書いてみました。

全体で7000字程度なので、前編と後編を分けるかそのまま一気に書くか悩んでます…中途半端に止まってしまう点を考えると、一気にまとめるべきなのかな。

誰が話しているか、っていうのもちゃんと記載しないとダメですね。

誤字脱字や、何か意見や感想などがあればお願いします!

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