【読書感想メモ】佐藤さとる『海へいった赤んぼ大将』『赤んぼ大将山へいく』

子どもの頃に好きだった作家の一人が佐藤さとるです。
小学生の頃、コロボックルシリーズが好きで、全巻読みました。

それを機に、彼の名前を認識し、自宅書棚で彼が書いた別の本を思いがけずに見つけて喜んだり、新しく買い足したり。

自分で彼の作品を集め出した頃には、確か既に小学校高学年以降になっていて、「もっと幼少期に出会えていたらもっと楽しめたのに残念だな」と思った記憶がある作品もあります。

さてさて、小学生か、中学生か、高校生の頃か忘れましたが、大学に入る前だったとは思いますが、佐藤さとるのファンタジー全集を何冊か買いました。

最初は全巻集めるつもりだったのですが、持っている作品も多かったので、結局少ししか買わなかったです。

そのうちの1冊が、第9巻、『赤んぼ大将』です。
収録されているのは、「海へいった赤んぼ大将」と「赤んぼ大将 山へいく」の2作品です。

久々に読み返しました。
読み返すまでどんな作品だったか、まったく覚えていませんでした。
面白いと思ったか、つまらないと思ったかの記憶もありませんでした。

大人になってから読んでみた率直な感想は…、

「え、なにこれ、控えめに言って傑作じゃね?
佐藤さとる天才、まじウケるんですけど。
ワンチャン、コロボックルシリーズより好きかも。
映画化されたりしてても良くない?」

です。

童話にしては長編ですが、文章がとても読みやすいです。
佐藤さとるにありがちな?、過剰な説明も少ないので、ひっかかりなくすっとストーリーが入ってきます(佐藤さとるやればできんじゃん的な)。

そして…、設定が最高です。
解説の人も少し書いてましたが、ロジカルなしかけになっています。
魔法的な力のしかけに矛盾がないので、その点で大人もすんなり読めます。これは、文学の解説によくある分析視点の一つです。

内容は以下の感じです。
機械語と動物語を話せる1歳の赤ちゃん、タッチュン。
きかん坊で勇敢で、寝起きが良くて、動物にも機械にも愛される、大将的存在。

モモンガ服を着ると立ったり動いたりモモンガのように飛行できる。
でも人間の言葉は1歳の能力のまま。
相棒は目覚まし時計とモモンガ。

ある日、目覚まし時計から、頼まれます。
行方不明になっていた恐竜の魂が、工事現場に埋まっていたんだけど、工事で掘り起こされて、ショベルカーにとりついてしまった。

このままだと危ないので、恐竜の魂をショベルカーから引き離してほしいと頼まれました。

機械語と動物語を話せる人間のタッチュンにしか出来ない仕事です。
設定が神です。

なんでタッチュンの家にある目覚まし時計が頼んできたかというと、時間があっていれば、離れた場所でも、どの時計を通しても、連絡がとれ、家の目覚まし時計は、世界時計組合からの依頼をタッチュンに伝えたのでした。

時計は機械なので、世界時計組合に依頼がいったんだったかな?
そして、世界の時計組合は、時間を操れます。

時間を操れるって、童話としては最強です。
時間って、子どもにとって、また大人にとってもすごく重要な概念だし。
童話でもかねてより盗まれたり、色んなテーマになってきました。

主人公は、時計や機械や動物の要請を受けて、モモンガ服とか腕時計の助けを借りて、人助けをするので、展開に無理がありません。何でも出来るヒーローではないので。

恐竜の話の方は、びりッと敗れた絵本を、最後にお母さんが貼り付け直す、っていうオチだけは覚えてましたw

恐竜の話は、1968年初出。
桃太郎の方は、1970年初出。テーマは不発弾なんですねえ。戦後25年。
森が舞台なので、相棒のモモンガの特徴が良く出ていて、その点では楽しめるかなと思いますが、物語を単純に楽しむなら恐竜の方がおすすめかなと思います。

ただ「きちがい」っていう表現が出てくるから、原作のままの復刊は難しいだろうなと思います。他の作家さんの作品でも、そのワードを変更して復刊されているものがありますし。

さてさて、佐藤さとるの本は村上勉の挿絵が多いですが、やはり両者の組み合わせは最高だと思います。それを読んで育った世代にはささりまくりです。

最後に、自分は素人なので棚に上げますが、全集9巻の解説は正直少し期待外れでした。ものすごく面白い作品なのに、作品の良さが解説から伝わってこない感じで…。



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