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あえて「切り捨てる」研修を設計してみた話

未経験で人事になった私が、はじめての研修設計において実践したこと・意識したポイントなどを公開してみようと思います。コロナでオフラインの研修は減っていますが、何かを考えるときの思考のプロセスとしてご参考いただけたら嬉しいです。

STEP1 いろんな研修に参加してみる

研修会社は同業お断りですが、人事には無料や格安講座を開いていることが多いです。なので、いろいろな会社のいろいろな研修をたくさん受けてみました。

そこで気づいたことは
受けてよかったなと感じた研修と
受ける意味がなかったなと感じた研修がある
ということです。

そんなの当たり前と思われるかもしれないですが、その差はなんだろう?を考えた結果、たどり着いたのは

自分がすでに知っていると感じている内容の
研修は満足感が低い

ということでした。

つまり、満足度の低い研修というのは、

お母さんに
「友達の家にいくときは挨拶するのよ!」
「わざわざ言われなくてもわかってるよ!!!」

というアレです。

逆に自分ができないことで興味があると感じたことは、
積極的に学びたくなります。


近所のお兄ちゃんに「巨大カブトムシ捕まえたぜ」
「すごーい!捕り方教えて!」(目がキラキラ)
というアレです。

(すみません、例はテキトーですw)


STEP2 社員から見た研修の「負」に仮説を立てる


研修を受けていく中で、人事ではなく社員の目線で見たとき、上記以外にもいくつかの課題(マイナス要因)が見えてきました。

①拘束時間、長すぎる問題(だいたい1dayが多い)
②ロープレの登場人物に感情移入できない問題
③そもそも受けさせられている「やらされ感」

個別に見ていきます。


①拘束時間、長すぎる問題
人事は研修設計側でそもそもにHRが好きな人間です。でも残念ながら、現場の人の多くはそこまでHRに興味がありません。

人事がHRの仕事を好きなように、営業は売り上げを立てること、エンジニアはコードをかくことに時間を割きたいわけです。

そこに「1日」の時間をもらうことは
本当に必須なのでしょうか。



②ロープレの登場人物に感情移入できない問題
これは私自身が感じたことですが、研修でやるロープレ、感情移入できなくないですか?私だけ?w

例えばよくあるのが、「あなたは印刷業界のABC商事の新入社員の佐藤さんです。山田部長と商談同行した際に・・・」

・・・いや、山田部長って誰!?

うち、印刷業界でもないしABC商事でもないしw

あと佐藤さんじゃねーし!!!!!!!!!


すみません、取り乱しましたw

設定なので真に受けるほうが悪いのですが、ただでさえ面倒だなと思いながら受けている場合、細かい部分で上げ足を取りがちです。

業界が違えば仕事の仕方も変わるので、架空の設定すぎると当事者意識が薄れるというのはパッケージ販売をしている研修会社の限界のような気もしています。


③そもそも受けさせられている「やらされ感」
私のような研修大好きで自主的に行く人間を除くと、だいたいの方は会社から「受けてくださいね」と言われて受けさせられてる人です。

そういう方の中には「思ったより楽しい!!」という人もいる一方で、学校の授業のようにただ時間が過ぎ去るのを待つ人も多いのではないでしょうか。

会社として身に着けてほしい知識・スキルだから、とりあえず受けてもらうことに意味があるというのは一理あるのですが、会社全体で考えたときに、それって損失じゃないのかなと思うわけです。

受ける意欲のない社員が研修に無理やり来てぼーっと空を眺めて終わるなら、その時間に1件でも多くテレアポしたり、1行でも多くコードを書いていたほうが、本人にとっても会社にとってもWINWINになるんじゃないでしょうか。研修費用も無料ではない。


STEP3 「負」に対する解決策を考える

さて、ここまでの過程で4つの負が出てきました。

①拘束時間が長すぎる
②ロープレの設定に感情移入ができない
③そもそもやらされ感がある
自分がすでに知っていると感じている内容の研修は満足感が低い

ではこの4つを解消するための企画を考えてみたいと思います。基本的に、解決するときはこの逆パターンを考えればOKです。

①拘束時間を短くする
②ロープレの設定を感情移入ができるようにする
③自発的にやりたいと思える環境をつくる
④自分が知らない、自分に必要と感じさせる内容にする


言うは易しですねw

私の場合、具体的にどうアプローチしたのかを解説します。


①拘束時間を短くする
1番やりやすいのは「拘束時間を短くする」です。
物理的に時間を短くすれば解決します。

ここは研修会社の方にお願いして1日→2~3時間にしてもらいました。その代わり、1年の中に分散して開催することにしました

研修会社の資料でたまに見る「エビングハウスの忘却曲線」によれば、人は1日経過すると74%もの情報を忘れてしまう可能性があるそうなので、トータルの研修時間を変えずに期間の分散開催することは学習効果の定着面においても有効ではないかと考えています。

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続いて

②ロープレの設定を感情移入ができるようにする

ここは架空の設定、架空の人物にするから感情移入ができないのです。そこで、研修対象者の方に事前に課題感をヒアリングして、それをほんの少しアレンジしてロープレにしました。

実際やってみたところ、「この状況、めっちゃあったww」「え、あなたの部署そんな感じなの?」と盛り上がり、さらには部署間の相互理解につながるという副次効果もありました。


そして、最後

③自発的にやりたいと思える環境をつくる
④自分が知らない、自分に必要と感じさせる内容にする

ここは2つまとめて解決することにしました。

大事なのは「知っているのに教わる」「やりたくないのにやらされている」の強制感の払しょくです。そのため、研修の中に「選ばせるために、あえて捨てる」項目を作りました。

講師「今日はA/B/Cの3つのロープレを用意しました。その中でご自身が必要または受けたいと感じた2つを選んでください」
受講生「え、3つのうち2つしか受けられないの?!どれにしよう・・・」

ここで1つは受けられないから真剣に選ばなければという葛藤が生まれます。と同時に、選べるということが当事者意識を引き上げます。

そして、できていると感じているものは、「これはできているからいいや」と切り捨てられるので無駄が生じにくいのです。

とはいえ、3つとも本人ができていると考えているパターンもあるのでは?という可能性も当然あります。

実際にあったケースでは「1つは苦手で1つはできているけど、他の人のやり方も見てみたいからこれを選んだ」という声をいただきました。

いい意味で選ぶプロセスの中に、本人が「なぜ自分はこれを受けるのか」という目的意識が勝手に作られている状態ともいえます。

また、3つとも受けたいという声も当然あります。
その場合は、テキストを共有してもらうことで横のつながりを生んだり、個別補講をしたり、また次回開催の際にキャッチアップすればいいのです。

研修というと、
どうしても詰め込みたくなります。

でも、詰め込んだ結果、実際に活用してもらえる知識はどれほどあるのでしょうか。「本人はできていると思っていても、できていないから教わってほしい」という意見も一理ありますが、本人が自分はできていると思い込んでいるものを、誰かからまた教わるというのは苦痛です。

あえて詰め込まないで切り捨てる研修があってもいいのではないか、と私は考えます。

もちろん、今回の設計が100%ベストアンサーとは思っていません。研修は本来、目的、内容、受講生のタイプなどによってカスタマイズしていくべきものです。

ただ、思い込みを外していくことで、もしかするとユニークかつ実用的な研修になるんじゃないかなという1つの提言でした。

何かの参考にしていただけたら幸いです!


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