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小林よしのり氏の「易姓革命」を論破する!

高坂Θです。敢えて題名にて大きく出ました。
掲載誌に投書しようが、当人のSNS等に意見を送ろうが、
小林よしのり氏が聞き入れるとは思えませんから。

易姓の「姓」は「ウジナ・ウヂナ」の事ですよ

「革命」の事は後にして、そもそも「易姓」の用語としての出典は
司馬遷の「史記」の中の「暦書」で、
「王者が姓を易え(違う姓の人物に替わるという意味)
 天命を受けると~」と、明記されています。
さて、司馬遷は当たり前ですが紀元前の人物です。
紀元前を生きる人が歴史著述で使う用語は、紀元前の歴史認識に
依るものにしか成り得ません。更なる古代を著述するなら、なおの事。

漢の時代に至る頃にはかなり廃れてきていましたが、
古代中国の「姓」とは部族的・民族的な違いを区別するもので
劉や司馬といった氏族名は「姓」から分派した集団名になります。
王朝の姓は「姫(キ)」。戦国時代の魏・韓は分家筋なので同じ姫姓
の始皇帝の姓は「嬴(エイ)」。戦国時代の趙が同じ嬴姓
の劉邦の姓は「祁(キ)」であるという説有り。
この古代中国概念の「姓」を日本的な歴史認識に置き換えると、
古代日本の「ウジナ(ウヂナ)」が、ほぼイコールのものになります。
この置き換えはここで長々と説明するより、例えばウィキペディアで
「氏・うじ」や「氏(中国)」「漢姓」を調べる方をお勧めします。

姓もウジナも生まれ付いたら基本的に生涯変わりません。

古代の政治的な手法として活用されていた「姓」そして「ウジナ」。
一番の共通点は、受け継ぐ側の人物の男女の性別は問わず
その人物の実の父親からのみ、受け継がれるものだという事です。
例えば藤原氏の男性が、蘇我やら橘やら尾張といった
他の氏(ウジ)出身の女性に産ませた子供は全て藤原氏です。

男性が婿養子で他家に入っても、当人のウジナが変わる事は有りません。
逆に言えば、婿養子の男性又はその子供が家を継ぐと
その家のウジナは自動的に変更されてしまいます。
熱田神宮のトップである大宮司を世襲する家が、日本武尊伝承の頃から
続いていた尾張氏から藤原氏に替わった事例や、
安芸の小早川という家でも、最初(相模在住の頃)は桓武平氏でしたが
清和源氏に替わり、代を重ねた後に大江氏から婿養子を迎えました。
毛利元就の息子、小早川隆景に至る事例です。

小林よしのり氏は「姓と苗字をごっちゃにするな」と言っておりましたが、
当人こそが「易姓」で問題とされている「姓」の意味するところを
理解しておらず、男性が婿入りして戸籍上の姓を名乗らない様になれば
易姓革命には当たらない、などと得意気にゴーマンかましてます。
誰に教わったのやら。

「革命」の実現はすぐそこに?

「天命」は王朝の変更、もしくは乗っ取りを後付けの理屈で
正当化しているに過ぎないとも言えますが、
その時点の国内状況が要求している、世に云う「民の声」を
政治に反映させる、ある意味で「民主的」とも言える政治思想です。

現状の天皇家に関して、国民及び有識者が各々真剣に考えて
「男系を絶対に維持する・維持し続けるべき」という意見の他に、
「ウジナだ姓だなんてのはどうでもいい、とにかく今居る女性皇族の方々に
 婿を取ってもらって、血筋が絶えないようにすべきだ!」とか、
「天皇位は直系で引き継いで行くべきものであり、婿を取った結果
 源でも弓削でも、何であれウジナを帯びるようになるのは仕方ない」
などといった、事態を重く見た結果としての意見が出るのは
男系維持の難しさを考えれば、当然の事でもあるでしょう。

それらの議論の結果として、皇統に婿を入れる事を
国民が支持する、或いは支持した政権の決定であるからと
それ以上異議を唱える事無く受け入れたとしたら?
それは天命思想の言うところ、「民の声」こそが「天命」であるという
事例の最新版。まさに「命が革る(あらたまる)」その瞬間。
現代日本の象徴たる平和な「革命」を見る事になるのかも知れません。

おわりに

易姓革命について個人的に思う所を書き連ねましたが、
これらは日本史としての「ウジ・カバネ制度」の内容と
古代中国史の知識が有れば、論破などと構えるまでもない
議論以前の歴史教養だと思っておりました。
なのに、現在では忘れられてしまったのでしょうか?易姓革命に関して、
古代中国の「姓」と合わせて解説する例を中々見つけられず、
ようやく、20年以上前に発行された吉岡安之氏の著作
「おもしろくて ためになる 暦の雑学事典」の中で
子姓から姫姓への易姓」との記述を発見しました。

あやふやな歴史知識の用語に拠って政治主張を声高に唱えるのを
誰もが放置していた、なんて言われて恥ずかしい思いをする事が
一つでも減らせたのであれば、私の拙い文章にも一片の価値が
有るのかも知れません。

お読み頂き、ありがとうございました。

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