「モノクロの光」

第2章 構図を決める
 山だがそこはモノクロの世界。時間が止まったように聞こえてい
た風や水の音、鳥の鳴き声も聞こえない。血の気が引く。すると胸
元から声し、見るとカメラのレンズに小さな人形がのっている。
 先程花弁に乗っていた人形である。「!?」「僕レンゲショウマ
のこびと。名前なあに?」「サクラ…」「ここ仮死の世界。飛ばさ
れちゃったね」「仮死の世界?」「現実とあの世の間。僕は現実と
仮死の世界を行き来できるの」「仮死…私死にそうなの?」混乱し
ていろいろ質問してものらりくらりして答えようとしない。
「これなあに?」気づくとこびとは鞄の中にあったフィルムを引っ
張り出し感光させる。「何やってるの!」商売道具を荒らされ怒り
が沸き、こびとを置いて当てもなく歩き出す。
 すると、小路の先に実がなる2m以上の木が見える。赤い実のな
る猛毒のドクウツギだ。突然葉が1枚舞い落ち、私目がけて飛んで
来る。痛いと思った瞬間、二の腕に小さな切り傷。本能で危険を察
知し、全速力で逃げる。しかし、無数の葉や実が私に襲いかかる。
 そこに宙を舞い目の前に現れたこびとが、私の上着のポケットか
ら紙を引っ張り出す。それはカエデの葉書。裏の写真をドクウツギ
にかざすと、私に向かっていた葉や実は全てその写真に吸い込まれ
ていく。その場に倒れ込み、こびとを仰ぎ見ると、先程とは違い大
人びた表情で、「生きている君はこの世界では異物。本来ここにい
てはいけない存在」だから排除されそうになったと言う。「じゃあ
私は元の世界に戻れるよね?」こびとは答えない。「サクラは、こ
の世界を認知して、どうしたいか決断する。僕はそれを助けるだけ」。
辺りを改めて見渡すと、あることに気づく。

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