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偏愛を語る vol.9 〜J-POP〜

元々、J-POPには興味がなかった。
触れたきっかけは、唐突だった。

それは、小学校2年生の頃。
当時好きだった子と席が近くなった。
給食の時間には、4〜5人で机をくっつけて食べるのが決まりだった。
席が近くとも、なかなか話をするきっかけを見つけられずやきもきしていた中で、一緒に給食を食べられる時間はすごく尊い「自然に話ができる時間」で、毎日楽しみにしていた。

そんな幸せな時間に、事件は起こった。

「えー!アイコ知らないの!?」

普段、舌足らずでサ行が上手く言えない好きな子が、異様になめらかな滑舌で発した。

文脈は覚えていないが、急に「アイコ」の話題になった。
どうやら「アイコ」のことは周りの子も知っているようだった。

でも、クラスにも、同じ学年にも、アイコちゃんは居ない。

クラスという、小さいが逃れられない絶対的なコミュニティ。
みんな知っていることを、自分だけ知らない。
自分一人が取り残されているという恐怖。

僕は覚悟を決めた。
殺らなければ、殺られる。そんな世界で、みんなの話題についていける情報こそが自分自身を守ってくれるツール。そうだろ?
生き残っていくためには、恥を忍んで聞くしかない。
そんな意を決して聞いた矢先の言葉だった。

そう。アイコとは、aikoのことだった。

なぜか告ってもいないのに、フラれたような気がした。
その子が常識に思っていることが、自分の常識ではなかったことがとにかくショックだった。

それからすぐに、TSUTAYAでaikoのCDを全部借りた。
HEY!HEY!HEY!、うたばん、Mステ、、当時やっていた音楽番組は欠かさず見た。

そうして、J-POPにやたら詳しくなった。
センキュー、aiko。

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