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ねこ。

私は猫を飼っている。
猫は私が元気なときは現れないが、具合が悪いときにはご機嫌で近寄ってくる。そして追い討ちをかけるように私を傷つけてくる。心や腕に、鋭い爪で傷をつける。

猫といっても、私を含め誰にも姿は見えない。私にだけ、声は聞こえる。

「死んじゃえば?」
「飛び降りちゃえば?」
「ロープ買いに行く?」

猫は私を挑発して死へ追いやろうとする。
時には私が抵抗できないほど強い力で追いやろうとする。

私は必死に無視する。必死に否定する。

だけど、どうしても、私から猫を傷つけることはできない。したくない。
どんなに恐ろしい猫でも、私の大事な猫だから。

私は猫を飼っている。名前はまだ無い。