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娘の忘れ物。


数年前、SNSに書いた記事。

久し振りに読んだら
自分で書いた記事なのに色々と考えさせられた。

なので、備忘録として置いておきます。

(↓以下、転載。)

娘が忘れ物をした。しかも上履き。
校舎に入るまでに届けてあげたい、と
登校の付き添いを途中で切り上げ、
家まで取りに帰る事にした。


周りに注意しながらも、自転車で急ぐ。

そんな時に限って、
足の悪いお年寄りが狭い歩道を塞いでしまう。
耳も遠いのか「すみません」と声を掛けても
退く気配も無ければ、気付きもしない。


あぁ、信号が赤に変わってしまった…
この信号は赤になってしまうと
青になるまでが長いというのに。


やっと国道の広い歩道に辿り着き、
お年寄りを抜かす。

何気なく振り向いてみたら、
そのお年寄りは必死な顔をして歩いていた。
顔をしかめ、汗をかき、息も荒い。

ソワソワしている私とは反対に、
信号待ちになった事でホッとしているようだ。
やっと表情が和らぎ、フゥと大きな溜め息をついた。


そんなお年寄りの顔を見て反省する。


急いでいるのは、ただの私の都合だ。
私が急いでいる事なんて、この人には関係ない。

何より、悪気があって道を塞いでいた訳でも
わざと遅く歩いている訳でもない。


それなのに「邪魔」だと思ってしまった。


元はと言えば、娘が忘れ物をしたのが悪い。


けれど、それは、つまり…… 私の確認不足。


小学校一年生が親のサポートもなく
自分で準備して忘れ物をしない、という事は
大人が思っている以上にハードルが高い。

それなのに、苛立ちを抑えきれず
お年寄りにまで負の感情を抱いてしまった。

大人でさえウッカリして忘れ物をするのに、
入学して数ヵ月の子供にやらせておいて
腹を立てるのは可笑しい話だ。


そんな事を想いながら
学校まで上履きを届けに行ったら、
昇降口で娘が落ち込んでいた。

昇降口の見張り役の先生が声を掛けてくれる。

「金曜日なのに上履きを忘れたと言うから
 心配になっちゃいました……」


そうですよね。
金曜日に上履きが無かったら
誰かに隠されたかと思いますよね。
(習い事で使用したので持ち帰っただけなのです。)

心配してくださって、ありがとうございます。

私が上履きを届けた時の
娘の顔、今も目に焼き付いてる。

哀愁の漂う丸まった背中。沈んだ表情。
なのに、私の姿を発見した瞬間にキラキラ輝いて。



何気無い平日の朝、
そのたった20分程度の時間に
様々な感情と思想が駆け巡った。

帰り道、何と無く…… 気分がスッキリとしていた。

自分勝手な意地悪心が抜けて
清々しい、優しい気持ちになれた気がした。

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