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ご近所ランドスケープ①

ランドスケープデザインというと、パブリックガーデンや街づくりなど、大規模な庭園や景観をイメージしますが、私は個人の駐車場の植栽でも、一つの植木鉢でも、街のランドスケープを構成する立派な1要素だと考えます。もっというと、コンクリートの隙間に生えるたんぽぽだって小さな景色ではないでしょうか。

もちろん、ランドスケープを考えるにあたって、大きな自然を守ろうとする運動も、市民が集まる綺麗で大きな庭を創ることなどは、とても大事なことでしょう。一方で、見るものが大きくなればなるほど、小さな視点が無視されることも多々あります。小さな視点は、なくても実質困りませんが、不思議と味気ない風景になってしまいます。そこで、まさに自分の立っている小さな足元から、ランドスケープに思いを馳せ、考察する実験をしてみたいと思いました。特別ではなく身近な風景を、ご近所ランドスケープとして紹介していきたいと思います。


シリーズ第一回、私の家の近所の風景で、大好きな風景があります。

サクラとイロハモミジのトンネルです。公道をはさんで、別々の家に植えてあるモミジとサクラの樹冠が、ちょうど公道の真ん中で接しています。上の写真は、公道から木を見上げて撮りました。サクラの花の春真っ只中の美しさと、イロハモミジの若葉の初夏へのワクワク感が入り混じるような気持ちになります。隙間から見える空の色も格別。

別々の家の二本の木が、恐らく偶然とはいえ、こんな美しいランドスケープを公の場に共同で創ってるなんて、感動すると同時に、この下を通れることにひたすら感謝です。高さ、分量、樹形、木々の組み合わせ、全てのバランスが良いのは、木の年数がある程度経過し成長しているためでしょうし、さらに、自然樹形を生かした管理が効いていることも考えられます。公道にはみ出た木は、車に当たるなどの理由でバツッと剪定されているものもしばしば見かけます。このサクラとモミジのお宅は、公道から数メートル上の土地にあるため、自然樹形で育てても樹冠が十分に高く、そのようなトラブルが起きなかったのでは?、と思います。一言に庭に木を植えると行っても、住宅地である限り、なんでも自由に植えられるわけではありません。日照をさえぎらない・落葉で迷惑かけない・通行の妨げにならない・管理が大変でない、などなど、様々なめんどうな制約が付いてくることがほとんどです。それを思うと今回の、個人の家が(しかも2軒で、)創るランドスケープは、奇跡的な例だと思いませんか?人の都合でどんどん形を変えるのでなく、醸成されてきた景色が美しさを持っていると思います。

身近な近所の景色について、考えてみませんか?
何も富良野のラベンダー畑やら、屋久島やら、ヨセミテ国立公園やら、やたら遠くに行かなくても、近くの自然の景色を見てみませんか?
家の庭、マンションの植栽、会社に植えてある木、コンクリートの隙間の雑草、、、日常のそこらに小さなランドスケープはあります。そこに何か発見があるかもしれません。
このような場所に目をつけ、個人や公の庭にどう生かしていくかのヒントにしていければと思います。

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