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【アジアリーグアイスホッケー】2023-24 Season開幕に思うこと・2

2 リーグ運営・チーム運営
日本のアイスホッケー界は、JIHF 公益財団法人 日本アイスホッケー連盟がトップです。ただアジアリーグアイスホッケーは別にオフィスがあり、完全に日本アイスホッケー連盟の直属組織ではない模様です(もちろん密接に関係はしているでしょうけど)。
日本アイスホッケー連盟の直轄事業は地域の「日本アイスホッケーリーグ」(Jアイス)と高校までの全国大会、男女のIIHF世界選手権、そしてサッカーでいう“天皇杯”にあたる「全日本選手権」となります。

問題は日本アイスホッケー連盟とアジアリーグアイスホッケーオフィスの体制、人員、外部営業力において弱い、という事。
日本アイスホッケー連盟は2023年の夏に助成金が減額される事を理由に、今年秋に予定されている男子代表と女子代表の海外遠征を一時的に中止せざるを得ない状況となっている、との発表ありました。
https://www.jihf.or.jp/news/detail.php?id=2021

自分は連盟の規模や職員数などの事は存じておりませんが、もともとは元西武グループの総帥であった堤義明氏が長年連盟の会長を努めており、2005年の証券取引法違反事件で、西武・コクドグループの総帥から退任したあと、日本のウィンタースポーツ界は迷走する。JOCの会長等もされていた堤氏がウィンタースポーツ界に尽力した功績(影響力)は大きく、逆に言えば後継者が育っていなかったとも言える。

今までも森喜朗氏など政治家のパイプが強いイメージだったJOCは東京オリンピック前の不適切発言が元で森氏が辞任し、その後も東京オリンピック絡みの汚職や談合事件が明るみに出て、JOCは体制の立て直しに必死だ。
JOCが弱体化すれば、競技別組織にあたるJIHFも弱体化する。今まではそれでも補助金頼りでなんとかしてきたのだろうが、その間(もちろんコロナ禍という大逆風が吹いたのは考慮すべきだが)に民間のオフィシャルパートナーを開拓して来なかった事が、今回の事態を招いたと一因であるとも考えられる。

もともと日本サッカー界は1966年当時、アイスホッケーとは比べ物にならないほどファンの少ないスポーツだったそうだ。それが1993年の「Jリーグ創設」でプロ化を果たす。バブル期崩壊後でその後数年で有力チームの消滅・統合という痛みも味わいながら、現在の日本代表チームの力の底上げは言うまでもなく、TV地上波中継はリーグ戦の放映がほとんど消滅したが、DAZNと巨額の契約を結び、体制は強化されている様に見える。
現在地上波のスポーツ中継は軒並み減少しているところからすれば、致し方ないのかもしれないが、J1からJ3まで60チームがJクラブに加盟しているところは素晴らしいリーグ運営努力と言えるのではないだろうか。

1999年古河電工アイスホッケー部が親会社の業績不振から73年の歴史を閉じる事が発表され、日本アイスホッケー界に激震が走る。日本アイスホッケー界の歴史では地元開催オリンピック終了後に廃部危機が訪れる。
1972年2月の札幌オリンピック終了後に福徳相互銀行が本業の不振により廃部。このときは堤グループの西武鉄道がチームを2分して、新たに国土計画(のちコクド)チームが発足し、日本リーグ5チーム体制は維持された。その後1974年に十条製紙(のち日本製紙)が日本リーグに加盟し6チーム体制に。しかし1979年に苫小牧にある岩倉組がやはり廃部。このときは大手企業の雪印がチームごと受け入れ、札幌に移転しての再出発となった。雪印は2000年の集団食中毒事件で業績悪化し、アイスホッケー部は終了。その後市民クラブチーム「札幌ポラリス」として1シーズン日本リーグを戦うが、2年目の資金繰りが出来ず、日本リーグから撤退。
アイスバックスも日光市という人口の少ない地域での運営継続は困難で、何度も運営団体が変わり、選手の給与遅配等もあったが、選手・運営が一つになり、2010年にスポーツマーケティングのスペシャリストである日置貴之氏がGMに就任すると、事態はようやく好転。
しかしコロナ禍の影響から運営会社は2023年3月に(株)栃木ユナイテッドから(株)栃木日光アイスバックスへ移管された(運営スタッフもほぼ移籍)。

長々と歴史を書きましたが、これが日本アイスホッケー界の現状です。
現在、実業団チームはなく、プロ化しているものの運営規模で言えばおそらくサッカーのJ3以下かJFLのチーム。リーグからの分配金もない手弁当のリーグです。これでもプロリーグと言えるのか?
最近参入した横浜GRITSは「デュアルキャリア」を標榜したチーム。普段は会社員として働き、試合時は選手として活動。そういったスタイルを受け入れてくれる会社に選手は所属している。でもこれは本来のプロとは言える状況ではない。
この状況でプレーしてくれる選手、大学を卒業して入団してくる選手には敬意を表するしかない。ただこの状況では大学リーグで好成績を収めた選手がプロの道を選ぶのか?選ばないだろ!っていうのが常識的な選択だと思う。引退後の人生設計が立たないのはどのプロ選手でもあるあるだろうけど、特にアイスホッケーは知名度も低いことから厳しい。そういう状況での横浜GRITSの提案する「デュアルキャリア」は現実的な選択のように見えますね。ただこれは厳密には「アマチュア」である。「プロ」の定義が本業の給与だけで生活が成り立つ、とした場合ですが。

アイスホッケーがもっと収益のあがる、継続可能な「スポーツコンテンツ」になるためには、まだまだ課題が山積している。日本のトップリーグがこのような「アマチュアリーグ」である以上、世界に通用する選手の輩出は、別のルートを模索するしかないのだ、現状は。

つづく


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