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108つの煩悩 覚え書き④「四畳半に煎餅布団の理」

「四畳半に煎餅布団の理」

貧乏暮らしにそろそろ飽き始めた頃に、寝布団から這い出て
楽園を往ぬる。
夜明け前
どこからともなしに、野焼きをした焦げ臭いにほいが
そこはかとなきまでに庭先から軒先をくぐり玄関を縫って部屋に入ってきた。
そのにほひはまるで
負の遺産のやうに、仰々しくもあっていつまでも正座をして待機している虚無槽のように振る舞っていた。
 ただのにほひだらう。

 ただのにほひだらう。

気ん持ちよくもない湯加減の風呂に放り込んまれたみたいな心地になる。

我愚犬が隣で吠える。

とても、とても唐突に吠える。

その声に便乗するかのように庭のシジュウカラがさんざめくように哭いている。

布団から這い出したのは

間違ったかのように俺はポカンとアゴを持ち上げて空を見る。

なにもない空だ。

いつみてもやっぱり何もない空だ。

そこに追い討ちをかけたみたいに

しとしとと雨が降る

とても嫌な雨だ。

だのに布団が固い。とてつもなく湿って固い布団だ。

俺はその硬さに意表を突かれたと同時に伸ばした手がなぜか、虚空を彷徨うのだった。

「金をくれ、金が欲しい…」

(汗)

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