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押印の見直しについて思うこと

河野太郎行政・規制改革担当大臣が、民間からの行政手続きの多くで押印を廃止すると発表して、昨年末にかけて一気に押印の見直しが進みました。

私としては、役所の手続きで、本人の署名はダメで、100円ショップでも買える認印ならOKって、そもそも押印って意味があるの?と思っていましたので、そのような不合理な作業がなくなる良い取り組みだ思いました。

特許庁における押印の見直し

この押印の見直しの影響は、私が常々仕事で書類を提出する特許庁(経済産業省の下部組織)にも、もちろん及びました。

特許庁から2020年12月28日に発表された内容では、「一部の手続を除き、押印が不要となりました」と特許庁が表現するほど、『原則=押印無し』というような言い方で、多くの手続きでの押印の廃止が発表されました。

下の図は特許庁の発表資料からの抜粋です。実に、797種の手続きのうち押印が残ったのは33種、約4%です。

JPO押印見直し全体像

押印が残った手続きは、書類が偽造されたときの被害が大きいもので、主には権利の移転に関するもののみです。

私は弁理士として、手続きをする依頼人からの委任状を提出することがあるのですが、なんと、委任状についても押印不要になりました。

でも、委任状自体は原本を提出しないといけないという、「それって委任状っていえるの?」というような状態になっています。

一方で、押印が残った手続きについては、印鑑証明書の提出が要求されるようになり、一部手続きでは要件が増えています。

ちゃんとした法律行為として、適切に処理するようになったと言えば、そういうことなのですが・・・。

これまでの手続きに慣れていると逆に面倒になった気もします。

良かったと思うこと

不合理な押印作業がなくなった点でスッキリした、という情緒的な点ではプラスです。

他には、、、、

実はそんなにない!?

結局、いままでなくても良かったことがなくなったので、あまり感じないのかもしれません。

気を付けなければいけないと思うこと

弁理士としては、委任状をいただければ、手続きの大部分を代理できるので、依頼人が委任状をちゃんと読んで押印してくれることが重要です。

ただ、今度の運用だと、委任状への押印が不要になるので、後から、「そんな手続き委任してない!」って言われたらどうしよう、と不安は残ります。

結局、弁理士事務所と依頼人との間での委任事項の確認は、自分たちで責任をもって行う必要があるということだと思います。

これまでは特許庁の手続き(委任状の提出のための依頼人の押印)でこの点を担保できていたのが、役所は関与しないから、民民契約でやりなさい、ということなのでしょう。

ここは、肝に銘じてやらないといけないと思いました。

また、外国人が日本で商標権などの権利を取得しようとする場合には、これまでは英語で作った委任状に署名を貰って、翻訳文を添えて提出していたのですが、今後はどうするんでしょう。

律儀に署名無しの英語版と翻訳文をこれまで通り出すのか、それとも、今回は押印の話だから署名は関係なくて、これまで通り署名済み書類の原本を要求されるのか。

また改めて特許庁に確認したいと思います。

今後の展望(期待)

今後は、押印が残った手続きについて、コピー提出を認める話が進むことを期待しています。

欧米各国の手続きでは、委任状なども「スキャンして送ってくれ。原本不要!」と言ってくれるので、非常に楽です。

一方、日本は原本要求するので、「署名して原本送ってくれ」と言っても、このコロナ禍で国際郵便が遅れて、なかなか届かないということもありました。

やはり、押印不要の次は、押印が残った手続きについても原本不要でコピーの電子提出OKの話になるに違いない。違いない。間違いない。

河野大臣の次のステップに期待しています。

あとは、印鑑証明書の提出についても、国と地方自治体のネットワークつなげて、官公庁なら自分たちで見れるようにすれば、提出不要になっていいと思うのです。

まぁ、この点は、言うは易しで、、、。

でも、こういう改善は、やり出すと面白いと思うので、国として改善の動きが活発になると日本も良い方向に進むように思います。

今回の押印の見直しが、日本のこれまでの社会システム、慣習の在り方を前向きに考えるきっかけになればいいなぁと。


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