見出し画像

米国の景気後退(リセッション)の歴史をみてみよう

経済は成長と収縮を繰り返すサイクルがあります。経済が成長してピークに達した後、企業の生産や消費活動が減速し、不景気になるまでの期間を「景気後退(リセッション)」と呼びます。リセッションの期間中は、多くの企業の利益が減少し、失業率が上昇することが一般的です。

今回は簡単に過去どのようなことが原因でリセッションが起きたのか歴史を紐解いていきたいと思います。

◆リセッションの定義

まずは景気後退(リセッション)の定義を確認します。
米国では、2四半期以上連続して実質GDP(国内総生産)がマイナス成長になると景気後退と見なされることが一般的です。

ただし、リセッションが始まったかどうかの最終判断は、全米経済研究所(NBER)という民間の研究機関が行います。NBERの基準では、経済全体にわたる重要な活動の下降が数ヶ月以上続くことが必要です。

このため、リセッションが宣言されるのは、経済が実際に悪化してからしばらく経った後になることが多いです。

◆景気後退と金融政策 なぜFRBが注目されるのか?

中央銀行(FRB:連邦準備制度理事会)は、インフレを抑制するために政策金利を引き上げることがあります。金利が上がると、住宅ローンや自動車ローンの金利も上昇し、住宅や耐久消費財(例:車や家具)の購入が減少します。

その結果、消費が減り、経済全体の活動が縮小することがあります。こうした金利引き上げは、インフレを抑制するために必要なことではありますが、時にはリセッションを引き起こす要因にもなり得ます。

◆株価への影響

景気後退中は企業の業績も低迷するため、株価も下落することが多く、場合によっては大幅な下落を経験することもあります。

しかし、重要なのは、景気回復に先立って株価が底を打つ(反転する)ことが多いという点です。過去の米国の景気後退期では、FRBが利下げに転じた後に株価が回復するケースがよく見られます。

警告:株式投資を行う際には、リセッション中に株価が下がるリスクを想定しておくことが非常に重要です。株価の変動は予測が難しいため、短期的な損失も念頭に置き、無理のない範囲で投資を行うことが大切です。長期的な視点で市場の回復を待つ忍耐も求められます。

◆過去の米国のリセッション事例

米国では1969年以降8回のリセッションがありました。以下の表は、1969年以降の米国の主要な景気後退の期間とその原因をまとめたものです。

米国の景気後退の歴史

過去のリセッションの解説

  1. 1969年12月 - 1970年11月(インフレ対策のための金融引き締め)
    ベトナム戦争の軍事支出とジョンソン大統領の「偉大な社会」政策による財政支出増大で、インフレが加速しました。FRBはインフレを抑えるために金利を引き上げ、その結果、経済活動が冷え込みました。

  2. 1973年11月 - 1975年3月(第一次オイルショック)
    中東の石油輸出国が原油価格を引き上げたため、エネルギー価格が急騰し、経済活動に大きな影響を与えました。インフレ率が急上昇し、経済成長が減速しました。

  3. 1980年1月 - 1980年7月(ボルカーショック)
    高インフレに対処するため、FRBの議長ポール・ボルカーは政策金利を大幅に引き上げました。これにより、経済活動が急速に減速し、リセッションに突入しました。

  4. 1981年7月 - 1982年11月(ボルカーショック)
    ボルカー議長の高金利政策の影響が続き、さらにオイルショックの余波によるエネルギー価格の高騰も加わり、経済が長期間低迷しました。失業率も10%以上に上昇しました。

  5. 1990年7月 - 1991年3月(湾岸戦争とエネルギー価格の急騰)
    湾岸戦争による地政学的リスクとそれに伴う原油価格の急騰が消費と投資を減少させ、経済に悪影響を及ぼしました。

  6. 2001年3月 - 2001年11月(ドットコムバブルの崩壊)
    IT企業の過剰評価とその後の株価崩壊が原因で、企業投資が急減しました。さらに9.11テロ攻撃も経済の不確実性を高めました。

  7. 2007年12月 - 2009年6月(リーマンショックによる金融危機)
    サブプライムローン問題を引き金に、金融システム全体が危機に陥り、多くの銀行が破綻しました。これにより、世界的な経済危機が発生しました。

  8. 2020年2月 - 2020年4月(COVID-19パンデミックによる経済停止)
    新型コロナウイルスの大流行によるロックダウンと経済活動の大幅な制限が、消費と投資を一時的に停止させ、急速な景気後退を引き起こしました。

これらの事例を学ぶことで、景気後退がどのように発生し、その影響がどのように広がるかを理解することができます。株式市場の変動や経済のリスクに対して準備をしておくことが重要です。

まとめ

景気後退(リセッション)は、経済の成長サイクルにおいて避けられない現象です。過去のリセッションを振り返ると、それぞれの時代に異なる要因で引き起こされてきましたが、共通しているのは、インフレ、金融政策、エネルギー価格の急変、バブル崩壊などが経済に大きな影響を与えている点です。

リセッションの期間中は、株価が大幅に下落することがあるため、投資家にとってはリスクを伴う時期です。しかし、リセッションを乗り越えた後には、経済が回復し、株価も上昇に転じることが多いです。こうした市場のサイクルを理解し、長期的な視点を持つことが大切です。

また、景気後退のリスクに備えるためには、ゴールドや債券など多様な資産に分散投資を行い、無理のない範囲で投資を続けることが重要です。市場の変動に動じず、冷静に対応することが、長期的な資産形成につながります。

投資を始められたばかりの方はまず、リセッションの基本的な仕組みとその影響を理解し、経済ニュースや金融政策に注目する習慣をつけましょう。こうした知識が、将来の投資判断に役立つ大きな力になるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?