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【経済の原理】長期的に見れば株価は上昇する理由とそのメカニズム

株価が長い目で見ると上昇しやすい理由の一つは、中央銀行 が経済を支えるために「お金を市場にたくさん供給する」からだと私は思っています。

株式市場では、他社からパイを奪って得るだけでなく、増殖したパイを獲得することもできるのです。

この行為を 量的緩和(QE) といいます。量的緩和では、中央銀行が国債や他の資産を買い取ることで、市場にお金を流し、経済を活性化させる狙いがあります。

量的緩和 によって銀行や投資家に多くの資金が供給されると、その資金が企業や個人に貸し出され、株式市場への投資も増えます。こうして、株の需要が高まり、株価が上昇していくのです。

下のグラフはS&P500とアメリカの通貨供給量を示したグラフです。

今回は世界の中心であるアメリカをベースにこちらの内容を噛み砕いてまとめていきますので、ご一読いただけますと幸いです。

S&P500とアメリカのM2マネーサプライ 出典:Voronoi
青:M2 赤:S&P500



§1.量的緩和(QE)とは何か?

量的緩和(QE) は、中央銀行が市場に新しいお金を供給するために使う手段です。通常、景気が悪くなると金利を下げてお金を借りやすくし、経済を活性化させますが、金利がすでに非常に低い場合には、それ以上金利を下げられません。

そんなときに、中央銀行が国債などの資産を買い取ることで市場に直接お金を送り込む方法が 量的緩和 です。

たとえば、アメリカではリーマンショック(2008年)や新型コロナウイルスのパンデミックの際に、この QE が大規模に行われ、経済が回復し、株価も上昇しました。


なぜ量的緩和をするのか?

量的緩和(QE)を行う理由は、経済の回復を促進し、デフレ(物価が下がり続ける現象)を防ぐためです。

特に、金利がすでに非常に低くなっている状況では、中央銀行は通常の「金利を下げる」政策が使えなくなるため、別の手段として量的緩和が用いられます。以下の理由で行われます。

  • 経済の停滞を防ぐため
    景気が悪化すると、企業や消費者はお金を使うのを控えます。企業は新たな設備投資を控え、消費者は大きな買い物や投資を避けるようになります。

    これにより、経済全体の活動が停滞してしまい、さらなる不景気に繋がることがあります。

    中央銀行が量的緩和を行うことで、市場にお金を供給し、企業や個人が融資を受けやすくすることで、投資や消費を促し、経済活動を活性化させることを目指します。

  • デフレを防止するため
    デフレは、物価が下がり続ける現象です。物価が下がると、企業の売り上げが減少し、賃金も下がり、人々がさらにお金を使わなくなるという悪循環が発生します。

    このデフレスパイラルを防ぐために、中央銀行は量的緩和を行って市場にお金を増やし、物価の安定を図ります。デフレを防ぐことは、経済の健全な成長にとって非常に重要です。

  • 融資や投資の環境を整えるため
    量的緩和を行うことで、銀行は多くの資金を保有することになり、その結果、企業や個人に対する融資が容易になります。

    企業はその資金を使って新しい事業を始めたり、設備を増強したりすることができ、個人は家を買ったり、車を買ったりすることができます。

    これにより、経済全体に活気が戻り、景気が回復することが期待されます。

  • 心理的な効果も重要
    量的緩和が発表されることで、市場参加者、つまり企業や消費者は「中央銀行が経済を支えようとしている」という安心感を持ちます。

    これによって、消費や投資が促進され、経済が好転することが期待されます。このような心理的効果も、量的緩和の重要な側面の一つです。

具体的な例

例えば、2008年のリーマンショック後や、2020年の新型コロナウイルスによる世界的な経済危機の際には、各国の中央銀行が量的緩和を実施しました。

これにより、市場に大量の資金が供給され、株価の回復や企業活動の再活性化が促進されました。

量的緩和はこのように、経済の回復を支える強力なツールとして使われるのです。


お金が増えるとどうなる?

市場に供給されるお金が増えると、企業や個人は 投資や消費をしやすくなります。具体的には、中央銀行が量的緩和(QE)を通じて国債や資産を買い取ることで市場に大量の資金を供給します。

この結果、銀行は手元に資金を多く持つようになり、その資金を企業や個人に貸し出すことが容易になります。

お金を借りやすくなった企業は新しいプロジェクトに投資しやすくなり、個人は家や車を買ったり、生活費を借りたりしやすくなります。

  • 株価への影響
    お金が増えると、投資家たちが「今は投資をするチャンスだ」と感じるようになり、株式市場への投資が増えます。

    多くの人が株を買おうとすると、株価の需要が増え、結果的に 株価が上昇 します。この現象は、リーマンショック後や新型コロナウイルスの影響で世界各国がQEを行った際に特に顕著でした。

    アメリカや他の国々で中央銀行が大規模な量的緩和を実施した結果、株式市場は大きく回復し、経済全体にもプラスの効果が波及しました。

  • 企業活動の活性化
    市場にお金が流れ込むと、企業はその資金を活用して新しい事業を開始したり、設備投資を行ったりすることができます。

    これによって 企業の利益 が増え、さらに株価の上昇に寄与します。企業の業績が良くなることで投資家の信頼も高まり、さらなる投資が進むという好循環が生まれます。

  • 消費者への効果
    また、個人もお金を借りやすくなるため、家や車を購入したり、日常的な消費に対しても積極的になることが期待されます。

    これがさらなる経済の活性化を促し、企業の利益が増え、それが株価の上昇に繋がっていきます。

このように、量的緩和は市場全体にお金を増やすことで、経済や株式市場の回復を強力に支える役割を果たします。


§2.バランスの大切さとバブルのリスク

量的緩和(QE)は市場にお金を供給して経済を刺激する効果がありますが、その供給量が「経済の実態」とバランスを取れていない場合、大きなリスクが伴います。

もし経済が実際には成長していないのに、過剰にお金が市場に流れ込むと、バブル が発生する可能性があります。

バブルとは、企業や資産の実際の価値よりも、価格や株価が極端に高くなりすぎた状態を指します。

◇バブルの具体例

  • ITバブル(ドットコムバブル)
    1990年代後半、インターネット関連企業が急激に成長し、投資家たちはそれらの企業の株を過剰に購入しました。

    しかし、実際の業績や利益が追いつかないまま株価だけが急騰し、2000年にバブルが崩壊。多くの企業が倒産し、株価は急落。

    特に、NASDAQ総合指数は2000年のピークから2002年までに約78%下落しました。この崩壊はアメリカ全体の株式市場にも影響を与え、経済全体に大きなダメージをもたらしました。

  • リーマンショック(2008年の金融危機)
    2000年代初頭の不動産バブルも同様です。住宅価格が急上昇し、多くの投資家や銀行がサブプライムローン(信用力が低い人向けの住宅ローン)に投資しました。

    しかし、実際には借金を返済できない人々が増加し、2008年に住宅市場が崩壊。リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に、世界的な金融危機が発生しました。株価も大幅に下落し、世界経済に大きな打撃を与えました。

これらのケースでは、実際の経済成長に見合わない資産価格の上昇がバブルを引き起こし、崩壊時に大きな混乱を招いたことがわかります。

QEのリスク:通貨の信頼の失墜

また量的緩和を過剰に行うと、通貨供給量が大幅に増加し、通貨そのものの価値が下がるリスクがあります。通貨の信頼が失墜することで、次のようなネガティブな影響が発生します。

  • インフレやハイパーインフレ
    お金の量が増えすぎると、物の価値が相対的に下がり、物価が急上昇するインフレが進行します。

    特に、経済が成長していない状況で通貨が過剰に増加すると、ハイパーインフレになる危険があります。

    これは、物価が急激に上昇し、通貨の価値が急速に下がる状況を指します。こうなると、人々はお金を持つことに不安を覚え、商品や資産に投資を急ぐため、さらに物価が上がるという悪循環に陥ります。

  • 通貨価値の崩壊
    通貨供給が増えすぎると、国内外でその通貨の価値が急落する可能性があります。輸入品の価格が急上昇し、国内のインフレが進行。

    加えて、貿易赤字が拡大し、経済のバランスが大きく崩れるリスクが高まります。

実際に破綻した事例

量的緩和や過度な通貨発行によって国家が破綻した例はいくつかあります。

  • ジンバブエのハイパーインフレ(2000年代後半)
    ジンバブエは、政府の財政政策や農業改革の失敗により、深刻な経済危機に陥りました。

    これを乗り越えようとした中央銀行が、大量の紙幣を発行しましたが、その結果、ハイパーインフレが発生しました。最終的には物価が天文学的に上昇し、2008年には月間のインフレ率が**79,600,000,000%**に達しました。

    ジンバブエドルは事実上無価値となり、国の経済は崩壊状態に陥りました。

  • ヴァイマル共和国のハイパーインフレ(1920年代)
    第一次世界大戦後のドイツ(ヴァイマル共和国)は、戦争の賠償金や経済不安から紙幣を大量に発行しました。

    この結果、通貨の価値が急激に下がり、物価が異常に高騰しました。1923年のピーク時には、パン一個の価格が数十億マルクに達するほどのハイパーインフレが発生しました。

    このインフレにより、ドイツ経済は崩壊寸前となり、政治的にも大きな不安定を引き起こしました。

これらの事例は、通貨供給量を過剰に増やすことで通貨の信頼が失われ、ハイパーインフレや経済の破綻が引き起こされる危険性を示しています。


量的引き締め(QT)とは?

一方で、中央銀行は**量的引き締め(QT)**という逆の政策を行うこともあります。

これは、市場に出回っている資産を売却して、通貨供給量を減らすことで、インフレやバブルのリスクを軽減し、経済を安定させる狙いがあります。

例えば、インフレが進みすぎて物価が上がりすぎた場合、中央銀行はQTを行い、通貨供給量を減らして経済の過熱を防ぎます。

QTは、特にバブルが発生している状況インフレが急速に進行している状況で重要な役割を果たします。


§3.世界の通貨量も増えている

アメリカだけでなく世界中で通貨の供給量は増えています。

下のグラフはアメリカの連邦準備制度(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行(BOJ)、および中国人民銀行(PBOC)のM2供給量になりますが、見ての通り右肩上がりで上昇しております。

どうして世界中の国で通貨供給量が増えるのか?

通貨供給量が増えるのは、各国の中央銀行が経済を支えるためにQEを行うからです。

たとえば、アメリカの連邦準備制度(FRB)や日本銀行(BOJ)が国債や資産を買い取ることで市場に新しいお金を流し、金融機関に資金が溜まります。

この資金は、企業や個人への融資として使われ、さらに経済を回すことが期待されます。

通貨供給量の増加がもたらす影響

お金の供給量が増えると、企業や個人はお金を借りやすくなり、その結果、株式や不動産などの投資が活発化します。

これが 株価の上昇 にもつながりやすく、経済全体を回復させる役割を果たします。

しかし、注意しなければならないのは、通貨が増えすぎるとインフレが進むリスクがあることです。

物価が上昇しすぎると、経済のバランスが崩れ、生活費が高騰してしまいます。

世界全体の通貨供給量の増加例

特にリーマンショック(2008年)やコロナ危機(2020年)の後、各国で大規模なQEが実施されました。

これにより、世界の主要経済圏でM2(広義のマネーサプライ)と呼ばれる通貨供給量が大きく増加しました。

たとえば、アメリカでは2020年以降、約20%の通貨供給量の増加が見られ、これは過去に例を見ない速さです。このような大量の通貨供給は、経済の回復を支えるために重要な役割を果たしました​


まとめ

現在の株価上昇は生成AI登場によるテクノロジーの発展もさることながら、中央銀行の量的緩和(QE)の影響を強く受けていると思っております。

量的緩和(QE) は、政府が国家を維持するための重要な手法になるため否定はしません。

しかし、過度にお金を供給しすぎると インフレバブル のリスクが伴います。そのため経済が過熱した場合は、量的引き締め(QT) を行ってバランスを取ることが大切です。

そして2024年の現在は2022年からの利上げと量的引き締め(QT)が完了し、金融政策を正常な状態まで戻していくフェーズになります。

この最中で雇用の悪化などで、株価は大きく下落する場面はあるかもしれませんが、経済と通貨供給量のバランスが大きく崩れない限りは、長期的には上がっていくと私は判断したいと思います。


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