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2023ニューイヤー駅伝 観戦記

2023年、あけましておめでとうございます。全ての方々に素晴らしい日々が訪れる年となりますよう祈るとともに、私自身も、実り多き充実した一年にしていきたいと思います。

新年三日間は例年通り、駅伝観戦記からスタートすることにします。初日は、実業団No.1を決める『第67回全日本実業団対抗駅伝競走大会』、通称ニューイヤー駅伝の観戦記です。群馬県庁をスタート・ゴールとする7区間100㎞のコースで、地区予選を勝ち抜いた36チーム(安川電機が欠場)によって争われました。今大会は有観客開催となり、かつての姿に戻りつつあります。大会関係者の尽力と献身に感謝です。

今年のニューイヤー駅伝は、トラックで好タイムを持つトップランナーやマラソンレースを控える有力選手の欠場も目立ち、混戦になることが予想されていました。話題は、2020東京五輪マラソン6位入賞の大迫傑選手が、GMOインターネットグループチームの一員として出走することでした。前年優勝のHonda、2位のSUBARU、日本代表クラスの選手が揃う富士通、九州大会を制して上げ潮ムードの黒崎播磨、今年こそ優勝の悲願に燃える三菱重工、経験豊富な選手たちが揃うトヨタ自動車らが有力候補に挙げられています。

1区 12.3㎞ 群馬県庁〜高崎市役所

スタート直後からスローペースで進み、集団走の展開が中盤以降も続きました。昨年は前半から積極的にレースを牽引した旭化成・茂木選手も、今年は集団最後方からレースを進めます。

優勝を狙う三菱重工の的野選手や、Hondaの小袖選手、富士通の塩澤選手あたりが集団前方の好位置を占め、左右をチラチラみつつペースを上げ下げしながら進んでいきます。百戦錬磨のSGホールディングスの佐藤選手、トヨタ自動車・田中選手も好調そうです。昨年区間賞の九電工・舟津選手、スピードランナーのGMOインターネットグループ・村山選手は集団の中で脚を貯めながら、虎視眈々とラスト勝負に備えます。

最後のコーナーを曲がってからの叩き合いでは、村山選手が抜け出し、猛追してきた小袖選手、ヤクルト・太田選手を同タイムながら抑え、ニューイヤー駅伝初の区間賞を獲得しました。大混戦のレースで、35位までがトップから1分差以内の僅差で中継しました。

区間賞 村山絋太(GMOインターネットグループ)35分35秒

2区 8.3㎞ 高崎市役所〜前橋市公田町

コース最短の2区は、唯一外国籍ランナーの起用が認められているインターナショナル区間です。スピード自慢の選手達が集結し、後方からのハイレベルなゴボウ抜きが毎年繰り広げられます。

大混戦でタスキが渡った為、横に大きく広がった大集団がハイペースで進んでいきます。昨年区間賞獲得のSUBARU・キプランガット・ベンソン選手、2022オレゴン世界選手権10000m銀メダルのヤクルト・ワイザカ選手ら、区間賞候補を含む先頭集団に、18秒差の25位でタスキを受けた区間記録保持者の九電工・コエチ選手が猛烈なペースで追いつき、更に意欲的に前を目指します。

距離が進むにつれて、有力選手が次々と振り落とされていきました。最後のスパートで強かったキプランガット・ベンソン選手が首位で中継、1秒差の2位には、三菱重工・キプランガット・エマヌエル選手が続きました。首位通過はならなかったものの、チームを3位まで引き上げたコエチ選手が、自身の持つ区間記録に1秒及ばなかったものの区間賞を獲得しました。

区間賞 B.コエチ(九電工)21分54秒

3区 13.6㎞ 前橋市公田町〜伊勢崎市役所

例年強い追い風に後押しされるスピード区間で、ゴボウ抜きも見られる前半のポイント区間です。

首位SUBARUのキャプテン・梶谷選手と2位でタスキを受けた三菱重工・林田選手の首位争いに、22秒遅れの7位でスタートしたHondaの川瀬選手が後方から割り込み、激しいつばぜり合いを展開しました。

首位争いは最後まで譲らぬ死闘を展開し、林田選手が1秒先着、2位に梶谷選手、川瀬選手は25秒差の3位です。この区間の注目は、GMOインターネットグループ・大迫選手です。2区で18位まで後退した順位を、区間2位の冷静な走りで7位まで挽回しました。区間賞は、トヨタ自動車・太田選手で、18人抜きの快走を演じ、チームを5位まで引き上げました。爆走が期待されていた九州王者・黒崎播磨の田村友佑選手は前半こそハイペースで追い上げたものの、後半はやや失速し、区間10位に終わりました。

区間賞 太田智樹(トヨタ自動車)37分40秒

4区 22.4㎞ 伊勢崎市役所〜太田市役所

4区は、各チームのエースが健脚を競う最長区間。コース終盤、高林の交差点を曲がった後、真正面から受ける上州名物からっ風を、どのように攻略するかがポイントです。

先頭の三菱重工は、実績十分のマラソンランナー井上選手が、冷静な走りで、2位のSUBARU・照井選手をじわじわと引き離していきます。後方ではトヨタ自動車・西山雄選手、Honda・小山選手、富士通・横手選手、GMOインターネットグループ・吉田選手ら、チームのエースが一団となって前を追っていきます。

レース後半、小山選手が集団から抜け出して、首位の井上選手を逆転し、五区中継では、12秒差をつける殊勲の走りとなりました。Hondaは連覇に向けて、理想的な展開です。3位は一時後退したものの後半挽回して意地を見せた西山雄選手、4位には吉田選手が地力を発揮し、SGホールディングスの湯澤選手が5位です。区間賞は、後方でごぼう抜きを見せたKAO・池田選手が獲得しました。昨年区間新をマークした黒崎播磨・細谷選手も区間2位と貫禄を見せました。

区間賞 池田耀平(KAO)1時間4分4秒

5区 15.8㎞ 太田市役所〜桐生市役所

5区は向かい風と上り基調のタフなコースです。

Hondaはこの区間に、オレゴン世界選手権3000m障害代表の青木選手を三年連続で起用しました。過去2回僅差で区間賞を逃している青木選手は三度目の正直で区間賞を獲得。好走した今江選手が2位にあがったGMOインターネットグループに34秒差をつけて首位を堅持しました。

3位には、実力者の塩尻選手が区間2位の走りを見せた富士通、4位はトヨタ自動車・丸山選手でした。昨年区間賞を獲得している旭化成・小野選手は今年は区間10位に終わり、チームも12位に低迷しています。

区間賞 青木涼真(Honda)45分47秒

6区 12.1㎞ 桐生市役所〜伊勢崎市西久保町

勝負は後半。戦略の6区に入ります。過去10年間、6区で区間賞を獲得したチームが総合優勝を飾っています。距離は短いものの、アップダウンもあり、向かい風をまともに受け、コーナーが多くてペースが掴み辛い難コースだと言われています。

首位のHondaは昨年区間賞を獲得し、初優勝の立役者になった中山選手が、今年も好走。区間賞こそ、快走したトヨタ紡織・羽生選手に譲ったものの、実績十分の浦野選手が走った2位の富士通との差を46秒に広げました。3位には初優勝を目指す三菱重工・定方選手が二人抜きで入りました。箱根駅伝で大活躍した記憶も残るGMOインターネットグループ・一色選手、トヨタ自動車・西山和選手は、今一つの走りで、2位⇒5位、4位⇒6位にチーム順位を落としてしまいました。

区間賞 羽生拓矢(トヨタ紡織)34分58秒

7区 15.5㎞ 伊勢崎市西久保町〜群馬県庁

首位のHondaは、安定感のある木村選手が走ります。ダイナミックな走りの富士通・潰滝選手が必死に追うものの、46秒差は十分な差であり、二連覇のテープを切りました。Hondaは狙い通りのレースだったことでしょう。

区間賞は、好調が伝えられていたトヨタ自動車の服部勇馬選手が、6位から3位に押し上げる好走で獲得しました。上位は戦前予想されていたチームが滑り込みましたが、過去複数の優勝経験を持ち、黄金時代を築いた旭化成、中国電力、コニカミノルタの16位、17位、18位は、ややさびしい結果です。

区間賞 服部勇馬(トヨタ自動車)46分08秒

チーム成績

① Honda 4時間48分06秒=大会二連覇
② 富士通 4時間48分52秒
③ トヨタ自動車 4時間50分10秒
④ 三菱重工 4時間50分13秒
⑤ GMOインターネットグループ 4時間50分16秒
⑥ SGホールディングスグループ 4時間50分17秒
⑦ SUBARU 4時間51分32秒
⑧ 中電工 4時間51分36秒

勝手に寸評

Hondaが昨年の初優勝に続き、見事に連覇を飾りました。四区のエース区間で小山選手が首位に立ち、五区の青木選手が決定打を放つと、実力者を配した六区・七区で盤石の逃げ切りでした。エースの伊藤達彦選手を欠きながらの価値ある優勝と言えそうです。

2位に入ったタレント軍団・富士通は、マラソンランナーの中村匠吾選手、鈴木健吾選手がエントリーから外れ、2020東京五輪5000m代表の松枝選手も出走を回避する中で層の厚さを見せました。惜しむべきは、2020東京五輪5000m代表で新主将の坂東選手が3区で区間16位に沈み、前半で波に乗れなかったことでしょうか。

個人的には、六区で区間賞を獲得する快走を見せた羽生選手の復活が嬉しいです。八千代松陰高校時代、世代トップクラスの実力を誇り、成り物入りで東海大学に進学しました。ところが、黄金世代と言われた仲間たちの陰に隠れ、不遇の競技者生活でした。トヨタ紡織入社後、徐々にトップパフォーマンスを取り戻しつつあります。

テレビ観戦者が応募できる毎年恒例のお年玉懸賞クイズですが、いまどき電話投票というのはさすがに…… という気になりました。

おまけ

駅伝観戦歴40年以上の私が、駅伝・マラソン・中長距離レースの観戦を記事に残していますので、興味があれば覗いて見て下さい。


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