📗【文書版】✴️礼拝メッセージ『主人の喜びの中へ！」新約聖書　マタイの福音書第25章14～30節　2023年11月19日

📗昨日の礼拝メッセージのテキスト版もここに掲載いたします⬇️
✴️礼拝メッセージ『主人の喜びの中へ！」
新約聖書　マタイの福音書第25章14～30節　2023年11月19日

14　天の御国は、旅に出るにあたり、自分のしもべたちを呼んで財産を預ける人のようです。
15彼はそれぞれその能力に応じて、一人には五タラント、一人には二タラント、もう一人には一タラントを渡して旅に出かけた。するとすぐに、�16五タラント預かった者は出て行って、それで商売をし、ほかに五タラントをもうけた。�17同じように、二タラント預かった者もほかに二タラントをもうけた。�18一方、一タラント預かった者は出て行って地面に穴を掘り、主人の金を隠した。�19さて、かなり時がたってから、しもべたちの主人が帰って来て彼らと清算をした。�20すると、五タラント預かった者が進み出て、もう五タラントを差し出して言った。『ご主人様。私に五タラント預けてくださいましたが、ご覧ください、私はほかに五タラントをもうけました。』�21主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。おまえはわずかな物に忠実だったから、多くの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』�22二タラントの者も進み出て言った。『ご主人様。私に二タラント預けてくださいましたが、ご覧ください、ほかに二タラントをもうけました。』�23主人は彼に言った。『よくやった。良い忠実なしもべだ。おまえはわずかな物に忠実だったから、多くの物を任せよう。主人の喜びをともに喜んでくれ。』�24一タラント預かっていた者も進み出て言った。『ご主人様。あなた様は蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集める、厳しい方だと分かっていました。�25それで私は怖くなり、出て行って、あなた様の一タラントを地の中に隠しておきました。ご覧ください、これがあなた様の物です。』�26しかし、主人は彼に答えた。『悪い、怠け者のしもべだ。私が蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集めると分かっていたというのか。�27それなら、おまえは私の金を銀行に預けておくべきだった。そうすれば、私が帰って来たとき、私の物を利息とともに返してもらえたのに。�28だから、そのタラントを彼から取り上げて、十タラント持っている者に与えよ。�29だれでも持っている者は与えられてもっと豊かになり、持っていない者は持っている物までも取り上げられるのだ。�30この役に立たないしもべは外の暗闇に追い出せ。そこで泣いて歯ぎしりするのだ。』

　主の恵みと平安が皆さんの上に豊かにありますように。
　この日も皆さんとご一緒に主の日の礼拝にあずかれますことを心から感謝いたします。

　皆さんは、マイケル・サンデルという人をご存じでしょうか？何か日本のテレビなんかにも出ていたそうですね。この人が「実力も運のうち」という本を書きました。「実力も運のうち」なんです。日本には「運も実力のうち」という言い回しがありますね。けれどそれと逆なんです。私たちは、努力すれば実力がついて、学業でもビジネスでもスポーツでも成功すると思いこんでいますね。ところが、それは違って、実は努力できる環境におかれるかどうかも、生まれついての運によって決まるんだ、というんですね。
　たとえばアメリカでは、ハーバードなどの有名な入学して卒業するまでに、数千万円かかると言われています。つまり、高度な教育を受ける権利を得られるかどうかが、数千万円の可処分所得が、親にあるかどうかにかかっている、ということになるわけです。(もちろん、実力をつけた人は努力もしてはいたでしょう。)

　別の例もあげましょう。カナダのアイスホッケーの選手は、1月生まれが多い。

　カナダのアイスホッケーの選手は、1月生まれが多い。どうしてでしょうか？(皆さんはどうしてだか分かりますか？)理由は簡単で、カナダでは、同じ年齢の少年を集めてクラスを作る場合、年齢を区切る期日を「1月1日」に設定しているんです。そうすると1月生まれは、チームに入る時に、一番体が大きいからなんですね。
　そうすると初めから他の子供より有利になります。そうすると、〇年生なのにうまいね、とほめられる機会も増えるでしょうし嬉しくなり、もっと努力して練習しようという気になったりしますね。そうして注目されると、スポーツ奨学金などをもらえたり、また設備の良い練習施設などを使わせてもらえたり、良いコーチなどをつけてもらえたりするかもしれないですよね。実は勉強やスポーツなどで、そういったもともと有利だった者が、ますます有利になっていくというものを「マタイ効果」って読んでいるんですね。そう名付けられたのは、今日のイエス様のみことばの「だれでも持っている者は与えられてもっと豊かになり、持っていない者は持っている物までも取り上げられるのだ。」ということばが由来なんだそうですね。(まぁもちろんこの場合みことばの解釈が間違っていますけれど)
　まぁそういったわけで、日本ではやはりおおむね、4月～6月生まれが、スポーツが強いという傾向はあるようです。学業でもスポーツでも、その生まれつきの差は努力で追い返せる場合もありますけれども、アメリカの大学なんかでは、その教育格差は努力だけでは追い返せない高い壁となっている場合が多いというんですね。これもある程度日本でも言えるのかも知れません。

　マイケルサンデルは、そういうのを「メリトクラシー」と呼びます。メリトというのは能力という意味でして、クラシーというのは独裁ですね。能力の独裁、まぁ能力主義のことなんですけれども、それでこの本の本語版のサブタイトルは、「能力主義は正義か？」という問いかけなんですね。
　日本でもそういう傾向があるかもしれませんが、勝ち組負け組と言われて久しくなりましたが、このごろますます、経済的に成功した人たちの言うことが正義のように言われるようになりました。たとえその人が社会的に問題とされる行為をしていたとしても、何かその人の人生哲学を聞いて学んで真似をしようとかいうふうに、一種の道徳や倫理の基準にされているようなところがありますね。成功者ならある程度何をやっても何を言っても正義とされているような風潮さえある。
　実力主義、能力主義っていうのは、一見、平等のように見えます。努力した者が勝つ、努力しなかった者は負ける、皆平等でしょ、というふうに。しかし実力ということを一枚かませただけで、実は全く平等ではなくて、不平等と格差と分断をどんどん広げるんですね。

　エッセンシャルワーカーのことを考えてみましょう。社会になくてはならない仕事をする人々ですね。しかしよく知られているように、手取り10何万円だったり、もしかしたら手取り10万円いかなかったりするかもしれないですよね。ところが、その100倍1000倍収入がある人が、「その人たちが貧しいのは努力しなかったからだ。貧しいのは自己責任」などと言ったりする。実はそのエッセンシャルワーカーたちに見えないところで暮らしや自分たちの収入を支えてもらっているのに気付かずに、です。
　まぁその100倍1000倍の収入がある人が、他の人の100倍1000倍努力して働いているかと言ったらそんなことは決してなくて、かえって今までどんなに色んな人に支えられて色んな生まれた時代とか幸運ー私たちの言い方で言えば神からの贈り物、賜物でしょうかーに恵まれて今のその地位になっているか、ということに気付いていなかったりするわけですね。松下幸之助さんなんかは、「成功は自分の努力ではなく、運のおかげである」って言っていますね。色んな人に支えられて今の自分があるんだ、って言っているんですね。(しかも普通に考えれば不幸ということまで「運が良かった」と言って感謝しているんですね)。
　まぁこのメリトクラシーがアメリカで進んだ結果、どんどん格差が広がって、そして持てる者は、自らのいわば幸運に感謝することを忘れ、ますます自分の努力で財をなしたのだと言い張って傲慢になり、持たざる者はますます自信喪失になっていく。しかし持てる者が幸せになっているかというと必ずしもそうでなくて、今はミリオネアではなくて、ビリオネアと言われる超大金持ちが、実は孤独を深めている、って言うんですね。だからメリトクラシーは誰も幸せにしていないんですね。

　だからマイケル・サンデルは、与えられた天賦の才能とか能力とか財などを、自分の努力で得た自分のものだから自分のために使う、と言わずに、共同体のために使うべきだと言うんですね。共に生きる仲間のためにですね。これは社会のためにでもありますね。たとえば、生まれつき他の人より力が強く生まれた人は仲間のために、あるいは社会のためにそれを使う。財でも能力でも実力でも他のあらゆるものでも同じですね。

　ですからイエス様の今日の、

だれでも持っている者は与えられてもっと豊かになり、持っていない者は持っている物までも取り上げられるのだ。

　というみことばは、イエス様が資本主義のことを言っているのだ取ったり、ましてや格差の拡大を肯定しておられるのだと取ってはいけません。私も昔、名著と呼ばれるマックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本を読みましたけれども、ずいぶん前のことだったので内容をだいぶ忘れましたが、もしかしたらこういった聖書のみことばが引用されていたのかもしれませんが覚えていません。でもともかくイエス様は資本主義の精神を言っておられるわけではないんですね。

　前置きがずいぶん長くなりましたが、今日神のことばとして共に聴きましたイエス様のたとえ話ですね。たとえ話のストーリー自体は非常にシンプルです。またクリスチャン生活が長いと、何度もお聞きになった話かもしれません。
　主人と三人のしもべが出てきます。この三人のしもべに、主人がそれぞれ5タラント、2タラント、1タラントを預けて、旅に出た。この1タラントというのはこの時代ではお金の単位、今の価値に直せばざっくり言えば6000万円です。5タラントだから3億円、ポンと預けた。2タラントでも1億2000万円、これもポンと預けた。もう一人のしもべにも1タラント、6000万円、これでも大金です。ポンと預けた。それで旅に出た。
　5タラントのしもべは商売をしてもう5タラントもうけて、合わせて10タラントになって、「良くやった。良い忠実なしもべだ」と主人にほめられた。
　2タラントのしもべも商売をしてもう2タラントもうけて、合わせて4タラントになった。これも全く同じことばで主人にほめられた。
　ところが1タラントのしもべは、怖くなって、1タラントを土に埋めて隠しておいた。一応まじめだったんでしょう。横領することもなく、主人が帰ってきた時に、その1タラントをそっくりそのまま返した。一切主人に損害をかけていません。
　けれども、この1タラントのしもべは、悪い怠け者のしもべだ、それなら銀行に預けておくべきだった、そうしたら利子がついたのに。この者の1タラントを取り上げて、10タラントを持っている者にやりなさい、と言われて、外の暗闇に放り出されて、そこで泣いて歯ぎしりするのだ、と言われてしまう、ということですね。歯ぎしりっていうのは「くやしい」っていうのを表しているんでしょうかね？この外の暗闇、というのは、聖書を解説する注解書などでは、だいたい、地獄を表す、などと説明されています。

　さあ皆さん、ここで質問を投げかけますけれども、このたとえ話好きですか？
　これはですね、好きな人少ないんじゃないかな、と私は思うんですね。で、私もですね、嫌な思い出があって、詳細は省きますけれども、あることがあって「1タラントの悪い怠け者のしもべ」扱いされて「外の暗闇に追い出されるって書いちゃうよね？」と言われた時に、私は地獄に行ってしまうのか？と恐怖と戦慄を覚えて、それ以来、このたとえ話を読むたびに嫌な気持ちがみことばにくっついて思い出されるようになったのです。

　ある牧師がこう言っているんですね。もちろんそういうあり方を批判的にです。

　このたとえ話は、牧師が教会員にハッパをかけるために使われてきた。もっと奉仕せよ、もっと献金をせよ、もっと伝道せよ、さもなくば外の暗闇に放り出されるぞ、とまでは言わなくても、それをちらつかせたりほのめかしたりして教会員を動かそうということがあるらしいんです。
　皆さんが過去に教会でこういう論法の被害者になったことがもしあったとしたら悲しいことですし、もしそうだったらその心の傷がいえるようにお祈りもさせていただきますけれども、こうなりますと、喜ばしい福音というよりも、ちゃんとやれているか努力しているかというような自己批判のマゾヒズムになる、と言っているんですね。それでその先生は、別の牧師のことばを引用して、このイエス様のたとえ話は、「信者をそのような恐怖に陥れるものではないことは確かである！」とおっしゃっているんですね。

　でこのたとえ話は、思い出していただきたいんですけれども、マタイ第25章は、終末、世の終わりを語る文脈の中で、イエス様が語られた3つの、肉体をもったイエス様がこの地上にご不在の時に、再びイエス様が来てくださることをつまり再臨を待つ、キリスト者の姿を描いたたとえ話3部作のうちの、真ん中の2つ目なんですね。先週がその一つめ、ともしびをもっていた10人のおとめのたとえなわけですね。
　
　ですからこのたとえも、再臨の時が来たらタラントの決算の時が来る、その時までに怠けていたら、取り残されるぞ、などと、再臨で脅す論法も、やはり間違いなのだと思います。

　なぜなら、イエス様のどんなことば、どんなたとえ話も、福音として聞かれるべきものだからなのです。福音と言うのは喜ばしい知らせのことです。喜びの響きが！この聖書という生きた書物の中に、まさに脈打っているんです。イエス様は、そういうものとしてたとえ話をお語りになっている！

　他に一番よくある解釈としては、タラントというのは、テレビタレントの語源になっていますから、神さまから与えられた才能とか、そういうものと解釈する。その解釈は合っているでしょうけれども、それを人生の中で他者のために生かして輝いて生きてまいりましょう、というのは、聞き手への励ましとしては、とっても素晴らしいんですけれども、しかし何かが少し違うような気もいたします。

　で私は、過去にそういうことがあってから、このみことばの意味、このたとえ話の意味を10数年真剣にずっと問い続けました。そしてこういうふうに考えを進めていったんです。
　私は一所懸命努力はしていたわけですね。だから思いました。もし1タラントのしもべが、努力しても1.1タラントにしかならなかったとしたら、どうなるか。主人であるイエス様に厳しくさばかれたでしょうか？いいえ、「よくやった、良い忠実なしもべだ」と言ってくださるんです。
　ではもし一所懸命努力して、増えもせず、減りもせず、1タラントのままだったら、どうでしょうか。それでもやっぱり主人は、「よくやった、良い忠実なしもべだ」と言ってくださるでしょう。
　さらにもし、商売をして、一所懸命がんばった、それでも、損失を出して、0.5タラントになってしまうということもありえるでしょう。この時、やはり主人であるイエス様は、同じようにほめてくださるんです。
　さらには、さらにもし、商売をして、一所懸命がんばった、それでも、損失を出して0タラントになった。これでもイエス様は、「よくやった、良い忠実なしもべだ」と言ってくださるんです。
　いや努力したとかこういった言い方も、少し間違っているんかもしれないんですね。なぜなら、救いは行ないによらない。ただ神の恵みのみによって。だから、しもべが努力したかどうかすら問題にならない。これは天の御国のたとえ話なんだとイエス様は前置きなさいました。天の国、神の国の話なんです。ですから決して、能力主義や成果主義の論理とは決して混同してはならないんです。いやそう言うよりも、あまりにも違うのでそもそも混じり得ない話なんです。神の国と人間の国は。
　イエス様の天の御国のたとえ話は、いつも奇妙なはずです。人間の世界の常識から考えたら、ぶったまげるようなおかしなたとえ話で私たちの心の中にある何かをかき乱すんです。たとえばあのぶどう園の労働者の1デナリの話を思い出してください。朝も6時から早ようから働いた人と、午後5時から、たった1時間ぶどう園に来て、片付けも手伝うたか手伝うてないかのぐらい人が、両方同じ1デナリ、つまり1万円の日当をもらった。ええっ！この世では考えられないことです。これが天の国、神の国だっていうんです。ここでもぶどう園の主人は、あまりにも気前が良すぎて、働きの成果とか努力とか、ましてや自分の儲けとか、そういうものには一切興味のない主人だったんです。興味があったのは、人です。午後の5時まで誰も雇ってくれなくて、―それは見るからに体が弱そうだったからかもしれない。生まれつき障害者だったからかもしれない―広場で待ちぼうけだった人、誰も必要としてくれない。ああ日当がなければ次の日も生きられるか分からん、まさにそういうメリトクラシーの犠牲となった人々にも、同じだけあげたいのだ！そういうあまりにも気前のいいお方の話。それが私たちの信じる神のお姿ではありませんか。

　それでは、私たち人間の努力ですらないということは、主人の意志に忠実だったかどうか、ということになるんでしょうか？増やしたか減らしたかも、努力したかどうかも関係ない。ならば主人の意志に忠実に従ったかどうか、もしくは主人を信じていたかどうか、これが、外の暗闇に放り出されるかどうかを分ける分かれ目である、というふうに取るのもまた間違いなのではないでしょうか。私たちは、イエス様のたとえ話を聞く時にも、どこからのラインがマルで、どこからのラインがバツ、という基準として受け取ってしまうんですね。マルバツの基準としてたとえ話を聞くのは、実は別の律法主義を作ってしまうんですね。イエス様に忠実でなかった者、またはイエス様に信頼しなかった者は地獄行きだぞ、といったぐあいにもなりかねないわけですね。
　
　そもそもこのたとえ話は、主人がひどいお方であるとは、23節までは、全く感じられません。ひどいお方っていうのは1タラント預けられたしもべの台詞なんですね。

　新約聖書　マタイの福音書第25章24～25節

24一タラント預かっていた者も進み出て言った。『ご主人様。あなた様は蒔かなかったところから刈り取り、散らさなかったところからかき集める、厳しい方だと分かっていました。�25それで私は怖くなり、出て行って、あなた様の一タラントを地の中に隠しておきました。ご覧ください、これがあなた様の物です。』

　なんという神さまイメージでしょうか？ちょっとでも怠けたら、ちょっとでも機嫌を損ねたら何をするか分からないひどく厳しい怒りっぽい人のように思っているのです。
　こういうふうなひどい方だと神さまのことを思っている人って誰なんでしょうか？パリサイ人律法学者たち祭司長たち民の長老たちではないでしょうか？神さまを厳しいだけの方だと思っていたから、モーセの律法を完璧に守ろうとし、それだけでは飽き足らず、モーセの律法の周りに垣をはりめぐらせました。念には念を入れて、神さまの怒りにちょっとでも触れないように、安息日には働いてはいけないという律法があるから、礼拝するために会堂に行くのは神さまはお怒りにならないだろう、でも会堂に行く以上の900メートル以上歩いたら、神さまは労働をしたとみなして、怒ってくるかもしれないから、念のためそういうことにしておいて、子孫に伝えておこう、そうやって、神との愛の関係から心は遠く遠く離れて行きました。これが土に埋めるということだったかもしれません。タラントとは、才能、賜物のほかに、教会では古来よりある解釈があります。それは神のことば、あるいは愛、あるいは信頼、ということかもしれません。イエス様はそういうパリサイ人たちへの嘆きと悲しみをこのたとえ話に込められたのかもしれませんし、イエス様は実はいつも、そのパリサイ人や律法学者たちに厳しくは批判なさるけれども、その罪に気づいて、神の愛のふところに立ち帰ってほしいといつも呼んでおられたことが、よくよく聖書を読めば分かるわけですね。

　しかもある牧師が言っています。もし、このたとえ話の、続きを、イエス様のお心を汲んで語ることがゆるされるならばこういった話になるだろうと言うのです。

　この外に追い出されたしもべは、あれはひどい主人だったと言って、他の国に旅立ち、別の主人を見つけました。その人のもとで働いたのですが、1タラント6000万円なんていう金額は、決して任せてくれはしません。さんざん労働力としてこき使われるばかりではなく、さらに命じられたのは、元手も出さずに、商売をして、2タラント儲けなさい、と言うんですね。もう日々の労働で疲れて満足に食事も与えられなくて飢えて死にそうです。そこでしもべはわれに返ってこう言いました。そうだ、あの主人は私に1タラントも預けていてくれたではないか。あの主人のもとに帰ってこう言おう。「私は天に対しても、あなたに対しても罪を犯しました。また1タラント預けてくださいとは申しません。どうぞ雇い人の一人にしてください。」そう口に出して練習しながら帰ってきたしもべを、もとの主人は走り寄って抱きしめて口づけをし、この者が帰ってきたと言って、いなくなっていた者が帰ってきたと言って、5タラントのしもべと2タラントのしもべと一緒に、食べて飲んで祝おうではないかって、祝宴を開いてくださいました。
　続きはこういう話になるだろうと思うのは、読み込みすぎでしょうか？いいえ、そうではないと思うんです。なぜならいつも、父なる神は、そして子なる神イエス様は、そして聖霊は、三位一体の神は、と言ってもいいと思いますけれども、いつも、関係を断絶して生きる罪びとが帰って来るのを、限りない愛のふところを開いて待っていてくださる方だからです。それは、イエス様の数々の他のたとえ話からも明らかです。この一つだけのたとえ話からだけではなくて、聖書全体から、イエス様の意図しておられることにできるだけ迫って解釈することがとても大事なことだと思います。

　さて、5タラントのしもべも、2タラントのしもべも、1タラントのしもべも、どれだけ神さまから大事にされているかが分かるのは、「わずかなものに忠実であった」という主人のことばなんです。ここはおかしいって思う人が多いんですね。だって5タラント預かってもう5タラント儲けた者が、「わずかなものに忠実だった」ってほめられているんです。3億円がいったいわずかなものなんでしょうか？これは、もう一つのタラントが出て来るたとえ話を見れば分かるんです。
　
　タラント、という単位は、聞いたことがおありだろうと思います。もう一つのイエス様のたとえ話で出て来ます。それは、1万タラントの莫大な借金をゆるしてもらった王のしもべのたとえ話です。このしもべはどういうわけだか1万タラントつまり6000億円の借金を王様に対してしていた。そこで清算の時、「どうぞご猶予ください、かならず返しますから」と言った時に、王は腹わた痛めるほどにかわいそうに思って、その6000億円の借金を全部免除してやった。だからこの王は、3億円でさえもわずかなもの、って思っているんです。一人の失われた人を追い求めて探し求めて、「お前がわたしのそばにいてくれるためなら、6000億円だって惜しくないさ」って、そうあなたに言ってくださっているんですね。それが神さまのお姿なんです。
　じゃあ莫大な金額は、いったいどこから来たんでしょうか。何かの代償がなければ、その金額は作れません。その代償、代価ってどこから来たでしょうか。あの、ゴルゴタの丘で十字架でおかかりになった、主イエス・キリストの流された尊い血の代価なんです。この神の子のいのちという莫大な犠牲が払われて、あなたのまことのいのちが贖われた。買い戻された。だから私たちは、すべての罪がゆるされた！そして身も魂も、この主人のものとして、この方の愛のふところの中を生きる。5タラントのしもべにも、2タラントのしもべにも、そして立ち帰った1タラントのしもべにも言われています。「何億円よりも6000億円よりも、わたしの宝物であるお前がそばにいてくれて嬉しいんだ。」と。そして、「主人の喜びを共に喜んでくれ」と。こう訳されていますけれども、直訳では「主人の喜びの中に入れ」っていうんです。天の御国の王子の結婚の披露宴、婚礼の宴席の喜びの食卓に、さあ連なりなさい。食べて飲んで祝おうではないか。地上においても、その天の御国の祝宴の喜びを持って生きて行きなさい。これが、預かったタラントを生かすことであり、花婿なるキリストの到来を待ち望むキリスト者の生き方なのです。お祈りをいたします。

恵みとあわれみに富みたもう、私たちの主イエス・キリストの父なる御神、
私たちは、生まれながらに律法主義的で、あなたの御ひとり子、主イエスのたとえ話でさえも、暗闇に放り出されるか出されないかを分ける基準はどこだろうかと設定したり、その基準のモノサシで自分や人をさばいたりするような愚かなものでした。しかしあなた様は今日、その慈しみ深いみ声をはっきりと聴かせてくださいまして、みことばを打ち開いてくださいました。地上においても、天の御国の祝宴の喜びの中を、歩ませ続けてくださいますように。マラナタ、主よ、来りませ。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。

#自己責任 #マイケルサンデル #エッセンシャルワーカー #実力も運のうち