自分以外になりたかった
photo by 深月
(https://twitter.com/DeepMoon_0505)
比較的多くの人は、
役者は自分以外の様々な人になる
そんな仕事だと
思っているのではないだろうか。
恐らく私もそうだった。
そう思ったから芝居をやりたかった。
他人の顔色を伺って生きてきた。
何を求められているかを感じて、
その通りの返事をしないといけないと
そう思って生きていた。
だから自分の本当の意見はない。
周りがそう言ってほしいと
周りがそう思ってほしいと
そう感じた事が自分の意見だった。
だから自由に生きれる
自分ではない何かに
何でも良かったから
非現実で自分以外の何かになりたかった。
芝居をやればやるほど
嫌というほど
自分を出していく。
自分の嫌なところも全部
向き合って引っ張り出さなければいけない。
自分以外の何かになるなんて
絶対に出来ない。
自分の中の自分という自分を
全部出さないといけない。
自分以外の人物になろうだなんて
そんなの夢物語だ。
テレビで観る様々な職業や
様々な環境に身を置く役に
憧れを抱く人も少なくはないだろう。
そこで、その職業に夢を持った人も
憧れた人もいるだろう。
私は様々な職業や環境という
非現実を演じられる事に興味を持ったのだ。
しかし、始めてみれば
自分の人生における感情しか
感情表現はできないし、
自分という存在に価値を持たないと
その役としてその環境で
自分として生きる事が出来ない。
好きではない自分としてしか
どうしたって存在できない。
どれだけブラウン管の中にいる
ヒーローに憧れても
自分はヒーローではないと突き付けられるのだ。
自分にはあの日に憧れた
ブラウン管の中から
多くの人に夢を与える
そんなヒーローになる才能はなかった。
普通に生きて
家族を
周りの人を
幸せにする
世間一般でいう普通に
学生から就職を選んで
そんな普通の家族のヒーローになる
そんな才能もないのかもしれない。
それならせめて
今、周りにいる人に
今出来る事だけで良いから
精一杯、感謝とか好意とか
沢山のありがとうを届けたい。
だから自分と向き合って
自分に自分で好意を向けたい。
ヒーローに助けられて
ありがとうと伝える
そんな脇役で構わない。
自分の周りにいる沢山のヒーローに
沢山の才能を持った人に
感謝を伝える人でいたい。
沢山は難しいかもしれない。
少しだけ、ほんの少しだけ
自分を好きになる魔法がほしい。
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