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「またやって!」と言われる朝学習~写真をじっくり見てみよう~

2019年夏、アフリカ・ザンビアを訪問した横田先生。
見聞きしたことを、小学5年生の子供たちに還元した方法が、ザンビアに行っていない先生方にも応用できる「今日の一枚」という朝学習でした。

見る目を養う朝学習

こんな手順です。

1.特に説明をせずにザンビアで撮ってきた写真の1枚を見せる!

あ

2.問う「よーく見て。気づいたこと、思ったことは?」

横田先生(以下、先生):今日はこの写真。よーく見て、気づいたこととか、考えたこととか自由に話していきましょう。

児童A:朝撮った写真かな? 窓に映った光が明るいし、髪型も寝癖みたいになっているから。
児童B:僕もそう思う。 きっと朝、家の前で撮った写真だよ。 自転車もあるし、扉や窓も家の形みたい。
児童C:髪型は寝癖じゃなくて、そういう髪質なんだと思うよ。黒人の人って髪が固そうだし…。
先生:Dさん、悩んでるみたいだけど、何か気づいたこととかある?
児童D:ここは家じゃなくて学校じゃないかなって思って。

3.さらに問う!!

先生:どこからそう思ったの?

児童D:窓や扉の奥に文字や掲示物みたいなのが見えるし、扉の裏のは黒板じゃないかなって。
先生:ここ と ここのことかな?

図149


児童D:そう! きっと、学校の教室の前で写真を撮ったんだと思う。
児童E:私もそう思った! あと、制服みたいだけど、一人ずつちょっと違くない? 首のところとか。
児童F:ほんとだ! 袖もちょっと違う。
先生:二人が言っているのはこことここの部分かな。

図151

児童G:お下がりとか?手作りなのかも。
児童H:横田先生がザンビアも首都のルサカにはショッピングモールがあるって言ってたけど、田舎の方に行くとお店がないんじゃない? 日本もそうじゃん。 だから、ここはルサカじゃないんだよ。
先生:Hさんは制服から、この場所はルサカじゃないって考えたんだ? なるほど。もっと話したかったけど、今日はもう時間だね。また明日の写真もお楽しみに!

ちなみに、この写真・・・
○撮った日時
 2019年7月30日(火)14:53
撮った場所
 モンゼ・タウン・デイ中等学校 モンゼは首都ルサカから200km近く離れている場所。この学校は、メインの通りからさほど離れておらず街中にある。
○その他・・・
 この中等学校は電気も通っている地区にあるが、それでも教科書は児童生徒に行き渡っていないとのこと。同じ敷地内に小学校もある。写真の子どもたちは小学生。子どもたちにも英語が割と通じる。
 制服は既成のものを買うのではなく、デザインはある程度決まっていて、テーラーさんに仕立ててもらうらしい。

こんな風にして、ザンビアで撮影した様々な写真を朝の時間でとりあげていくと、初めは写真を見たままに「子供がいる」「バナナだ」と単純に答えていた子ども達が、どんどん細かいところまで気づくようになっていったといいます。

さらに「この間みた地方の写真は、みな民族衣装みたいなの来てたけど、都心の写真はスーツとか、私たちの洋服と同じだ!」と、前に見た写真の情報と紐づけて考えられるようになったそう。

ザンビアでの横田先生の見聞は、2学期こうして子どもに還元していったそう。3学期の朝学習は「算数」だったのだが、子供たちからは「またザンビア写真を見せて!」「教室に掲示して!」とリクエストが来たとか。

私自身が教師だった時、生徒だった時、どちらも「またやって!」のリクエストがあるのは、ワクワク面白い時だった。テレビにスマホに情報洪水時代の子供たちが、遠く離れたザンビアにワクワクし続けるなんて!写真選びの工夫は?

写真選びの工夫は?

写真ならなんでもいい、ってわけじゃないようだ。
横田先生いわく、子供たちはどうしても「違い」に目が行きがち。異国なんだからそりゃ違うんだけれど、先生としては地球で共に生きていくパートナーとして、「同じ・似ている」にも目を向けほしい…。そこで、写真を選ぶときには、共通点がみつけられそうな写真や、ザンビアと日本の繋がりが感じられる写真を探したそう。

また、ザンビアについて一つのイメージにとらわれぬよう、都心と村落、豊かさと貧しさ、など様々な面が感じ取られる写真を選んだそう。

写真だけでなく、時には青年海外協力隊など、ザンビアで活動している日本人のインタビューを流したり。

•••と書くと大変にみえるかもしれないけれど、先生いわく「授業実践ほどの準備もいりませんし、ちょっとの時間でできます。子供も私も大好きな取り組みとなりました」

真似したい授業ポイント!

1.先生の体験シェア、でも一番喋ってるのは生徒
ザンビア体験談!だと主役は先生。
「これなんだと思う?」とザンビアの写真を見せれば、子供たちが観察力、推察力を働かせて喋りだし、生徒が主役に。先生の説明は、生徒の発見や疑問を解消したりふくらませる添え物になる!

2.写真から何を読み取るか、答えは一つじゃない! 地元や日本バージョンでも!
子供たちが想定外の発見をしてくるそうで、だったらザンビアや海外ではなく、地元や日本の見直し、発見・再発見の機会になるのでは!
同じ場所を、平成、昭和、明治…みたいに時代をさかのぼってみていっても面白そう。修学旅行先 とか生徒にかかわってくる場所・こと・ものの写真を予習、あるいは復習として見せるのも面白そう!

3.授業の導入で「単元の写真」提示
教科の授業導入にも有効では?
元社会科教師の私としては、地理・歴史・公民どれもいける! 国会の写真見せて「何してると思う?」「年齢・性別は?」「表情は?」とかさんざん問うてから、「国会とは」の授業やって「この写真の人たちは私たち国民の代表としてここに立ち、国をどう動かすか決めてます。いろいろ思うところはあるかもですが、皆さん18歳になったら、誰を代表にするか選ぶ権利をえられますから!」ってやりたい! とか妄想が止まらない…。

数学なら、グーグルマップの写真を見せて「これ何?」「使ったことある?」とかさんざん聞いてから、「今から勉強するサイン・コサイン・タンジェントをおさえれば、グーグルマップの計算機能を一つ身に着けることになるんだよ!」とか。だめ!?

物理だったら…漢文だったら…家庭科だったら…って考え始めると楽しくなってとまらない!

横田先生、取り組みを教えてくださり、ありがとうございました!!

【参考】どうしてザンビアに行ったのか(JICA教師海外研修)

横田先生がザンビアに行ったのは、JICAの教師海外研修を通じて。

全国の先生方が応募できます。2020年度はコロナの影響もあり開催されないようですが、詳しくはこちら
横田先生が参加された2019年度・JICA東京での研修内容と、小・中・高・特別支援の先生方の授業レポートはこちら

【参考】ヒントになる本「教えない授業」。そして。

昨春、こんな本を読んだ。

こちらは「絵画」を「対話型鑑賞」していく取り組みが書かれていて、こんな授業やりたいなぁ•••と思ってていたら、横田先生に出会った。その取り組みに感激のあまり、記事にさせて欲しい、と伝えたらこう言われた。

「WEB記事にしていただけるような取り組みなのか…正直自信はありませんが、少しでもお力になれれば嬉しいです!」

・・・いっつもこうだ。

いいなって思う先生たちの多くは「迷い」と「希望」が見え隠れしてる。

子供たちに真剣だからこその迷いと、だからこそ何かいいことに繋がれば•••という希望。希望というより、祈りに似た想いだろうか。

***********

横田先生のこの写真活用の取り組みは、「ザンビアの写真」ではなくても多くの先生方のヒントになるのでは、と思っています。
生の教室でやることが望ましいけれど、オンライン授業の一歩にもならないかな?(「写真を見て気づいたことを、チャットで書いてみよう!」とか)

今、厳しい状況下、先生方から多くの「迷い」、そしてすこーーーしの「希望」の声を耳にする。どれを想っても胸がぎゅっとなる。

【おまけ】ザンビアの写真 もう一つ、どうぞ!

こちらの写真と子どもとのやりとりも教えて頂きました。

い

先生:今日はこの写真。よーく見て、気づいたこととか、考えたこととか自由に話していきましょう。

児童A
:トマトかな? めっちゃきれいに並んでる。
児童B:ザンビアの人は几帳面なのかな。こんなにきれいに積み上げるなんて、日本では見たことないよ。
先生:Bさんは並べ方からザンビアの人たちの性格について考えてくれたんだね。他にはどうかな?
児童C:几帳面というよりは、手先が器用なんじゃないかな。
先生:どこからそう思ったの?
児童C:あんなにきれいに積み上げるには、手先が器用じゃないと無理! 手前のじゃがいもみたいなのは、ジェンガ並みに難しそうだし…。
先生:なるほど。Cさんが言ってくれたじゃがいもはここの部分だね。

図153

児童D:ザンビアは水不足で悩んでるって聞いたけど、こんなに鮮やかな野菜が並んでいてすごいな。
児童E:トマトは僕たち2年生でも育てたから育てやすいんじゃないかな。
児童F:ジャガイモも水やりとか少なくていいって聞いたことあるよ。
先生:ザンビアの人の性格や、野菜の育てやすさについて意見を言ってくれました。他にも何か気づいたことはあるかな?
児童G:女の人ばかりだなって。
先生:どこから女の人ばかりだと思ったの?
児童G:ザンビアでは女の人が腰にチテンゲを巻いているでしょ?皆ずっと座って疲れたって表情しているし。男の人は手伝わないのかな。
(※チテンゲとはザンビアの腰巻き布(スカート)のこと。これまでの授業や朝学習から子供がこの単語を覚えているのです)
児童H:確かに! 男の人は力仕事とか? 昔の日本みたいな感じなんじゃない?
先生:Hさん、昔の日本と繋げてくれたね。
残念ながら、今日はここまで。みんな、よく見てるね。

○撮った日時
 2019年8月3日(火)15:01
○撮った場所
 チョングェから首都ルサカへの帰り道(ルサカ→チョングェは約40km、1.5時間程度)
○その他
 コンクリート舗装の道路は主要道路くらいで、その他はほとんど赤土の凸凹道。この写真は、主要道路沿いでお店をやっている女性たち。ザンビアでは、露店は女性が働いている姿をよく見た。時には、乳児を抱えたお母さんが授乳しながら露天に立つ姿も。露天では、トマト(1個10円)、玉ねぎ(2個10円)が売られているのをよく見た。トマトを使った料理もよく出る。

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