北九州のIT未来を切り拓く:IBM九州DXセンターの挑戦と地域の力
IBM九州DXセンターから、嬉しいニュースが飛び込んできた。AI技術を駆使したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービス「AI First BPOサービス」の立ち上げに伴う新規採用で、子育て中の親や、仕事復帰を考える母親、新しいキャリアに挑戦したい男性の応募が急増しているという。数字は公表できないが女性の採用が増えているそうだ。多様なライフステージの方々がこのセンターで新しい働き方を求めている。
なぜIBM九州DXセンターの「AI First BPOサービス」に伴い、多様なライフステージの応募者が集まるのか?その背景には、自治体との連携、地域の力、そしてIBMの寛容な雇用方針が大きく関係している。これらの特徴を、担当者であるIBM九州DXセンター BPO担当金子未央氏と北九州市役所から出向している福田泰士氏にお話を伺い、4つの視点から紹介していく。産官学連携に取り組むと多様な働き手が生まれること、また「AI First BPOサービス」は最先端のAI/ロボットを事務作業から学べる新たなスキルを身につけたい方にとっての魅力的な業務であることが、IBM九州DXセンターの事例から見えてくる。
1. 北九州の産官学連携:地域全体で新産業を創出
北九州市は、IBMとの連携を通じて、自治体、企業、教育機関が一体となり地域産業の強化を進めている。特にIBM九州DXセンターが北九州市役所と密接に協力し、「産官学連携」を強化している点が特徴的だ。実際、IBMと地域DXセンターを開設した自治体の連携協定は北九州市が最初であり、IBMは自治体との人事交流(相互出向)により地域の雇用促進や産業活性化を支援している。この協力関係により、地元の雇用機会が拡大し、地域が新たな産業のハブとして成長している。
北九州は、単なる労働力の供給地ではなく、地域全体で産業イノベーションを支えるハブとしてその地位を確立している。こうした自治体との密接な連携が、地域の産業発展を加速させ、北九州が日本のIT産業の中心地へと成長する基盤を作っている。
2. BPOの柔軟性が生む多様な働き手の可能性
IBM九州DXセンターの「AI First BPOサービス」は、単なる事務作業の委託を超え、AIやロボットと共に業務改善を進める能力を持った人材を育成している。その結果、子育て中の母親やキャリアチェンジを考える人々、新しいスキルを身に付けたい男性など、多様な層からの応募が集まっている。特に、子育てが一段落した母親にとって、AIやIT技術を活用した柔軟な事務職は、キャリアを再開し、新たな挑戦を始める大きなきっかけとなっている。AI時代に対応できる人材を育て、BPO業務とIT開発の連携を強化することで、IBM九州DXセンターは地域の働き手に新たな成長機会を提供している。
3. 教育機関との連携:次世代のIT人材育成
北九州市は、教育機関との連携によるIT人材の育成にも力を入れている。IBM九州DXセンターは、北九州市立高校や九州女子大学と協力し、ワークショップやプログラミング体験講座を実施、ITに対する意識向上を図っている。この取り組みは地域全体でのIT教育推進を目指し、特に若者のデジタルスキル育成を加速している。
地域の教育機関と企業が連携して新しい技術を教育現場に導入することは、北九州全体の強みであり、地域のIT産業を支える次世代の人材を育てる重要な取り組みだ。実際にそのプログラムを通じてプログラミングに興味を持った女子大生がIBM九州DXセンターに入社する日も近いと聞く。
4. 文系人材も活躍できる:先入観を打破する採用戦略
IBMは、近年の採用方針として学歴や専攻にとらわれない「多様性重視」の採用を強化しており、文系理系問わず新たな才能を積極的に採用している。この方針は北九州においても大きな影響を与えており、これまで「エンジニアは理系」が中心という先入観があった北九州に、新しい風を吹き込んでいる。文系人材にもエンジニアとしての道が開かれることで、女性やキャリアチェンジを希望する人々に新たなチャンスが提供され、地域の多様な人材が活躍する場が広がっているのだ。
北九州の未来を支える人的資本経営とDX
IBM九州DXセンターの「AI First BPOサービス」は、多様なライフステージの人材を積極的に採用し、特に女性やキャリアチェンジ希望者、新卒の理系・文系を問わないエンジニアの雇用を促進している。IBMのIBVレポートで示された人的資本経営の視点から見ると、単なる「頭数」ではなく、各個人の能力を最大限に引き出すための投資がこの取り組みの核となっている。
IBM九州DXセンターでは、AIやロボット技術を取り入れた業務設計を進め、地元の多様な人材が先端技術を駆使して働く機会を提供している。また、学習と成長の機会を提供し、若者や女性がITエンジニアとしてのキャリアパスを描くことができる環境を整えている。
IBM九州DXセンターが進める取り組みは、北九州だけでなく、日本全体のに広まることにより働き方への固定観念を払拭していけるのかもしれない。私自身、文系大学出身でファーストキャリアとしてIBMのエンジニアになった経験があり、エンジニアは理系という固定観念があることにハッとさせられた取材だった。IBMの採用には、そうした固定観念を打ち破る多様性があると信じている。たとえば「子育て中の母親」という表現は現実を反映しているが、今後は「子育て中の父親」の仕事復帰や、多様な生き方に対応した新しい働き方がますます重要になっていくだろう。IBM九州DXセンターは、AIやロボット技術を活用した持続可能な雇用モデルを提供し、さまざまなバックグラウンドを持つ人材の可能性を最大限に引き出している。このモデルは、地域経済の成長に寄与するだけでなく、固定観念にとらわれない新しい働き方の実現を推進していくことになることを期待する。