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Z世代と語る "しあわせ"の再定義: ブロックチェーン時代の価値観

「ブロックチェーンが普及した世界では、
あなたの ”しあわせ” の概念が180°変わるかもしれない」

日本IBM 山﨑朱夏:オニワラ座談会を見ての感想

2020年より日本IBMの「IBM Future Design Lab」のメンバーとと共に進めてきたYouTubeライブ「鬼が笑うほどの未来を語るオニワラ座談会」。有識者とIBM Thought Leadersがコロナ禍でも対話を重ねていくための場として機能していたのだが、この有識者座談会アーカイブを見た、日本IBM 入社3年目の山﨑朱夏(やまざき なつ)氏がユニークな視点を有していたので、一緒に内容を振り返った。


11本あるアーカイブのうち、Z世代の彼女が興味を持ってピックアップしてくれたのは「"しあわせ"の再定義: ブロックチェーン時代の価値観」だ。

"PEACE COIN(ピースコイン)"に取り組むA.D.SYSTEMS PTE.LTDの阿部嶺一氏、一般社団法人Fintech協会の河合祐子氏、コードフォージャパンの関治之氏、IBM Thought leaders藤森慶太氏、高木隆氏を迎えて行った座談会で、山﨑朱夏氏が関心を示したのは登壇者各位はいずれも最先端技術を用いながら各々のやり方で社会をよりよくしようと活動している、という点だ。

Z世代はどのように「ブロックチェーンとしあわせの価値基準」座談会を振り返ったのか?当記事では山﨑氏が興味を持ってくれたポイントをお届けする。彼女の視点をもとに、アーカイブを見るも良し、この記事から当座談会で語られたことを感じていただくも良し。様々な切り口で楽しんでもらいたい。

<以下、山﨑氏の感想を楽しんでもらいたい>

ブロックチェーンと"しあわせ"の連鎖

昨今、注目が高まっている”ブロックチェーン技術”。
この技術を使用すると、電子的な資産(暗号通貨やデジタルアートなど対象は様々)がどこで生み出され、誰の手を渡って来たのかという取引履歴を一本の鎖のように記録することができる。また、この履歴を取引の場の参加者が互いに共有し合うことで、電子的な資産が本物であることを保証する仕組みとなる。
 
ほんの十数年前に誕生したブロックチェーン技術とは対象的に、普遍的かつ抽象的な概念として存在し続けている”しあわせ”。
このブロックチェーンが、しあわせに変革をもたらす可能性を秘めていると聞くと驚く方も多いだろう。
 
HEART CATCH西村真里子氏が主催し、IBM Thought leadersと外部有識者が行ったオンライン座談会「オニワラ」の第11回では、ブロックチェーン技術を軸に、”しあわせ”の価値基準を再考している。オニワラ本編動画では、ブロックチェーンと社会のあり方について興味深いコメントをたくさん聞くことができるが、中でも筆者の印象に残った1つの事例に絞りご紹介したい。

「増え続けるお金!?新たな経済圏の創出」

“資本“と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろう。
教科書通りに考えれば、財務資本、人的資本、知的資本のような資本などではないか。

A.D.SYSTEMS PTE.LTDの阿部氏は、資本の中でも”ソーシャルキャピタル/社会的資本”に注目して活動している。
社会的なネットワークから生まれる信頼の価値が可視化されていないことに課題意識を持ち、社会の仕組みを変えようと動いているのだ。

阿部氏は、ソーシャルキャピタルをはじめとする”目に見えない価値”を可視化・価値化・流動化する仕組みとして、ブロックチェーンを活用した“PEACE COIN“という新しい通貨の仕組みを提案している。

PEACE COINの特徴

①豊かさ(≒しあわせ)が誰にも偏ることなく循環するよう促す仕組み

豊かさの循環を促す仕組みの一つとして”使うほど増えるお金”をイメージしてほしい。

例えば、AさんとBさんが各10万円(便宜的に単位は円とする)を持っていたと仮定する。ある日、AさんからBさんへ”感謝(=目に見えない価値)”として1万円を支払った場合、現在の世界ではAさんの所持金が9万円、Bさんは11万円となる。

ところが”使うほど増える”仕組みの場合、Aさんは支払額の10%分を増やすことができ、Aさんの所持金は9万1千円、Bさんは11万円となる。

前述の例では、増加率を支払額の10%としたが、実際には所持金に占める割合(=Aさんにとっての価値の大きさ)により、増加率を決定するロジックを検討しているそうだ。また、通貨を使わないと残高が減っていくことで、誰かの元に富がとどまることなく、市場の流通を促す仕組みを検討している。 

②持続可能な仕組み
①の仕組みに則った世界では、世界のお金が増え続けるのではないか?と疑問に思った方もいるかもしれない。
実際には、数名でお金を送り合い続けた場合には送金手数料の方が増加率を上回る仕組みを検討している。また、所持金の総量が多いほど送金による増加率が下がることから、自分が使う分だけのお金を所持し、必要な分だけが市場で循環されることを想定しているそうだ。
 
2022年11月時点で、PEACE COINは19か国・90のコミュニティで実際に導入・使用されている。その結果、PEACE COINを使用した経済圏においては、日本円と比較して流通速度が15.5倍に高まったという実績があると、阿部氏は語る。
 
また、ボランティアや感謝・相手を思いやる気持ち等、現在の世界では市場代替性が無きに等しい”目に見えない価値”について「アンペイ度」という独自基準を設定し分析したところ、PEACE COINを使用したトランザクションの87.4%が、今まで可視化されてこなかった価値にPEACE COINを付加したものだということがわかってきたそうだ。

IBMの貢献可視化通貨「Bluepoints(ブルーポイント)」 

PEACE COINに限らず、感謝の気持ちに価値を付与する独自のトークンや通貨のやり取りを社内に導入している企業は少なからず存在している。
例えば、筆者が所属するIBMでは、Bluepointsという社内の独自通貨が毎年全員に一定量付与される。
Bluepointsは自分から誰かに贈った段階で初めて使用可能となる通貨のため、感謝や激励の気持ちを示すデジタルメッセージカードと共に互いに通貨を贈り合う文化が醸成されている。
Bluepointsをきっかけに、社内でのコミュニティ活動や何気ない日々の努力を評価されたり、上司から直接感謝の言葉をもらえるとなかなかうれしいものだ。
 
一方で、PEACE COINのような仕組みを社会実装する場合、不正の防止や通貨としての価値の確立の観点から、最適な仕組みを構築することは容易ではない。
ただ、オニワラの動画アーカイブを見た後に、私も評価されるべきだが現在の資本の仕組みでは評価されない活動に意識的に目を向けてみると、世の中にはそういった活動が多く存在していると改めて感じる。
そして、そのような活動こそが互いに住みやすい世界を作ること、しあわせをより多くの人と分かち合うことに繋がっていくように思う。そのため、今の通貨とは全く違う仕組みで目に見えない活動が評価されるようになれば、よりそういった活動が促され、結果的に社会全体のしあわせの度合いが高まっていくのではないか。
 
PEACE COINは、ブロックチェーンを使用して世界に変革をもたらす一例に過ぎないかもしれない。私は、企業の最前線で活躍する人たちが、本気で今の社会に疑問を持ち、ブロックチェーンをきっかけに新しい”しあわせ”の概念に基づく世界を模索していることに衝撃を受けた。
また、当たり前のように扱ってきた通貨の概念それと結びつくしあわせの概念が、ブロックチェーンという技術の登場により革新を迎え社会がどのように変化するのかとても楽しみになった。
 
IT技術を扱う企業の一員として、改めて技術が秘めている可能性を最大限に理解し社会をよくするために有効活用すること、既存の概念に捉われずに革新の可能性を模索することを意識したい。

【オニワラアーカイブへの感想を寄せてくれた山﨑さん情報】
日本アイ・ビー・エム 山﨑朱夏(Natsu Yamazaki)
新卒でIBMに入社し戦略コンサルタントとして新規事業創出、業務改革等のプロジェクトに参画し日々奮闘している。
IBM ConsultingのBlanding活動の一環として社内外に情報を発信する取り組みに参加。

 


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