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ある意味メインだった宿の話 ―ハコボタ巡礼 5

⬇️前回


筋湯温泉

九重連山を西へ、北へ

我々が泊まる筋湯温泉は、竹田の北西約40kmの場所にある。九重連山の向こう側だ。
国道442号「日田往還」は、川端先生、文子、そして大神先生の下山ルートの逆走だ。急斜面でこそないが、明らかに「麓から山へ上っていくのだ」とわかる。
暫く走ると、道路標識や住所表示が久住町くじゅうまちに。周辺はキャンプ場が多く、花公園やワイナリーなどもある。九重連山で一番ベタな観光エリアのようだ。
まだ明るい時間帯、美しい青空と緑豊かな傾斜を堪能しながら車を走らせる。途中、和太鼓演奏グループTAOさんの名を冠した丘が出てきて二人で歓声を上げた。そういえば彼らの地元はこちらだ。

瀬の本高原で一瞬だけ熊本県(小国町)に入り、カーナビに辛子蓮根のイラストが表示されて笑っていると、景色が一変した。日田往還と別れ、九重を南北に貫く県道40号に入ったのだ。道に覆い被さるように生える樹々が頭上の青を隠し、明度が下がる。道がうねる。本格的な峠越えで、小排気量ATで走るのは正直キツい。「自分の車のどちらかなら…」と詮なきことを考えていると、道路脇の住所表示が九重町ここのえまち湯坪になり、スキー場の看板が現れた。峰咲さんの地元話は都市部や天草など海側が多く、「本当に雪が降らないエリア」とも言っていたので、ここが如何に高地かわかる。
道が下りになり、そろそろではと思っていると「筋湯温泉」の看板が現れた。如何にも山間の温泉郷といった風情の狭い道を徐行していくと、2日間お世話になる宿が。こぢんまりとした純和風旅館だ。

👘⚖️「わー!いい雰囲気ーーーー!!」
(外観撮り忘れた)

コンビニひとつない温泉郷で

フロントの電話で内線をかけると妙齢の女将が下階から上がってきて対応してくださった。エレベーターがないのは事前に把握していたが、玄関が最上階だったとは。そういえば駐車場の柵の向こうは崖だった。
部屋は一番下とのことで、幅の狭い階段をえっちらおっちらスーツケースを持って下る。

で、予約していた特別室がこれだ!
画角の問題で広く写っていないのが悔やまれる……!

お部屋は女二人が散らかし放題しても大丈夫な広さ
お茶菓子食べそびれた(持ち込みすぎだ)
畳敷きの小上がりが寝所。ゆっくり寝られる造りなのに連日深夜までトークが盛り上がるw

屋号は伏せますけど本当に本当に良いお宿でした。新しくないし設備もところどころ古いけれど、それを補ってあまりあるものがあった。

ご飯とお酒が美味しいー!

露天風呂でザッと汗を流す。筋湯の源泉は70℃以上あるらしく、それを冷ますなりうめるなりしないと入れない。この日は天気予報が外れて暑かったせいか湯の温度が高かった。湯かき棒で冷ましながら入る。泉質は単純温泉で透明、かすかに温泉らしい匂い。とろみが強くないわりにしっとりする。

浴衣に着替えて食事処へ。冷酒や、女将が漬けているという果実酒を飲みながらご飯をいただく。突き出しから〆の混ぜご飯まで一切ハズレなし。酒が進んでやばい。
メインの焼肉を焼きながら「白飯…っ、白飯が欲しい!」「明日は最初から焼肉と白飯を出してもらおう。あと、お塩で食べたい!」と、体格の割にエンゲル係数高めな組み合わせらしい発言が漏れる。

左奥のとうきびの豆腐が忘れられない旨さ
山女の塩焼きで酒が進む
大根葉としらすの混ぜご飯、これも美味しかった
桜酒は桜餅を葉ごと口に含んだような味わいだった
果実酒は驚くほどのラインナップがあり圧巻


そして武器を出した

やったぜ。

目の前で自作のR本を読まれるのは羞恥プレイかと思いきや、これが意外と平然としていた。

内湯に浸かりながらハコボタ鈍器本の制作打ち合わせ話をした。11月のイベントに合わせて第一章を本にするとして、pixivにある原稿だけで18万字、峰咲さんの元のお話と書き下ろしを入れたら20万字を悠に超える。

👘「マトモな値段では本にできない文字数ですね」
⚖️「やっぱ2冊かぁ〜!2冊1組で頒布とかわけわからん。でもねぇーこのお話でA5は嫌なんですよ」
👘「わかるわかる!文庫らしく表紙印刷なしでカバーにしません?」
⚖️「ひえぇ(だとしたら帯も欲しいぞ)」

深夜のハイカロリー爆弾菓子を食べながら、「りぜるちゃんは先生の見た景色をいつか見たい子だし、筋湯は先生も来てるから、新婚旅行の候補地になりそうですよね」などと呑気な話をして夜は更けていった。


翌日の天気は〝好転は絶望的だが、朝の大雨が抜けたらチャンスかも〟程度だった。
長者原登山口で引き留められたら大人しく引き下がろうということにした。

(次はいよいよ三俣山!続く⬇️)

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