見出し画像

ケネディ改革がホームレス創りだしたという虚構

モッシャーのコミュニティメンタルヘルスよりコピー
今流行のハウジングファーストを主張しているといっていいでしょう
ホームレスの出現は精神保健福祉医療で対応すべしということへの決定的な誤り
精神保健体制の宣伝は常にホームレス出していいのか、病床削減だけではホームレス生み出すというものでしたが

そもそも当たり前の住宅の権利住まいの権利保障がないところで精神保健体制でそのほころびを繕っていこうというのが間違い

様々な条件をつけて退院させない、GHの空き待ちで半年とか待たせて拘禁継続という人権侵害こそが問題では
有我 譲慶 (Joukei Ariga)さんが書き起こししてくださいました

『コミュニティメンタルヘルス』
コミュニティメンタルヘルス―新しい地域精神保健活動の理論と実際 – 1992/10
ロレン・R. モシャー , ロレンゾ・ブルチ(著)

lll 地域精神保健の進め方 第9章 精神医療にかかわる地域精神保健活動の展開

196〜200ページ

【ホームレスの問題】
 地域精神保健に関する本が、本当は精神保健の問題でないものに一章を費やすのは、時勢の現れである。私たちのように精神保健の仕事をしているものは、その仕事の社会的枠組みに非常に敏感である。ホームレスの問題を精神保健の責任にする意見は多い。精神保健の分野は、罪悪感と譲歩の組合わせで反応しているように承える。精神科医は、貧困者救護施設で時間を使うように徴集されている。精神科のレジデントは、貧困者救護施設で働くように訓練されている。これらの恐ろしい非人間的施設が、逆さまに最良のものとして抜きん出てきた。そして、すべての種類の専門家がその中で働いている。ホームレスの問題に関するすべての活動と美辞麗句は、少なくとも私たちには、次のような質問を避け、また答えなくてすむようにもくろまれているようにみえる。どうして一見文明化した、豊かな私たちの社会が、二○○万人から四○○万人のホームレスの人々がいることを許容するのか。その根本原因は何か。私たちは、共同社会の一員としてどのように彼らに答えるのか。欧州人たちはこの状況を不可解で信じられないと見ている。それに関して、たくさんの本(たとえばラム、1984が書かれてきたし、それに関する研究は歩を進めているが、根本的な政治社会的問題としては、まだ説明されないままである。見苦しくなく家賃の支払える住居が不足していることは、重要な住宅問題として政治的衆目を集めるまでにはまだ至っていない。

 何といわれようとも、精神疾患はホームレスの原因ではない。また、多くのホームレスの人々が「精神病者」であることも驚くべきことではない。おそらく、仕事がなく住む場所もないという二重のストレスと同様に気力をくじく体験があるであろう。多くの(最低賃金で)働いている人々はニューヨーク、ボストン、ワシントン、ロサンゼルスなどの費用のかさむ都会地域で住居を持つ余裕がない。実際、貧困者救護施設の居住者の約二〇%(推定の率は差異は大きいだろうが)が決まった仕事を持っている。たいていの生活保護受給者も、それらの地域でこぎれいな住居を持つ余裕がない。精神障害者であろうとなかろうと、これらの人友は、新しい都会の救貧院ー貧困者救護施設の中で、すべて同じように見下げられ非人間的な状況にさらされる。

 今日、ホームレスの人々はほとんど退院した精神病患者だと信じられている。その証拠を調べてみよう。おおよそ四〇万人の患者が一九六〇年から一九八〇年の間に退院した。その内、約半数が家庭に帰り家族と生活している。それゆえ、最大約二〇万人がホームレスになる可能性がある。実際には、一九六〇〜七〇年の一〇年間に退院した人々のほとんどはナーシングホームに移された老人患者だったので、ホームレスなる精神病者はおそらく一〇万人以下であろう。最近の研究より、救護施設居住者の一〇〜二〇%が精神病院を退院した人々であることがわかった。救護施設内の人々の中での精神障害者の数の推定は非常に様々であるが、三〇〜四〇%は多すぎると思われる。一九八四年でのホームレスの数の推定は二〇〇万人から四〇〇万人の間であった。彼らはどこからくるのか。それへの簡単な答えはないことは明らかである。 その問題に関する私たちの分析は次のようになる。ホームレスは基本的には経済問題である。住居のために支払うお金がないということである。私たちの社会ではどのグループがお金を最も持っていないか。生活保護受給者、低賃金者、失業者(明らかに重なり合うが)である。一九八一〜八二年の冬のホームレス問題の出現に付随して劇的に数が増えたのは、どのグループだろうか。一九八〇年から一九八三年の間に失業率は、約七・五%から一〇・五%に上昇した。これは、約三〇〇万人に相当する。これら三〇〇万人の新しい貧困者が潜在的なホームレスとして加わるのに加えて、他の因子も作用している。
①一九七〇〜八〇年の一〇年間の住居費の上昇は、低賃金者の賃金や生活保護受給者の受給額の増額をはるかに越えていた。
②レーガン政権は、低所得者用住居の建設援助と住居費補助金計画を削減した。
③急激な家賃の上昇と都市の高級化(一九七三年から一九八〇年の間にニューヨークにおけるホテルの一人部屋の部屋数が六〇%減少した)のために、これらのグループの大多数にとって利用できる住居の費用は、手の届かないものとなった。その経済の社会的枠組みが、彼らをホームレスに追いやった。

 このようにして、新しい貧困者の集団、すなわち三〇〇万人の新規の失業者(彼らは、失業が六か月または一年以上続けば、本当に貧困者になる)が、今までいたホームレスに加わったとき、ホームレスが劇的に増加した。そのかなりの部分の人が、失業とホームレスの二つのストレスが合わさって、精神病になったとしても驚くべきではない。

 この分析を基に、ホームレスの問題の解決が行われるべきである。これらの人々が自由市場で住居を買うのに十分な資金を供与するか、そのために助成金を使って住居を買って修復する貸与助成プログラムを設置するべきかである。ニューヨークで各救護施設のバラック小屋に二万ドルのコストがかかり、貧困所帯のための宿泊所は年間三〇万ドルを超すので、そのようなプログラムはとても経済的で、人道的である。

 連邦政府の法律(「マッキニー」法)が、ホームレスの問題を処理するために通過した。しかし、そこには、すべてのアメリカ人がこぎれいで、支払い可能な、永続的な住居を持つ権利を保証するのに十分な数の住居を建設し、修理し、補助金を与えるということが、国家の緊急事だという現実感がない。この法律は不幸な形になっている。それは、住居のない精神障害者のプログラムと精神病でない人々の住居プログラムを分けていることである。それは住居のない人々の間に区別と差別を持ち込むものである。これは、ただ単により大きい問題から注意をそらす(それも、真剣には呼びかけようとはしていないだけでなく、精神障害者の人々に対して酷い仕打ちをもしていることになる。

 この住居プログラムは、もちろん、ホームレスの不幸に対処しようとするものではない。その理由は以下のことである。
①気力をくじく体験が長く続き人々から希望を奪ってしまい、仕事に就こうとする動機すら失わせてしまう。それは、手に入る仕事では、救護施設から離れることのできないほどの低い給料なので意欲を失わせるからである。
②新しい形の施設症であるホームレス保護居住施設症(なんと興味深い矛盾語法ではないか)が、伝統的なまるごとの入院施設と似ていなくもない状況から生じており、そこでは選択の余地のないホームレスの人々は、生命に基本的に必要なものを得るために、保護居住の供給者に服従するように要求される。多くの「新しい」ホームレスの人々はそれまで五年またはそれ以上も、いままで路上で生活してきたので、多くは、救護施設から離れるのを躊躇するようになってきており、そこを立ち去ることを嫌がる。
③多くのホームレスの人々は、低栄養や、保護住居につきものの暴力、強姦、薬物中毒にさらされたり、巻き込まれる結果、深刻な医学的、心理的合併症を抱え込む。
 不幸にも、あちこち縫い合わせた社会構造の深い裂け目を修理しようと試みる(すなわち、救護施設)近視眼的政策のために、多かれ少なかれ永続的に気力がくじけてモラルが低下し公民権の奪われた米国人の新しいグループを作り出しているようである。貧困者救護施設システムは、維持するためにクライエントを補充し続けなければならないような、新しい永続的な施設に発展しつつある。真の長期的解決法でその問題に政治が取り組むことに失敗したことで、救護施設とその常連との結びつきは、固められたのである。
 よい地域精神保健計画では、家賃の支払える住居があり、深刻な心理的困難を抱え寒さから逃れるために喜んでホームレスが利用できるような介入がなされるべきである。できるだけ多くのホームレスを居住治療事業に受け入れることは、精神障害者に利用を奨励するうえで、柔軟で革新的な地域精神保健事業を実行できる力量のテストになるであろう。ホームレスの人々に関する今の差し迫った問題は、何人かは深刻な精神障害を持っているが、そうではない多くの人がホームレスとしての人生を始めてしまっているということである。より広い社会に出るのを断念することでより多くのケアを受けられるホームレスの文化に気づいたために、彼らは、ホームレスを社会に再統合しようとする過程に喜んで参加しようとはしていないようである。これらの人々や家族を文化変容させるような何か革新的な方法が、このホームレスの生き方が止められるように開発される必要がある。彼らの注意をひくような具体的な対策を生み出すことは、重要な課題になっている。

精神障害者権利主張センター・絆 会員 世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク理事