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2021年の夏。パラリンピック選手村でサポート業務をしてきた話。

こんにちわ。

こちらの記事がUPされるのは12月4日。実はこの日私誕生日でして、順調に年を重ねている予定です。そんな日をペパボCSアドベントの日に選ばせていただきました。年末の貴重な1枠をいただきありがとうございます。

※この記事はPepabo CS Advent Calendar 2021の12/4分に向けて記述しています。

pepaboのCSな皆さんの年末アウトプットだよ〜

さて、CSのことでもプライベートでも何書いてもいいよ、というお話でしたので、2021年最強に、っていうか人生の中でも最強に強烈な体験をした2021年の夏のことを書いてみたいと思います。

前書き

2021年の夏、私はオリンピックとパラリンピックでボランティアをしておりましたっ

選手村のスタッフ入り口です。唯一撮れるオリパラを感じされる風景。

2020年にオリパラの東京招致が決まった時からボランティアを絶対にやるぞという強い意志があったのですが、2018年8月にペパボに「PESPO」というスポーツの国際大会のボランティア参加のための休暇が導入されたことにより参加がしやすくなりました。

実際有休のみで参加するとなると今回の大会のボランティアの最短必須参加期間の10日程度の参加になるかと思っていましたが、PESPOがあったことによってオリパラ両方の参加が叶ったとも言えます。

来年某国際大会のボランティア参加を申し込んでおり、仕事との兼ね合いを考えると最短期間の4日程度の参加と考えていますが、スポーツの国際大会のボランティアは役割によっては「世界観が変わる」出来事となりますので、興味がある方がいらしたら是非共にやりましょうと言いたいです。

本題に戻り、私はオリンピックでは競技のサポート、パラリンピックでは厳密には競技サポートの一つとなるのですが場所は選手村内でスポーツインフォメーションセンター(略してSIC。以下SIC)という場所で働いていました。

SICは、対面で問い合わせ対応を行う場所になります。デパートやモールで「インフォメーションカウンター」がありますが、そのパラリンピックバージョンとでも言ったらいいでしょうか。各国の競技における「チームリーダー」と呼ばれるスタッフが来る場所で、質問に来たり、物を取りに来たり、またテコンドーの計量サポートをするなど多種の業務を行うポジションでしたw

そんなパラリンピックのリアルサポート業務SICでどんなサポートをしてきたか書いていきたいと思います。

どんな仕事をしていたか

SICでの仕事は主に以下の3つでした。

1:SICにやってきた各国チームリーダーの質問に答える

2:メールで送られてきた各国チームリーダーの質問に答える

3:Microsoft Formsで予約が行われる練習会場の予約を確定させ「INFO」というパラ関係者全員が見られるWebサービスに練習会場予約済のアップデートを行ってもらうよう指示を出す

です。他には競技別で「陸上」競技で

1:Final Confirmation Form(出場の最終確認の書類)を受領する

2:陸上で利用するビブス(ゼッケン)を各ナショナルに配布する

という仕事がありました。

それから、先述したパラテコンドーの計量サポートという仕事もありました。

こうして文字でさらっとまとめるととてもかっこよく仕事をしていたかのようですが、忙しい時はカオスでした。

カオスの中身としては

●英語、ロシア語、韓国語の担当者はいたが、話す人口が多いスペイン語がいなかったのでスペイン語しか話せない相手には翻訳ソフトを使ったりしてた。フランス語担当もおらず、どうにもならない時はボスの知り合いのフランス人に電話してフランス語しか話せないアフリカの国の人と話してもらって英語に訳してもらう(笑)という綱渡り対応で乗り切った

●問い合わせ対応なので回答が欲しくて問い合わせ者がイライラしがち。振り返るとナショナルチーム内のチームリーダー同士でケンカしてる(こういうのは放置)

●NPC(NOC)サービスセンター(普段は晴海埠頭ターミナル)の1Fにあるので、そのビルに関係することはフロントになんでも質問に来る。
聖火トーチどこで買えるか、と某国に聞かれて「それはビレッジプラザ(オフィシャルグッズとか売ってるとこ)じゃないの?」と回答したけど実は2Fに売ってるところがあって各ナショナル1個ずつ買えることを後で知ったけどそんなのSIC担当じゃないけどとにかくみんな飛び込んでくる

とかいろんなことがありました、今考えるとほんと楽しかったな。ずっと「メイアイヘルプユ〜」ってニコニコしながら言い続けてたな。

印象に残った質問は?

チームリーダーの質問は真剣です。

なぜなら自分のチームの選手を

・練習させ

・試合に問題なく出させ

・なるべく上の順位にさせる(もちろんメダルを取らせたい)

ことがミッションだからです。
なのでチームリーダーからの質問にはいつも詰め寄られてました。
印象になった質問として以下を挙げたいと思います。

印象にある質問 その1 某国チームのトライアスロンのチームリーダーの「明後日の試合のためにはどこに何時までに自転車を持っていけばいいか教えて欲しい。」

トライアスロンは水泳、自転車ロードレース、長距離の3競技を全てこなす超人レースと呼ばれすハードな競技ですが、自転車は選手村に運び込まれます。さらに競技会場まで運送(ちなみにヤマト運輸が主に仕切っている)会社が運びます。その運送は「ロジスティックス」と呼ばれるのですが、その集める場所が選手村内に競技別に3箇所(なんで?なんで3箇所なの?ww)あり、まずその場所がわからなかったり時間が分からなかったりするので、SICに質問にきます。そして、以下の重要な項目があります。

・トライアスロンの自転車競技は試合の前に自転車のチェックがある

・試合前日の決まった時間に届けなくてはいけない

・そこに届けるのに選手村内の3箇所のロジスティックス(ヤマト)のどこかに何時までに届けるか決まりがある。

これをですね、私たちが調べるのです。これらは、ほぼほぼ全て「チームリーダーズガイド」と呼ばれるいわゆる競技マニュアルに載っているのですが、読んでなかったり読んでもよく分からなかったり、あとはトライアスロンようのロジスティックスはSICと同じビルの同じ1Fの隣にあるのですが、場所がよく分からなくてちゃんとしたドアがついてるこっちの部署に来てしまう、(ロジの受付は吹きっさらしの受付だったので。。)そんなわけでこんな重要な質問にちょっとイライラしてる某国のチームリーダーに回答したりしてました。私頑張ったな。。


印象にある質問 その2 とあるの国の選手の面倒を見てる某国人のドクターから「明日の砲丸投げの試合はF57とF56が混合だが表彰は一緒か?」という質問


パラリンピック競技は障害の種類、度合いでクラス分けされて競技が行われます。しかしながら、障害の種類や度合いが近い2クラスが1つの試合をするケースがそこそこあります。

となると2つのクラスが1つの試合をしたときにどうしても不利となってしまうのが障害が重いクラスです。

この時に質問に来たドクターは北米の方で、アフリカの国の選手の面倒を見ていました。
(※ナショナルチームの人数が少ないと、ボランティアなどが数チーム分のチームリーダー業務を兼ねていることがあり日本人で日体大の学生がその役割をしていたケースがありました。)

自分の担当している選手が2クラス合同の試合をすることに気づき、自分の選手が不利にならないことを祈って
「クラスごとにメダルは用意されるの?」
と暑い中居住棟から歩いて聞きに来てくれたのです。(実は居住棟からSICまではやや距離があり、SICは陸の孤島みたいな場所で選手村人から行きづらい場所として有名でした。そしてそのドクターはややお年を召した方でした)

このような質問も、ボランティアは1競技ごとに細かく知っているわけではないので、チームリーダーズガイドを読み込んだりして調べたのですが、自分たちでは結論が出せず、ドクターにメアド入りの名刺をもらってあとで回答することにしました。

はっきりした結論は、競技側に聞くしかないので、陸上を担当する組織委員会スタッフに電話。この競技はメダルはクラスごとに用意されるか、という質問をし、「されません」という残念な回答を得て、ドクターにメールで回答しました。

自分の担当する選手になんとかメダルをとらせたい熱意を感じたのと、北米の医師がアフリカの選手を複数国分面倒を見るケースがあることを知ったことが学びでした。彼がボランティアであったかどうかは分からないのですが、おそらくそうではないかと思います。

パラリンピックは回を重ねるごとに露出が増えて今回のパラは日本チームの活躍もありグッとメジャーになった印象はありますが、やっぱりオリと比べて予算が少なく端端でそれを感じることがありました。今回のドクターが満足できる回答はできませんでしたが、質問いただいたことが自身たちの学びになりました。

面白かった出来事は

陸上競技が始まる前の大切なオンラインテクニカルミーティング(ルールを確認する大切な大切なMTG)をカリブ海の某国チームと一緒にSICのフロントでちっちゃいパソコンで5人ぐらいで見てた

まず前提として、オリパラ共に陸上は個人競技のため出場選手も国もかなり多いのですが、パラ陸上はIF(国際競技団体)がイマ一つIT化されてないらしく、「Final Confirmation Form」というとても大切な提出必須の書類が全て手書きでした。(白目)

提出必須の「Final Confirmation Form」には、各ナショナルのチームリーダーのメールアドレスと日本での電話番号(日本だけのモバイルが貸与されてるケースが多い)と自国の住所を書いていただいておりました。
そして大事な連絡は基本的に提出していただいたメアドに送ることにしているのでそこに競技が始まる前に大変大切な競技団体とチームリーダー間でルールを確認するオンラインテクニカルミーティングのURLを送ることになってたのです。

英語ネイティブの方の手書きに慣れている方がこれはどういうことかお察しいただけるかとおもうのですが

手書きのメールアドレス解読めちゃ大変

なのです。
例えば

.(ピリオド)、-(ハイフン)、_(アンダーバー)

・0(ゼロ)、o(オー)

この2種は手書きだと解読不能ケースが多いです。
それ以外も読めないケースが多いので、受け取ったら少なくともメアドは全部声に出して担当者が確認します。

そして、手書きの文字が書かれたその紙を入力担当のボランティアに渡してノートパソコンでで手入力してIF(競技団体)にデータベースとして渡して、IFからオンラインMTG前にURLがメールを利用して各チームリーダーに送られるのですが、、、

もうすでにIFに渡したメアドが間違っているケースが起きているので送られてこないケースがちょこちょこ起きてました!
私たちは想定してましたけどね!

そんなわけで、「URLがわからない!教えて!」とSICに直接来てくれたチームとみんなでノートパソコンの小さい画面を眺める事態が起きました 笑

今だから面白く話せるけどチームリーダーたちは大事な会議に参加できないんじゃないかとドキドキハラハラだったと思います

この話に出てくるチームは真面目にSICに訪問に来てくれましたが、もう当日の参加は諦めて翌日に昨日はどんな話だったの?と聞きにくるケースがあったので、テクニカルMTGのパワポをプリントアウトしたものを大量にコピーして渡したりしてました。

オリンピック・パラリンピックに参加してよかったこと

「世界の見方が変わった」ことが一番大きいかと思います。

私はボクシングが好きで、ボクシングの試合を見るためにオーストラリアやアメリカに行ったことがあり、特にアメリカはラスベガスとNYでボクシングイベントが盛り上がることから私の外国 is アメリカ、でした。これから死ぬまでにNY何回も行くぞって思ってました。

でも、自分の中でアメリカ is  世界 ではなくなりました。
世界には200以上の国があって、その中でアメリカは大国で、正直垢抜けてます。選手やスタッフもシュッとしてます。垢抜けててかっこいいです。ダサくない。お金も持ってるし。ユニフォームや、配布されるピンズの種類が多種なことからよくわかります。

※オリンピック・パラリンピックのピンズは各国が作って選手やスタッフに配布し、知り合いになった時に交換します。ピンズはコレクターも世界中にいて、今年のオリパラのピンズもメルカリやヤフオクで高騰しました。

でもオリパラに参加したら見方が変わってしまった。アメリカは大きいお金持ちのかっこいい国だけど、全ての国の中の1つ。世界にはアメリカ大陸、アフリカ大陸、ユーラーシア大陸、アジア、オセアニア地域と小さな島々がいっぱいあって、小さい国から大きい国があって多人種が暮らしてる。そんな当たり前のことが脳にしっかり入ってしまい、オリパラが終わった後に街で会う外国の方には国を聞きたくなる病気になりました。

そしてパラリンピックの後は、街で会う白杖の人や車椅子の人を見守るようになりました。以前は障害者の人は街にいて認識しても、あえて見てはいけないような気持ちに勝手になっていました。
でもパラの後は違って、見て、例えば白杖の人が近所に住んでるのは知ってたけどどこに住んでるか知らなくて、ある日近くを歩いてた時に、そのかたがマンションの入り口まで入るのを見届けた。自分の中で目が見えない方が近くに住んでいて、すなわち何かあったら手を貸す必要があることをインプットできたり、そう言ったことが普通の感覚となったことが大きいです。

いくつかの変化がありましたが、例えばアメリカis 世界ではなくなったことで私の目標がぼんやりしてしまったというのはあります。
自分はNYにハマってこれから何回も行くぞ!(コロナ明けですが)と思っていたのがそうなのかな?と思うようになってしまった。世界を平たく見た時に自分は次どこに行ったらいいんだろうと、モヤモヤしているのが今日この頃です。

答えが見つかっていませんし、今は旅行でさっと外国に行けるタイミングではないので、次のスポーツの世界大会のボランティアなどに参加しながら考えていくんだろうなぁと思います。

CSの仕事に寄与したことってなんだろうと考えるのですが、正直直結したところは今の所思いあたりません。
ただ、他国からのゲストを受け入れること以外に、ボランティアをすると年齢性別国籍がバラバラの人たちと1つの仕事をやる必要があることが大きいです。
仕事だと一定の必要なスキルがある人が集まっていて、一定の仕事ができるように教育も行われますが、ボランティアの場合バックグラウンドがバラバラの人たちがイベントの成功に向けて力を短時間で合わせなくてはいけない。
そこにはスキルが完全に足りない方(パソコンほとんど使えないとか)もいらして、そういう人をなるべく置いて行かないようにすることも必要で(これは自分のためだったりします。)

いろんな人がいる

ということを見てきたし、しみじみ感じたし、ボラがなければ会うことのない人たちと会えたことは本当に幸せでした。

TOKYO2020が終わった後の自分はまだはっきりしていなくて、以前あったような目標(NY行くぞみたいなレベルだったり、勉強するにしても何を目指すかなど)が今ありません。オリパラがすごすぎてしまって、どこに行っていいのかがわからない今の自分です。

ただ、幸せなことに私にはこんな体験の後に帰る場所として自分の職場があったので、ここでの仕事をしっかりやってスキルを上げながらまた次の目標を見つけていこうと思います。

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