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劇団というもの

私は芝居をする人間です。
私は脚本を書く人間です。

簡単に言うと、役者であり、脚本家でもあります。

以前、このような記事を書きました。一部分ではありますが、役者の現実について書いたつもりです。そして、役者が舞台で芝居をするには、劇団というものが必要になってきます。しかしそのほとんどは、舞台を催行すると赤字かもしくはトントンだといいもので、ギャラなんて言うものはなくて当然、もしくは、チケット売らなきゃギャラもないよ、って言うのがスタンダードであったりします。(統計は取っていません、感覚値です)
皆さんの知っているような、「劇団新感線」とか「大人計画」とかって、本当にひとつまみのレベルなんです。

劇団は個人の集まりであって、みんなが同じ志ならばそれはまぁうまくいくと考えられます。しかし、誰しもがロボットではありません。役者として売れたい、テレビに出たい、芝居さえやっていれば幸せ、舞台で死にたい等、モチベーションが異なることなんて当たり前のようにあります。言ってみればひとつの会社と同じなのです。会社員でも、お金さえもらえれば仕事にやりがいなんてなくていい、自分が楽しめる仕事をやりたい、給料がいいからとりあえずこの仕事やってる等、スタンスが違って当然でそれも含めて、適材適所を目指して会社として成り立たせることが企業理念だったりします。そうであることが望ましいのですが、劇団といったら、個人が始めた商店に近いものがあって、主宰とか座長とか呼ばれる人が社長に当たるわけですが、ワンマンが多いんです。「俺の作りたいものはこれだ」「私についてこい」的な思想があって、まぁそれに乗っかることが出来る人が劇団員として存在することになります。初めの内はそれでモチベーションも続きますし、やりがいがあるのは当然なので問題はありません。ですが、先にも話したギャラ問題をはじめとする、先の見えない状況に陥った時に、次第に「これやってていいのかな」「このままで本当に売れるのかな」と劇団員が迷い、そして、一蓮托生するか、脱退するか、みたいな決断を迫られる時が来ます。それは劇団の存続を左右するものであり、会社と同じで、従業員がいないと成り立たず、解散の危機に陥るわけです。(個人事業主としてやる場合もあるが)

私は、役者であり、脚本家でもありますが、劇団を作ろうと思えない理由がそこにあります。座長はカリスマティックさが必要で、劇団員を率いていく求心力ともちろん劇団を運営していく金銭感覚を持ち合わせいないといけません。会社の社長と同じ責任が課せられるわけです。劇団というものはそうやって作り上げていくべきで、今で言うベンチャー企業の青年実業家ごとく、大いなる野心と、責任感と、経営センスを問われる仕事なのです。失敗して借金をしても結構、しかし「成功したい=お金を得たい」という強い思いがないと淘汰されていくものだと私は考えます。

ですが、演劇・芝居、となると芸術的要素というものが絡んでくるが故に、「きちんと利益を得て、世間的に認められ、従業員が幸せに暮らす」というような企業では当たり前の理念が、必ずしも目標ではない場合があります。「自分が納得できる面白いものを作りたい、誰がなんと言おうと自分のやりたい芝居をやる。例え誰しもに認められなくても、芸術や文化というものはそういうものだ」みたいな考えが許されることがあります。皆が同じ気持ちなら問題はありませんが、やはりその可能性は低いのです。

私は演劇やお芝居というのは、素晴らしいものだと思っています。観に来てくれた人が、心のお土産を持って帰ることが出来る、とにかくストレス発散できる、観たことで明日の活力になる、もしくは考えるきっかけを作ることが出来る、そう言うものだと思うし、そうであるべきだと思います。高尚な言い方かもしれないけれど、その人の人生を変えることすらあると思えるのです。なぜならライブだから。役者の息遣いが、目の動きが、汗が、トラブルや言い間違いでさえも有り得るからこそ、一体感を得ることができるものなのです。二度と同じ舞台を見ることはできません。映画やドラマと違う点はそこです。

劇団員というものが一つの働き方として成り立っていくのは、劇団を企業として運営できるかどうかにかかっているといるとさえ思うのです。そんなことを改めて感じさせてくれた本があります。

有川浩さんの「シアター!」です。続編の「シアター!2」もあります。実際に存在する劇団をモデルにして書かれているので、本当にリアルです。そして、企業としての劇団の在り方を提唱している本でもあると思います。

いつか私が劇団を立ち上げる日が来たとしたら、それは社長になる覚悟と、成功させられるロジックが完成した日です。その日を目標に、私は本を書き、お芝居をし続けます。

売れそうな劇団名を考えながら・・・。

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