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鑑賞ログ|キュビズム展


モネかキュビズムか

上野で興味深い美術展がふたつ行われている。
10月から始まったモネ展、そして、ピカソ作品を中心とするキュビズム展。
この二大巨頭を堪能できる展示会なんて、行くに決まってる。

モネ 連作の情景 @上野の森美術館

キュビズム展 @国立西洋美術館

どちらに行こうか。
どちらも行きたい。
連れに聞いたら「キュビズム」を選んだので、まずはそちらに行くことに。

元々美術展は好きだけれど、行く気持ちを高めてくれたのは、最近読んだ原田マハさんの小説があったから。

そして。
これは以前読んでいて、キュビスム展に行くことになったので、二度読みした本(まだ途中)。

『暗幕のゲルニカ』

ピカソがゲルニカを完成させるまでとそれ以降、そして、9.11が起きた時代ニューヨークMoMAで働く日本人キュレーター瑤子が企画する美術展でゲルニカを展示するために奮闘する物語が交錯しながら進んでいく。

アートの歴史を垣間見ながら、ミステリーとしても疾走感のあるストーリーで、とても大好きな作品である。
ピカソと愛人ドラ・マールが魅力的。
場所も時代も離れた二つの物語が少しずつ交わっていく流れがしびれる。

・・・・ということで、キュビスム展に足を運んだのである。

国立西洋美術館

よく考えてみると、海外旅行だと美術館や博物館によく行くのに、国内のそれにはあまり訪れたことがないかもしれない。

関西にいたころは取材で行かせてもらったり、近所にも美術館があったりして、今よりも行ってたと思うけれど、それでも、少ない。

そして東京に来てからは、アートの展示会を観に行ったのは、これが初めてかもしれない。

国立西洋美術館の入口前の広場にはロダンを中心とした彫刻作品が置かれている。

地獄の門 ロダン

ふと「プラド美術館みたいだなぁ」と思った。

スペインのマドリードに旅行した際に訪れた美術館で、ゴヤやベラスケスの大作が展示されている。たしか広い庭があって、そこで彼ら巨匠たちの彫刻がお出迎えしている。その感じがリンクしたのかもしれない。

実際は広さだって、造りだって全然違う。
だけど、その広場に足を踏み入れた瞬間、とても心が躍ったのは事実。

いざ、中へ。

キュビズムとは

20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出されたキュビスムは、西洋美術の歴史にかつてないほど大きな変革をもたらしました。その名称は、1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。伝統的な遠近法や陰影法による空間表現から脱却し、幾何学的な形によって画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放しました。キュビスムが開いた視覚表現の新たな可能性は、パリに集う若い芸術家たちに衝撃を与え、瞬く間に世界中に広まり、それ以後の芸術の多様な展開に決定的な影響を及ぼしています。

キュビズム展HPより

展示は時代ごとに14に区分けされており、その起源とされるセザンヌの作品から始まり、「プリミティヴィスム」と呼ばれるピカソやブラックのキュビズム初期から確立までの変遷、その広がりと後継者たちの台頭、それ以降、という流れで鑑賞できる。

わたしはピカソ好きなので、遠くから見ても「ピカソ!」と大体分かるのである。というか、ほとんどの人は分かるか…(笑)

パブロ・ピカソ 女性の胸像
これもピカソ

ブラックと共にキュビズムを確立していく流れがとても分かりやすく見て取れる。

特にブラックの初期作品は正直「あんまり上手くない…」と(素人&上から目線で)思ってしまうが、次第に独自のスタイルを獲得していったように感じた。

フアン・グリスと洗濯船

この展示会で、ピカソ以外にお気に入りのキュビストを見つけた。

それは、フアン・グリス

フアン・グリス ピエロ

トップ画像の作品もグリス作「バイオリンとグラス」。

40歳という若さで亡くなったが、第三のキュビストと呼ばれるほど、その才能は認められていた。

グリスは「洗濯船」と呼ばれる集合アトリエ兼住宅に住んでキュビズムを学んだ。洗濯船には古くはゴーギャンが出入りし、ピカソ、モディリアーニも活動したという。

最初にそのアトリエを構えた画家のモーフラは
「土曜の夜に集まって、哲学、社会学、無政府主義、絵画の革命、芸術、文学、世界、演劇、世の終わり、社会秩序の転覆、人類の革新、地上の楽園…あらゆることが話題になった。話題が尽きれば、また同じ話を繰り返した」
と語っている。(wikiより抜粋

芸術はあらゆる要素が複雑に絡み合って生まれるものだから、ここに集った者たち(若手、中堅、ベテラン問わず)は、絶えず議論をし、交友し、酒を飲み、時にぶつかり、素晴らしい作品を産み落としたのだろうと思う。

日本で言うところの「トキワ荘」である。

「洗濯船」以外にも、主に海外から来た貧しい画家たちの住居であった「ラ・リーシュ(蜂の巣)」には、マルク・シャガール、フェルナン・レジェ、マリー・ローランサンなどキュビストも多くいた。また、日本人画家の藤田嗣治も活動したという。

彼らの作品ももちろん展示されている。

モディリアーニ 赤い頭部

下のマリア・ブランシャールは女性のキュビストで、ファングリスの影響を受けたと言われている。

マリア・ブランシャール 輪を持つ子供 1917

この作品と下のピカソの作品は並べて展示されており、「輪を持つ」シリーズとして、どこか呼応しているような印象を受ける。

ピカソ 輪を持つ少女 1919

マリアの作品が先だから、ピカソが影響を受けたのだろうか…
だとするととても面白いと思った。

キュビズムあるある

キュビズム展で大量の作品を見ていると、あるあるに気付く。

・ギター描きがち
よく「静物」を描いた作品があるが、異常にギター率が高い。普通は果物とかなのに。
・女性の頭部だけ描きがち
ピカソしかりモディリアーニしかり、とにかく「女性の頭部」フォーカスが多い。
・タイトル雑にしがち
「女性の頭部」もそうだし、タイトル適当につけてる問題は多い。ちなみにピカソは基本タイトルを自分でつけないらしい。
・油彩以外も使いがち
油絵の中に、おが屑、パピエ・コレ(貼り紙)、砂、木炭などが多用されている。
・絵画以外もできがち
彫刻だったり、映像だったりを制作していたし、ピカソが舞台美術や衣裳を手掛けていたと知って驚いた。

実際に見た方は共感してもらえるだろうし、これからの方はぜひ参考にしてほしい。


そして、常設展示室

国立西洋美術館には常設展示室がある。
常設にしては豪華すぎるほどの名画を鑑賞できる。

モネ展がすぐそばで行われているが、代表作「睡蓮」「舟遊び」「ウォータールー橋」などモネ作品が多数展示されている。

モネ 睡蓮

十分モネ展やん…と思わざるを得ない。

ピカソ、ミロ、セザンヌ、ドラクロワ、ルーベンス、、
美術ニワカのわたしだって名前を知っている画家たちの名作が並んでいる。

そして、一番嬉しかったのは。
ゴッホ「ばら」

ゴッホ ばら

これは原田マハさんの「常設展示室」の中の一編に出てくる絵で、とても好きな物語だったからだ。

イメージよりもずっと小さくて、儚い絵だった。

ぜひ一緒に見てほしい。

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