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【2021/8/4】アメリカン・ユートピア

山田ジャパン若手公演「gimmick」を見てくれた友人がこんな感想をくれた。

「アメリカン・ユートピアみたいでした!」

と。

アメリカン、ユートピア?
アメリカの、理想郷?

すぐさまのグーグル先生。

そして、YouTubeの告知動画を見た。

なんじゃこれ、めっちゃ面白そうじゃん!!

どこが自分の演出した舞台と似ているかは分からなかったけれど、とにかく話題になっているし、落ち着いたら絶対に見に行くと心に決めた。


(以下ネタバレあり)


デイヴィッド・バーンによるブロードウェイでのライブをスパイク・リーが映画化した作品。なので、映画を見るというよりはライブビューイングを見ている感覚に近かった。1曲終わると拍手したくなるし、知らない曲でもリピートがあるので歌いたくもなる。

しかし実際のライブ映画と違うのは、様々な、しかも変わった視点から楽しめるということ。カメラは天井から、右から左から、アップから、舞台袖からとアングルが目まぐるしく変わる(逆に俯瞰で見たい時もあったけれど)。マーチングバンドのような規則的な動きはより美しく見せてくれるし、音楽を全身で奏でる姿や表情もハッキリ見えたので、そこはとても良かった。

そして何より、御年69歳のデイヴィッド・バーンのパフォーマンスの力強さ、歌声のすばらしさ、さらにトークの面白さ。シンプルにカッコイイと思った。あんな69歳おる?カッコよすぎる。今までその存在を知らなかったことを心底恥じるよ。

不要なものを取り除いたら、人間だけになった。

とバーンも途中のMCで話していたけれど、バーンを入れて12人の表現者たちは自分の身体と、楽器を持っているだけ。セットというセットはなく、パフォーマンス空間が鎖のすだれ(?)で囲まれているだけ。そこへ効果的なライティングが加わり、ド迫力の生演奏と、バーンたちの歌声と、規則的なようで自由にも見える、何だか奇妙な振り付けが加わり、目が離せない。

パフォーマンスを見たいけど、歌詞も意味が深くて言葉の使い方が面白いので押さえておきたい。つまり目と頭が追いつかない。今日ばかりは英語を身につけてこなかった自分を呪った。バーンは歌や音楽、表現を楽しみつつ、強いメッセージも発している。それはMCにも歌詞にも表れている。

人種の問題、選挙の話、人とのつながり、、、

「Hell You Talmbout」という曲は暴力によって命を奪われた人たちの名前をコールする重たい意味があるものだった。しかし曲調は明るくてテンポもよくて、そんな悲しい曲だとは夢にも思わない。むしろ元気が出てくるような、パワーがある。だからこそなのか、次第に胸を締め付けられて、とても苦しくなった。悲しみを悲しく表現するのではなく、力強く、明るく表現することで、その悲しみがより深く伝わることがあるのだと学んだ。

とにかく、また見たい。DVD出たら買いたい。
そこまで思ったのはマイケルジャクソンの「This Is It」以来だ。考えてみるとちょっと似てる。ドキュメンタリーに近いし、パフォーマンスの高さやメッセージ性は類似している。


そして、最大の問題であった「アメリカン・ユートピアみたいだった」という友人の感想にも答えが出た。最後の曲の始まりは真っ暗な状態から、手に持ったライトが灯ることからスタートする。そのような演出を舞台に入れていたのだ。「ここか!」と合点がいった。

たくさん盗みたい部分があったアメリカン・ユートピア。

でも一番盗みたいと言うか、大切だと思ったのは、「楽しむこと」だ。表現を楽しみ、仲間と生み出す音を楽しみ、観客とのコミュニケーションを楽しむ。それが溢れていた。そんな作品をつくらなければならないのだな。

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