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スタートライン

 人生にはスタートラインに立つことが何度かある。
 振り返れば、自らの意思で進むべき道を選んだケースはそう多くない。

 長い間続けたバレーボールも始めたきっかけは、小学生の頃、兄の女友達に誘われて何となくであったし、高校・大学の進路に関しては親の影響が大きかった。就職に関しては確かに自らの意思で就職先は決めたが、心の底から入りたい会社であったかと問われたら「No」である。

 そう、意外と、「何か」や「誰か」に影響されて、求められる方向へ、進む道を決め(させられ)ているのだ。しかしこれが悪いことであるかと言うとそうではない。私は大学進学にしても就職にしても、親の影響が強く、当時は反発したときもあったが、今となっては言う通りにしておいて本当に良かったと思っている。

 そんな私が、本当に「自らの意思」で新しいスタートラインに立ったのは、新卒で就職した会社を辞めて、芸能界にチャレンジした時であろう。
 それは、今から10年前のこと。順風満帆で勤めていた会社を勝手に辞め、父に反対され、母に泣かれながら、地元福岡を離れ、大阪の芸能事務所の門を叩いた。スカウトされたわけでもなく、コネがあるわけでもなく、何の当てもなかった。「やってみたい」その思いだけで、先に続く道があるかも分からないスタートラインに立った。

 ちょうどその頃、私は自分に向けて手紙を書いていた。
 書いたことすら忘れていたが、高校の同窓会の企画だったらしく、発起人の友達が当時のクラスメイトへ、10年の時の経て帰ってきた手紙をそれぞれの住所へ送ってくれた。

 思ったより大したことを書いていなかった。だけど、涙が溢れてきた。
 今自分が思っていることを、10年前の自分も同じように考えていたことが、どうしようもなく嬉しくて、恥ずかしくて、泣けてきた。成長していないのかもしれないけど、私が10年前にこの世界に入ってやりたいと思っていたことを今も同じようにブレずに思っている。それが分かって良かった。
(当時は音楽での方向も少し考えていたんですね。今は全く無いですが)

 10年前の自分からの質問に、答えてみようと思う。

お世話になった全ての人に恩返しできてますか?
ーまだまだ出来ていません。お世話になっている人が、支えてくれている人が多すぎて、一生かかりそうです。

2018年の私は自分に自信を持っていますか?
ーある部分では自信を持てていますが、別の部分では自信が持てていません。だけど本当にやりたいこと、出来ること、今出来ないこと、客観的に判断できるようになったと思います。

世の中に何かしらの夢を与えられていますか?
ー仕事を通して夢を与えられる場面も増えたと思います。でも少ないです。もっともっとたくさんの人に夢や感動を与える仕事がしたいと強く思っています。

 私は今、残念ながら結婚していない(好きな人もいない)けど、好きなことを仕事にしています。たまに悔しかったり、苦しんだりすることもあるけど、基本的には笑顔でいます。失った親戚や友人もいるけど、私の周りの多くの人は元気に過ごしているよ。そしてこれからの10年、20年も、そうであり続けたいと願っています。

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 そして、2018年。私はまた新しいスタートラインに立つ。

 これまで活動してきた関西を離れ、関東に拠点を移して活動することに決めた。それに伴って、たくさんの人に迷惑や手間を掛けたし、心配もして下さった。そして、同じくらいたくさんの激励も頂いた。10年前と同じく、何のコネもなければ、当てもない。誰かが望んだわけではなく、自分で決めたこと。だけど私にはこの10年間の経験や知識、ご縁がある。右も左も分からなかったあの時とは違う「高島麻利央」がいるはずだ。しかし、先に続く道があるかは分からない。茨の道や断崖絶壁が現れるかもしれないし、海や山を越えないといけないかもしれない。

 どんなことがあっても、戻りはしない。立ち止まることがあったとしても、少しずつでも、這ってでも、前に進み続けるのだ。
 その覚悟を持って、私は今、スタートラインに立つ。


2018年4月23日 たかしま まりお

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