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タイムトラーベラ 兎

3 誰が嘘をついてるの

ピンポーン ピンポーン
チャイムを鳴らして見た。
普段人気がないこの部屋。
出てくるだろうか。
しばらくして、重い扉がぎーっと開いた。

中から、女性が出てきた。
『あら?』
「はい?」
「あ、あの隣ですけれども、最近騒音問題が起きているみたいなんですけれども、こんな音と声がオタクとの境の壁から聞こえるのですが、お風呂って壁際でしたか?」
「音ですか?お風呂は、壁側にないですよ。キッチンもこちら側でないです。騒音はね、確か上の部屋かな?前住んでいた上の部屋の人、子供がさいでうるさくて。でも今はいないの。」
「よく、天井ドン仕返したりして!」
「え?ドンすんですか?」
「そうそう、ドンドンて箒で叩いたりして。」
「もう今はいないけどね。」
「そうなんですか。」
「がちゃんがちゃんは聞こえます?」
「あ!それはうちのも聞こえますよ。」
「何でしょうね。あの音。」
・・・・・
「あの、オタクは何人家族ですか?3人家族ですよ。夫と息子と。」
え?
『え?4人いるよね。お母さんかしら?』
「あの、よくお友達とかお知り合いとか、見えてますよね?よく玄関から出てくるとところに、出会うんで受けれども。」
「え?こんな時期だから、誰もきてませんよ。」
「え?よくいろいろな人が出てきますけれども・・・。」
「いえ、しばらく誰もきてないですけれども」
「そうですか・・・。」
すると、ご主人とご子息、お姉さん?らしき人を紹介してくれた。
「これがうちの家族です。」
「あ、そうですか。」
「もう大学生で、防音楽を研究しているんです。」
「防音ですか?防音・・・」
「そうですか。おかしなこと言ってすみません。何だかおかしな声とか聞こえてきたりするので、盗聴されてるような気がして。気になって。」
するとご主人が
「え!それは!小さな針の穴ほどでも、カメラを仕掛けることができるんですよ。本当に小さな穴からでも。」
『え?カメラ?マイクでなくて?』
「すみません、変なこといってしまって。管理人さんにもきてるんですけれども、騒音騒ぎじゃない?と言われてしまって。本当、御免なさい。変こときてしまって。あの、何かそんなこと聞いたりしたら、教えてください。」
「失礼しました。」
こんな会話をして、あまり情報を得ることはできなかった。
しかし、気になることがある。
ここに越してきたときに、下、両隣に、挨拶に行ったときのこと。
チャイムを押して出てきた女性に布巾をわたし、少し立ち話をした。
そのとき、確かに夫と大学生の息子さんと3人暮らしと言っていた。
しかし、その時会った奥さん、さっき会った人たちの中には、いないのだ。
え?いちばん最初の奥さん、小柄で地味などちらかというと無口な感じ。
だけど、さっきの奥さんは、もっと若くて体は大きくて170センチはある。
全くの別人である。
これ、どういうことなのだろう。
名前は間違いなく確認した。
しかし、人が違う。
そして、いつも出てくる人が違うので、お客さんだろうと思っていたが、いまの時期は誰も家に呼んでいないという。
これ、おかしいでしょう?
いてもたってもいられなくて、管理人室に向かった。
『あ、いるいる管理人さん。』
「あ、あの。09号室のものですけれども、10号室の方、どんな方でしょうか?」
「はい?10号室?ああ。あのお部屋ね。実は、僕も把握してないんだよね。あの部屋の方。会ったことがないんだよね。」
「え?知らないんですか?何年も住んでるのに?」
「うーん。知らないんだよね。今度気をつけて見ておくね。何かあった?」
「いえ、確か3人住まいだと伺ったんですけど。騒音騒ぎで話を聞きに言ってみたんです。」
「あー。何件か騒音騒ぎでクレーム出てるんだよね。」
「掲示板に貼ってあったカラスの件ですか?」
「あーあれもね。餌づけしてて問題になってるんだけど、本人は、張り紙見てないみたいなんだよね。クレーム来てるんだけどね」
「そうなんですか。」
『確かに、すごく騒いでいるときがあり覗いたら、真上の部屋から餌付けしてるの見えたんだよね。松の木の天辺に手を伸ばしてるの見えたんだわ。』
「ちょっと気をつけて見ておくね。」
「はい。すみません。なんだか変なことになっしまって。」
管理人室を後にした。
『どうしようかなあ。どうしても気になるよね。』
『あ!そうだ。確かあの人がわかるかもしれない・・・』
足早に、あの部屋に行ってみた。
ピンポーンピンポーン
とチャイムを鳴らした。
静かに かちゃっと扉が開いた。
「はい?」
中から若い女性が出て来た。
「あの、すみません09号室のものですが、前に09号室に住んでましたよね?」
「え?はあ。」
「すみません。知らない宛名の郵便物が部屋に置いてあって、不動産会社の人に聞いたら今は、別の部屋に越していると言っていたので。」
「あら・・・そうですか」
「知らなかったので、郵便物は不動産屋さんに渡しておきました。」
「そうですか。」
「あの、実はお隣の方のことなんですけれども。あのどんなかたが住んでらしてましたか?」
「確か、3人家族ときて入るんですけれども。」
「うーん。我々が住んでいた時には、確かご夫婦と男の子がいたはずで、3人家族だったと。その頃は、確か小学生くらいだったと思いますが。」
「そうですよね。3人家族ですよね。」
「確か、我々がいたときは、小学生か、まだ小さかったと思いますが。」
「あまりあったことがないので、小さかった記憶がありますが。」
「そうですか。では今は大きくなっていますよね。大学生とか。」
「うーん・・・そうですね。多分それくらいにはなっていると思われますが。よくわかりませんが、それくらいには・・・」
「あの、奥さんはどんな方ですか?大きいとか小さいとか・・・」
「うーん・・・普通の感じだと思われますが。あまり記憶にないんですが。大きくはないかな。」
「そうですよね。すみません。色々お尋ねして。お忙しいところ失礼いたしました。」
「いえ。」
「失礼いたします。」
と、早々とその場を後にした。
『やっぱり、なんだかおかしい。』
それから色々考えてみた。
しかし違和感はあるが、それ以上、この件に関してはなんの情報も得られなかった。
しかし、現象はますますおかしさを増してくる。
ある日、部屋にいるといきなり窓が、がらがらがら音をたてて開いたと思ったら、バーンとものすごい勢いで開き
「なんだよ。うるせえなあ。」
という男の声がした。
小さな声で女の声がした。
あまりの大きな音にびっくりした。
『怖い人が越してきたのかしら・・・』
しかし、それ以上の会話が聞こえてこなかった。
それ以来、この男の声は聞いたことがない。
それからしばらく経ったある夜中、
「さあ、やっちゃいましょうか!」
という女の声と、ザラザラザラザラざらという、何かを敷き詰めるような音。
『何?こんな夜中に何が始まるの?何やっちゃうの?』
上のへやにこんな人いた?
うるさくて、なかなか眠れない。
この声が、夜中の2時に窓をガラガラがらと開けてベランダに出て洗濯物を干す。
「よいしょっと。」
ガランガランガラン、カンカンカンカンという騒音。
夜中の2時である。
『夜中の騒音は洗濯機の音か。』
続いて
朝4時にベランダに出て洗濯物を干す音
「よいしょっ。」
とベランダに出る声。
次の週には、
パチン、パチン、パチン、パチンと何かを挟むか外すかする音。

『一体これ、なんなの。こんな夜中や朝4時にこんな音を立てられてねられないよ。』
『幾ら何でも、こんな音、部屋に入ってくるかなあ。』

また別の週の午後10時になると、
「カチャ、コンコンコンコン、かコーン。とん。コーン。トン。」
こんな不可思議な音がする。
これが毎日同じようなリズムで音がなる。
浴室の方角から、カチャ、コンコンコンコン。コーン。と
天井を伝い、キッチンの天井に音響きリビングの天井を通り、お隣との境の壁にトンと当たる。
必ず、お隣との壁の境の天井付近で、トンと音がなる。
誰かが、浴室に入り、天井を伝いお隣の壁から入り込む。
こんな感じ。
音は確実に、移動していて浴室から、壁まではゆうに30メートルはある。
『これ、侵入経路?』
お隣に入り込んでいるの?
毎日繰り広げられる、不可思議な音と現象。
毎晩、謎解きをしていた。
このたくさんの情報をどう捉えようか?

「ママ、ただいまあ」
「パパ、ここね。ほらここねここね。こうでしょ。」
この娘が部屋のおかしさに気付き、何かを発見したらしい。

この娘の家の事件かもしれない。
ひろくんとマコちゃんとミヤマだじょ。の3人の学生。
この3人の家の事件。

ひろくん大丈夫かしらのひろくんと
ハーマイオニーの声のマコちゃんと
ソプラノの歌声のぼくのママはミヤマだじょ。
お歌の家の息子。
このミヤマだじょ。の声を聞くと高音で超音波を聞いているようで
気分が悪くなる声である。
綺麗な高音であるが、まるで悪魔のレクイエムのように聞こえる。
この声の周波数に関係しているかもしれない。
この子が
「あーーーーーーーー」
と発声をすると、頭の芯がじんじんしみてきて。
この3人がまとわりついてきてから、ますますおかしな現象が私の身の回りに起きてきた。
すでに、この3人は、この世の人間ではないのかもしれない。
それとも助けを呼んでいたのかもしれない。
うまく逃げ延びているのか。

早く寝てくれないかしら。
「どうしよう。中村さんに悪いことをしてしまった。なんでこんな悪いことしたんだろう。どうしよう。」
「だからやめとけと言ったろ!」
こんな会話が聞こえてくる。

『ちょっと。どんな悪いことをしたわけ?』

「マコちゃん、綺麗になって。もう何年になるかしら。あの人が生きていたらお似合いの二人だったのにね。あんなことがなければね。」

「私たちは、もう諦めます。あんな大きな団体には対撃ちができない。」

「小田急火事?え、今の中村さんの声?え」
「お綺麗ですものね」

この会話が最後になり、この事件の本質がわからなくなってしまった。

あなたたち、生きてますか?無事ですか?と問う。
これを調べに足繁く、昔の住居に向かう。
ここまでわかっているのでと言っておく。

この人たちの方も危険だけど、私の方がよっぽど危険じゃないの。
大きな組織が関わっているのは、確かである。

こんな気持ちの悪いところ、早々に引き上げよう。

上にいた人たちは、これに気づかなかったのだろうか?
少なくとも、08号室の人もこれに感ずいていたはずである。

「僕も、もうお空に行くんだ。だからこれ、ここに置いておくよ。」
と挨拶に来たのが08号室の人だ。
「うるさいうるさいって!これ、お隣の中村さんじゃないですか。うるさい、うるさいって。帰ろ帰ろ。夏休みなのに。」
「ママ、待って」
「待ちません!」
と、カツカツカツカツとヒールを鳴らして歩いて言った。
この部屋もおかしいのだ。
この、帰ろ帰ろさんと、次に出て来た女性が別人であった。

「こっちが綺麗な中村さんだろ、こっちが汚い中村さんだろ。」
と、男とも女とも区別がつかない人が話している。
「中村さん、こっちだこっちだ。でっかいにいちゃん、うちにいるよ。うちにいるよ。わーーーーーー。」
一体、誰に何が起きているのか。

本人を抜きにして、何が行われているのか。
芝居でもしている?

今思うと、あの住居を動かない方がよかったと思われる。
謎解きをしてからでも、よかった。
しかしながら、
「おい、早くここからでろ!」
の声が日増しに強くなり、声に従うしかなかった。
しかし、周りにきずかれないように、消えようと思った。
必ず誰かが事件に巻き込まれて、なくなっている。
未確認事件が起きていたのは、確かなのだ。

出て行く女には、あげなかったものを渡して欲しい。
こんな事件を追いかけて、何年たったのだろうか。

こんなシンプルな事件も、越した先でますます難解な事件へと
進んでしまう。

まさかこんな事件に発展するとは、夢にも思わなかったのだ。
まさか・・・。


























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