Marine

妄想好きが妄想を頭の中にとどめるだけじゃなく、文字起こしをし始めました。妄想掃き溜め場…

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妄想好きが妄想を頭の中にとどめるだけじゃなく、文字起こしをし始めました。妄想掃き溜め場。スキ・コメント下さると喜びます

最近の記事

「みかん」

 ぽかぽかしている。  おばあちゃん特有の畳のような癖のある匂いにつつまれて。安心する匂い。  今にも意識が飛びそうな中、隣にいた姉がつんつんと私の唇をつつく。小さく口を開けると、甘酸っぱい冬の風物詩が口の中いっぱいに広がる。赤ちゃんみたい、とクスクスと笑う姉に対して、ふふと笑い返しながらゆっくりと意識を手放す。  そんな正月休み。  あの空間が大好きだった。1階から響く祖父と叔父が動かす機械と鉄の削れる音をBGMにし、3階で冬の時期に祖父母の家でだけ出てくるこたつに入り、

    • 「涙」

       あ、限界だったんだ。  頬を伝う生ぬるい液体が私にそう伝える。  小学4年生春。同じ日本人に囲まれ何不自由なくコミュニケーションができていた生活は、父の仕事の都合によって突如見た目も考え方も言語も全てが違う人々に囲まれる生活へと一変した。渡米した当初、文章として話せる英語は「ハロー。マイ ネイム イズ C子。ナイスミーチュー」と「アイム ファイン サンキュー。アンド ユー?」くらいだった。  当初両親の心配事は全て姉たちだった。極度の人見知りである長女と次女が学校に馴染む

    「みかん」